第十一話 キリア先生の魔法訓練
続いてユウはキリアのカードと取り出して、彼女を解放する。
「私を解放してくれてありがとう、ユウ」
キリアは正面からユウを抱きしめる。キリアの柔らかい胸の感触が、ユウの身体に伝わっている。
「正直、アシュリーが羨ましいよ。私も君が好きなんだ。しばらくこのままでいさせてくれないか?」
「いいよ、キリア。ボクはこれからもずっと君と一緒にいる。だから、君の力を貸してくれ」
「もちろんだ。君は私を信頼してくれた。だから、私も、全力で君を守るよ」
キリアはユウに微笑んでから、『彼』の唇にやさしくキスをする。
「ふう。ありがとう、ユウ。君はマジックカードが欲しいんだったね。こう見えて私は魔法が得意なんだ。冒険中に私が魔法を使うから、ユウはそれを封印してくれ」
「わかった。魔法はキリアに任せるよ」
「それにしても、魔術師の塔とは、アシュリーのやつ、なかなかいいダンジョンを選んだな。ここなら魔力を回復できるアイテムもたくさんあるから、思う存分魔法を使えるよ」
キリアとユウは手を繋ぎながら、ダンジョンの奥へと進む。道中に現れたモンスターを、キリアは魔法で何なく処理していく。その魔法の一部をスペルカードに吸収することで、ユウはマジックカードを入手することができた。
「キリアは本当に魔法が得意なんだね。君と出会えて本当によかった」
「私もだよ、ユウ。君が所有者になってくれて、私は最高に幸せだ」
キリアはユウににっこりと微笑んでから、再びキスをした。
「ユウ、私が君に魔法の使い方を教えるよ。そうすれば、もっと冒険が楽になるはずだから」
「そうだね。キリアに教えてもらえたら、きっとすぐに魔法が使えるようになると思う」
ユウがキリアに微笑みながら答える。
「うれしいなあ。魔法はね、頭の中のイメージを具現化する感じなんだ。もちろん、それだけじゃないけど、基本はそんな感じだと思ってもらっていい」
キリアはユウの両手を握ると、自身の魔力をユウに分け与える。
「最初は私の魔力を流し込んで、身体を魔力に慣れさせるところから始めよう。どう、私の魔力、感じる?」
「うん、なんだか、すごく暖かいよ」
「それはよかった。私の魔力に慣れてきたら、その魔力のコントロールをしてみよう。私の流し込んだ魔力を、私の身体に戻してみてくれ」
「こうかな?」
ユウは自身の体内に流れ込んできた魔力をイメージして、キリアの身体に注ぎ込むようにする。
「そうそう。とても上手だよ。さすが私のマスターだ。センスがいい」
「キリアの教え方がうまいからだよ」
ユウは褒められたことに照れながらキリアに答える。
「ふふ、次は魔法を具現化してみようか。まずは私がマスターの中の魔力を使って具現化する。ユウは体内の魔力が具現化する感覚を掴んでくれ」
「うん、でも……」
「どうかしたのか?」
突然、ユウはキリアを優しく抱きしめる。
「こうして、キリアを抱きしめていた方が落ち着くんだ。その方がうまく感覚を掴める気がする」
「ふふ、ユウは甘えるのが上手だな。身体が接触していれば、そこから私の魔力を流せるから、そうするよ。それじゃあ、このまま続けよう」
キリアは、密着したユウの柔らかい身体に優しく魔力を流し込む。
「本当だ、キリアの魔力、いっぱい感じられるよ。すごい」
ユウは思わずキリアを強く抱きしめる。
「こ、こら、そんなに激しく抱きしめたら、私も、我慢できなくなるだろ……」
キリアがむず痒そうに身体をもじもじさせる。
「我慢しなくていいよ。このまま魔力を送り合おう」
「うぅ。そんなこと言われたら、私もダメって言えないだろう……」
今度はユウが密着したキリアの身体に、自身の魔力を流し込む。
「ユウからいっぱい魔力が流れてくる。あぁ、こんなに幸せな気持ちになるなんて……」
「キリア、これはいい魔力のコントロールの練習になるね。もっとボクの魔力を送るよ。いっぱいボクの魔力を感じてね」
「あぁ、ユウ。いいよ。ユウの魔力がいっぱい感じられる。もっと、もっと私に魔力を流して。ユウの魔力、もっと感じていたい……」
「ふふ、かわいいね、キリア。でも、魔法の具現化を忘れてるよ。ボクの身体で魔法の具現化をするんでしょ?」
「もう、ユウのいじわる。それじゃあ、手を伸ばして」
ユウが手を伸ばすと、キリアがユウの魔力を使って小さな炎の球を具現化した。
「すごい。ボクの魔力が炎に変換されたのがよくわかったよ」
「ふふ、ユウもだいぶ魔力のコントロールが上手になったから、すぐにできるようになるよ」
「ありがとう、キリア」
お礼の代わりに、ユウはキリアにたくさんの魔力を流し込んだ。
「ちょ、ちょっと待った。そんなにたくさん魔力を流されたら、私、おかしくなっちゃう……」
キリアは顔を真っ赤にして、ユウの身体から流れ込んでくる魔力に耐えている。
「ふふ、そんな顔のキリアもかわいい。大好きだよ」
ユウは優しくキリアにキスをする。
「ありがとう……残念だけど、そろそろ時間みたい。楽しい時間をありがとう、マスター。また一緒に冒険しようね」
「もちろんだよ、キリア。会いたくなったら、いつでも言ってね。すぐに解放するよ」
(アシュリーが仲間になってくれたのは、君が説得してくれたおかげだ。本当に感謝しているよ、キリア)
キリアの身体が光へと変化して、カードの中へと吸い込まれていった。




