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陽だまりの中に横になっている
暖かい、ほわほわとぬくぬくの柔らかな光に包まれているのだ
うっすらと目を開く、穏やかな光、一面が光っている、陽光が注いでいるのだ
夕暮れだろうか?、眩しさはないのだ
目の前に麦の畑、遠くの木々の緑、空の薄い青、風のそよぎ
しばらく、そうしている
音が耳に入ってくる、小さな音
りんりんりんりんと虫さんの鳴く音、ざーっと小川のせせらぎの音
しばらく、そうしている
遠くへ遠くへ流れていく緩やかな風に波打つ黄金色の麦畑
そこに、私は横たわっている
ずっとこうして眠っていたいな、と、思うのだ
うつらうつらとしていると視界の端が動いている
水?、だろうか、地面から持ち上がっている、半球型のぷるんとした
目と口があるのだ、スライム?、・・・私はこの言葉をどこかで・・
「ぷゆぷゆ」「ぷゆー」
何かを言っている、私はゆっくりと立ち上がる
そして、ふにゃあーと伸びをする
スライム?、さんが畦道を戻っていく、私はそれを見つめている
スライムさんがこちらへ戻ってくる
「ふゆふゆ」「ふゆー」
その透明な体に景色が浮かぶのだ、麦畑?、だろうか、黄金色の
その中を誰かが歩いて行く、てくてくと、それは、私?
私が歩いている、その先には透明な、スライムさん?
スライムさんが進んでいき、その後ろを私?、がついていく
すーっと、その姿が消えていく
スライムさんの体が透き通った水の色に戻っていく
そしてスライムさんはまた、畦道を戻っていくのだ
そうか、私はスライムさんについて行くのだ
畦道とその両側に広がる麦畑
黄金色の陽だまりの中を私はてくてくと歩いて行く
やがて、視界が開けると一面の青と緑
見渡すばかりのそれは眼下に広がっているのだ
それは大湿原なのだ
スライムさんが丘を下りていく、するすると下っていく
その後ろを私がついていく、その先には水たまり、とても大きな水たまり
そして沢山の緑、陽光にキラキラと柔らかく照り返す
その中に伸びるのは桟橋だろうか
その根元に人が立っている、帽子を被っていて、その下は空っぽだ
服があって、その上に帽子が浮かんでいる
スライムさんがそこに寄っていく私はてくてくとついていく
「こんにちは」
と、私は言って、それからぺこりとおじぎをする
その人はスッと会釈を返す
「ふよふよ」「ふゆ」
スライムさんの体に景色が浮かぶ
桟橋の隣に灯篭?が立っている、小さな私がそれに近づいて
灯篭の明りに手を伸ばす、すーっと、その姿が消えていく
スライムさんの体が透き通った水の色に戻っていく
目を離して辺りを見渡せば、灯篭があるのだ
そう、目の前にあったのだ、その明りはぼわーと辺りを包んでいるのだ
とても大きな光、でも眩しさは無い
私はゆっくりと近づいて、その明りに手を伸ばす