第十八話 奪われたライザ
ユウの次の対戦相手は、ライル=ミストヴェイルという背の低い男。長い前髪で両目を隠している。
ゲームフィールドは【霧雨の湿原】。霧が立ち込めて視界の悪い湿地の中で、ライルは静かに佇んでいた。
「へへ、早くゲームを始めようぜ」
「そうだね。それじゃあ、キャラクターを展開するよ」
ユウはライザをフィールドに展開する。
◆キャラクターカード【フォレストウルフ】
HP:260 スピード:9↑・4↑ ウエイト:3
パッシブスキル:神速
敵の攻撃を一定の確率で回避する。このカードのスピードが上昇する。
アクティブスキル:疾風牙
このスキルを使う場合、相手のウエイトに関係なく、必ず先制して攻撃できる。
属性:風
「ライザ、今日も一緒に戦うよ」
ライザの姿を見たライルの口元がいやらしく歪む。彼は、魔術師の塔でユウがライザたちと親しくしているのを見ており、ユウに嫉妬していた。
「お前、魔術師の塔を探索していたよなあ。かわいい女の子たちとイチャイチャしやがって。俺はな、お前みたいに女の子をとっかえひっかえしながらイチャつく奴が一番ムカつくんだよ。確かその狼、かわいい女の子に変身するんだったなぁ? お前に勝って、そのかわい子ちゃんをもらうからなあ!」
ライルは、【ポイズン・トード】という毒属性を持つカエルのモンスターを展開する。
◆キャラクターカード【ポイズン・トード】
HP:230 スピード:3 ウエイト:6
パッシブスキル:猛毒
このモンスターの攻撃を受けた相手を毒の状態にする。
アクティブスキル:猛毒の霧
一定の確率で対象一体を毒の状態にできる。
属性:水・毒
【カウントダウン、スタート──】
ジャッジメントシステムが起動して、カウントダウンフェーズが始まった。
「毒の攻撃が厄介だ。ライザ、毒に気をつけるよ」
「へへへ、気をつけなくちゃいけないのは毒だけじゃないぜ」
ライルは【複製】というサポートカードを即時発動する。
◆サポートカード【複製】
スピード:3 ウエイト:3
効果:このカードは手札からカードを1枚墓地に送ることで【即時発動】できる。お互いのプレイヤーのデッキの中にあるカードからキャラクターカード以外のカードを一枚選択する。このカードはそのカードと同じものとして扱う。
複製は相手のデッキの中にあるキャラクターカード以外のカードを複製して使用できる強力なカードだ。
複製の効果で、ライルはユウのデッキの中にあるマインドコントロールのカードを選択する。
「かわいい顔して、えげつねえカードをもっていやがるなあ。ま、ありがたく使わせてもらうぜ」
複製されたマインドコントロールの効果で、ユウはライザのコントロールを奪われてしまう。
「ふふ、それじゃあまず、かわいい人間の姿に戻すとするか」
「……はい、ご主人様」
ライルはライザを人間の姿へと変身させた。
「あはは、かわいいねえ。それじゃあ、その姿のまま、元のご主人様に攻撃してもらおうか」
「……」
ライザに攻撃されるが、ユウは黙って攻撃に耐えた。
「大事な彼女に攻撃された気分はどうかなあ? おやぁ、効いてないアピールかぁ? 健気だねえ。それじゃあ、こんなのはどうかなあ?」
ライルは、さらにユウを苦しめるために、ライザにサポートカードで拘束器具を装着する。
◆サポートカード【悪魔の拘束器具】
スピード:6 ウエイト:2
効果:このカードを装着したキャラクターカードは行動ができなくなる。このカードはプレイヤーにも装着できる。このカードが装着されている限り、効果解決フェーズに装着者に100ポイントのダメージを与える。
悪魔の拘束器具によって、ユウの目の前でライザは両脚を開脚した恥ずかしい格好にさせられてしまう。
「ほらほら、元のご主人様に、恥ずかしい姿を見てもらえよ。私、こんなに変態なんですってなあ!」
さらに、拘束器具がライザの身体をきつく締めあげる。拘束器具に繋がれたワイヤーが、ライザの身体に食い込んでいく。
「きゃあああああ!」
全身に食い込むワイヤーによる激痛で、ライザは思わず悲鳴をあげた。
「ライル、きさまぁぁぁ!」
ライザの苦しむ姿を見せて、ユウの心を揺さぶろうとするライル。そんな卑劣なやり口にユウは激怒している。
「さすがに今のは応えたか。だが、俺の攻撃はまだ終わってないぜ!」
さらにライルは、ポイズン・トードの猛毒のスキルでユウを攻撃する。
「ぐっ!」
ポイズン・トードの毒攻撃を受けて、ユウは毒の状態になってしまった。
「ライザ、僕も一緒に苦しみを受ける。だから、もう少しだけ耐えてくれ!」




