第十四話 ロックバーンデッキを攻略せよ
灼熱の業火のダメージによって悲鳴をあげているユウを、カミラはいやらしい笑みを浮かべながら見つめている。
「はぁ……はぁ……。大丈夫だよ、アシュリー。君はカミラに集中して」
「でも……」
「これで、カミラのデッキからカードが2枚墓地に送られた。ボクがダメージを受けた分、有利になったよ」
「ふぅん。強がるのねえ。まあ、いいわ。デッキからカードを2枚墓地に送るのは確かに痛手だけど、私はキャラクターカードを削って限界までバーンカードを積み込んでいるから関係ないの。ああ、君のその顔。最高だよ。これから、もっと痛みを与えてあげるからねえ」
その後も、重力の罠の効果によってユウはカミラを攻撃することができない。カミラはそんなユウを直接攻撃できるマジックカードで一方的に攻撃し続ける。
「あああああぁっ!」
「ユウ、あなたが苦しむ姿、私、もう見てられないよ……」
アシュリーは手で顔を覆って泣き出しそうになる。
「大丈夫だよ、アシュリー。ボクを信じて!」
「ふふ、それだけダメージを受けても諦めないのねえ。えらいえらい。でも、もうあなたたちに勝ち目は無いわ」
「それはどうかな? カウント2でキャラクターカード展開。魔導ゴーレム」
◆キャラクターカード【魔導ゴーレム】
HP:400 スピード:2 ウエイト:9
パッシブスキル:自己再生
カウントダウンフェーズ終了時、このカードのHPを100回復する。
アクティブスキル:かばう【即時発動】
このカード以外の対象が攻撃を受けた時、代わりにこのカードがダメージを受ける。
属性:地
「あはは、今更キャラクターを出したところで……」
「魔導ゴーレムを出すとは、さすがね、ユウ。これでカミラの攻撃に対処できるわ」
アシュリーの指摘どおり、ユウが魔導ゴーレムをフィールドに展開すると、状況が一変する。ユウは魔導ゴーレムのアクティブスキルであるかばうを使い、ユウ自身へのマジックカードによる攻撃の対象を魔導ゴーレムへと変更する。
その後、魔導ゴーレムの自己再生のパッシブスキルが発動して、魔導ゴーレムの受けたダメージはすべて回復した。
「くっ、こいつ、ロックバーンのメタカードを持っていたの?」
先程まで余裕の表情をしていたカミラの顔がこわばる。
「でもね、メタカードの対策をしてないほど、私は甘くないわよ!」
◆マジックカード【落雷】
スピード:2 ウエイト:8
効果:このカードは手札を全て捨てることで発動できる。対象のカード一枚を破壊する。
属性:雷
「あはは。私はこのカードで魔導ゴーレムを破壊するわ。そして、私はまた君にバーンカードで直接攻撃する。もう、君のライフも残りわずか。すぐに倒して楽にあげる!」
落雷のマジックカードで魔導ゴーレムは破壊された。
しかし、なぜかユウはニヤリと笑う。
「ふふ、手札を全て捨ててしまったのは悪手だったね。カミラ、まもなく君のデッキはカードを引けなくなる。当然、デッキにカードがないとバーンカードも使えなくなる。ボクの勝ちだ!」
「そんなことはわかってる。デッキが切れる前に私がライフをゼロまで削ってやるわ!」
「それはどうかな? カウント1でサポートカード発動。デッキ封鎖」
◆サポートカード【デッキ封鎖】
スピード:1 ウエイト:8
効果:この効果は1ターンに一度、自分の手札を1枚捨てることで発動できる。お互いのプレイヤーは次のターン、デッキからカードを引くことができない【永続効果】。自分の手札が一枚もない場合、このカードを破壊する。
ユウは、お互いのデッキからカードをドローすることができなくなるサポートカードを発動した。
「デッキからカードを引けないですって! なにそれ! そんなチートみたいな効果のカード、反則よ!」
ユウのカードを見たカミラは思わず叫ぶ。しかし、ユウはそんな言葉は無視して、彼女に淡々と語りかける。
「……これでもう、手札を補充できない君は重力の罠のロック効果を発動できない」
有力なキャラクターカードを展開していなかったカミラは、ユウが展開していたキャラクターの猛攻を耐え切れない。
「アシュリー、最後は君に任せた。君の一撃で勝負を決めてくれ!」
「わかった。これで決める!」
「きゃあああああ!」
アシュリーの攻撃は彼女のスキルによって2倍のダメージとなり、カミラのライフを削り切った。
◇◇◇
「悔しいけど、負けは負けね。さあ、私のカードを一枚選んで……」
カミラはユウに自身のデッキのカードを見せる。
「ユウ、今回は私がカードを選んでもいい?」
「わかった。君に任せるよ」
ユウはカードからアシュリーを解放する。
アシュリーはカミラのデッキの中から落雷のカードを選ぶ。
「今回はこの落雷のカードにしましょう。即時発動ではないけど、どんなカードでも破壊できるのは優秀だわ。手札を全部捨てるコストを払ったとしてもね」
アシュリーの提案に従い、ユウはアンティルールでカミラから落雷のサポートカードを手に入れる。
「ありがとう、アシュリー。今回カミラに勝てたのは、君のおかげだよ」
ユウはアシュリーを優しく抱きしめる。アシュリーはユウの柔らかい身体の感覚を肌で感じて安らぎを得ている。
「ねえ、ユウ。お願い。もっときつく抱きしめて」
ユウは言われたとおりにアシュリーを強く抱きしめる。
「ああ、最高。本当に幸せだよ、ユウ。私が絶対にあなたを最後まで勝たせてあげるからね」
アシュリーに優しくキスをされながら、ユウは彼女と一緒に新しいデッキを作ることを考えていた。




