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転生したら、どうやら水滸伝の世界に迷い込んだみたいです  作者: 奈津輝としか


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第38話 漢の再興

「可愛い過ぎる…」


 俺は「可愛い」を連呼されながら、孔明のコスプレ男に何度も犯された。一方的な愛情であり、手足を失った俺をペットの様に可愛がった。


「どうした?手足を失って絶望したか?全く抵抗しないな」


 左手で胸を揉みながら口付けをされた。俺はずっと、天井をボーっと見て行為が終わるのを待っていた。李逵の様に気持ち良くさせてくれるならまだしも、コイツのは一方的で自分だけが満足するHだった。

 何で気持ち良くならないんだろう?とか暇なので考えていた。その理由が分かった。恐ろしく早漏なのだ。1分も()たずに射精している。これでは気持ち良くなる前に終わるので、(こちら)は不完全燃焼で物足りない。


「手足の欠損は治せるんだ。大人しく従順でいるなら、治してやる」


 そう言って頭を()でると、自分だけ着物を着て出て行った。せめて俺にも服を着せろよ、と不機嫌になった。


(失った手足は、どのくらいで治る?)


“はい(マスター)(マスター)自動回復(オートリジェネ)を止めなければ、既に回復しております”


(欠損した手足は、修復可能って事だな?なるべく俺のスキルは、奴に見せたくは無い。この油断している状況は、俺には有利だ)


 俺は侍で、孔明のコスプレ男のジョブは回復出来る所を見ると、僧侶とか白魔道士なのだろう。俺のジョブが侍で刀に頼って戦っているから、この状況から回復など出来ないと思い込んでいるに違いない。


(しかし回復魔法が本当に使えるなら、厄介だな)


 方臘軍には先に述べた豪傑を多く(かか)えており、ただでさえ強いのに回復なんてされたら梁山泊は全滅するかも知れない。


「結局、コスプレ野郎、1度も名乗らなかったな…」


 突然、部屋の扉を開けられると、女官達が2人ほど入って来た。そして全裸の俺の身体をお湯で拭き始め、着替えさせてくれた。それから小さな輿(こし)に俺を乗せると、何処かに運んだ。手足の踏ん張りが利かないので、揺れない様に配慮して歩いていた。


「こっちだ、気に入ってくれると良いのだが?」


 食卓の上には、ご馳走が所狭しと並べられていた。


「良い、良い。私が世話をしよう」


 そう言って俺を抱きかかえると、膝の上に乗せた。それから長い箸を器用に使って、牛肉や海老などを中心に茶碗に乗せた。


「肉は食べられるか?海老や蟹アレルギーは無いか?」


 えらく気に入られたみたいで、気遣いの配慮が半端ない。悪い奴では無さそうだな?と思うと、コスプレ男への殺意が(やわ)らいでしまった。

 手足の欠損も自分で治せるし、出来無かったなら恨んで許したりしなかっただろう。だがコイツは、治してくれると言った。それもあって憎みきれずにいた。


 牛肉を口元に近づけられると、急にお腹が空いて来た。大人しく口を開けて、牛肉を口にすると、塩胡椒が利いて美味しかった。


「ははは、美味(うま)いか?この時代での胡椒の貴重さを知っているだろう?」


「砂金の質量と等価だったと聞いた事があるわ」


「そうだ。だが金さえあれば、誰もが胡椒を口に出来る訳では無い。交易路の確保や、交易路を襲う匪賊からも守らねばならない。貴族ですら容易(たやす)く味わえる物では無いのだ」


 海老料理は2種類。1つは醤油を塗って炭火で焼いて香ばしく仕上げ、更に塩胡椒が振ってあった。もう1つの皿には、海老マヨと海老チリが乗っていた。どれも美味しさに間違いは無い。


「美味しい」


 醤油、マヨネーズ、塩胡椒。味付けはシンプルだが、食べ慣れた味付けが懐かしく感じられる。気が付けば涙を流していた。


「そんなに美味しかったか?」


 孔明のコスプレ男は、満足そうな笑みを浮かべた。


(あつもの)(スープ)で御座います」


 中国では胃に負担をかけない様に、優しい料理を宮中では食していた。いわゆる「お粥」と「(スープ)」である。これらは頻繁に食卓にのぼった。

 「お粥」は胃に優しいだけでなく、限りある食材を有効に使う目的があった。何せ「お粥」は、普通のお米よりも膨らんで傘増しが利く。

 「(スープ)」は、滋養強壮に良い食材が使われる事が多く、代表的なものは「薬膳」である。これだけで栄養満点、お腹も満たされる為に、差し入れにも使われた。


「これって、まさか…」


「ああ、人参(高麗人参)だ。人参(キャロット)の方では無いぞ?」


 高麗人参を生まれて初めて食べた。ほんの一欠片(ひとかけら)で、20万円もするとか言うのをTVで観た事がある。苦味と独特な香りがするらしいと聞いたが、苦味も無く匂いも気にならなかった。

 良い料理人(シェフ)を使っているのだろう。胡椒といい、孔明のコスプレ男は食に(こだわ)りがあるのだろう。まぁ、美味しい料理が食べられるなら何でもOKだ。

 鶏1羽がまるまるスープに入っていて、その腹の中に高麗人参や餅米や薬草が詰め込まれていた。スープの味は鶏白湯(ジーパイタン)に似ていた。


参鶏湯(サムゲタン)ね」


 中国の、しかも四川省と朝鮮半島から遠く離れたこの地で参鶏湯(サムゲタン)とは、何とも贅沢だ。


「俺が昔、と言っても転生前の話しだが、韓国に旅行して食べた参鶏湯(サムゲタン)が忘れられ無くてな。再現させるのに苦労したよ」


 スープを口に運ばれ、ズズズっと音を立てて飲むと、宮女達は不快そうに(しか)めっ(つら)をした。貴族のお嬢様方は、きっとお上品に音なんて立てて飲んだりしないのだろう。


「腹が膨れたら、眠くなって来たな。食後の運動でもするか?」


 宮女達に下膳させて退室させると、孔明のコスプレ男は俺を抱いた。早漏なので、1人だけ6回もイって満足すると、イビキをかいて眠った。


「ふぅ~コイツ、全く警戒しないな?実は馬鹿だろう?寝ている間に、俺が喉笛を食い千切るとは考えないのか?」


 つまりは、何も出来ないだろうと舐めているのだ。だけど、俺は躊躇(ためら)った。コイツは俺をペットの様に扱ってはいるが、コイツなりの気遣いを感じる。

 美味しい料理も食わせてもらったし、手足が無くて不自由してるから輿に乗って移動してくれている。失った手足も治療すると言っているから、殺してやりたいほど憎み切れない。コイツは隙だらけで正直、今の俺ならいつでも殺せる。


 軽功で身軽に高く飛べる達人もいるが、俺は東の大宗師の即身仏(ミイラ)から受け継いだスキルの中には、空中に浮いて飛ぶ事が出来るものがある。

 手足の欠損を補って戦う方法は幾らでもあるのだが、俺なりに(こだわ)りもある。せっかく侍なのだ。刀を使いたい。スキルもほとんどが、刀を用いたものが主流だ。


「あれ?そう言えば、私の刀は何処にあるの?」


 孔明のコスプレ男は熟睡していて、俺の言葉は届いていなかった。


(マスター)、ご安心下さい。刀は、(マスター)のスキルで具現化可能です”


「えっ?あの国宝級の刀って、スキルだったの?」


“はい、スキルです”


「ええーっ!!」


 全然、気付かなかったわ。具現化って…便利なスキルだな。なるほどな。「装備の獲得に成功しました」とか言ってたのは、スキルだったのか。

 確かに展示されている国宝の刀は、この世で一振りしか存在しない。(パク)ったのかと心配したが、謎は解けた。


「ん?もしかすると、他の刀も出せたりするのかな?」


“はい、可能です(マスター)


「マジか!」


 すると、菊一文字(きくいちもんじ)や虎徹、村正や村雨も出せるのか?凄いな。手足の欠損を治して、今すぐにでも具現化した刀を振りたい衝動に駆られた。


「落ち着け。せっかく敵の根城にいるんだ。せめて石宝だけでも斬らねば」


 そうでもしなければ、タダでヤられ損だと思った。


(俺を抱いたんだ。安くは無いぞ?)


 コイツは諸葛孔明のファンだから、彼の悲願であった漢を代わりに復興させようとしたんだろう。それは、三国志演義を読んだ多くのファンも同じ気持ちだ。俺も漢を再興して欲しいと願いながら読んだ。蜀漢が天下統一する、反三国志と言う小説もあるくらいだ。

 その小説では、徐庶の母が曹操に人質にされるのを阻止する所から始まる。その為、徐庶は劉備に仕えたままであり、更に史実では関羽が死んだ辺りから歯車が狂い始めるのだが、反三国志では関羽は死なない。だから張飛も生きている。しかし、諸葛孔明だけは魏を滅ぼした後、魏の降将によって宴の席で刺されて亡くなるのだ。呉は魏が滅んだ為に、蜀漢に降伏する。ここに蜀漢帝国が誕生して、物語は終わるのである。


 諸葛孔明のコスプレ男は転生前の名前が「上田和彦」で、この世界では「劉白天(リゥ・バイティエン)」と名乗り、自らを諸葛孔明の生まれ変わりと称していると言った。


「三国志を読めば、漢を再興したいと思う気持ちは分からなくは無い。だけど今は宋の時代。漢の再興なんて時代遅れも(はなは)だしい。仮に漢を再興出来たとしても、それは宋から漢に国名が変わっただけに過ぎず、結局は何も変えられずに終わるだろう。民も宋朝の朝臣も戸惑うだけ。悪いけど、意味のない漢の再興は絶対に阻止してみせる」


 そんな事よりも、金国の動向の方が気になった。金国には、1人だけ桁違いの怪物が存在する。金の太祖・完顔阿骨打(ワンイェン・アクダ)四太子(スータイヅゥ)(四男)である 兀朮(ウジュ)だ。漢名は、完顔宗弼(ワンイェン・ゾンビー)と言う。

  兀朮(ウジュ)は、宋国が相手にもならないほどの強さを誇った。戦略、戦術、武術の全てが、宋国の人材の遥か上の存在であった。辛うじて岳飛や韓世忠が、戦える水準にあった。

  兀朮(ウジュ)に比べれば、石宝など生温い。一刻も早く内乱を鎮圧しなければ、宋国は金国によって蹂躙されてしまう事になる。それも遠くない未来で。


「そうだ!劉白天(リゥ・バイティエン)は漢を再興したいのであれば、金国は不倶戴天の敵であり、共に手を携えて戦うべき敵のはず。何とか説得して、同じ中華の民として金国に立ち向かう事が出来たら、宋は滅ばないかも知れない」


 そう思うと、何と言う名案だと思い、1人で興奮していた。

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