第33話 凱旋
遼国との決戦も終え、頭領達は1人の死者も出す事なく凱旋出来たのは、誠に奇跡であった。それほどまでの激戦であったのだ。これまで幾度となく中華は、遼国の南下に悩まされて来た。あと1歩、あと1歩で遼の皇帝に刃が届く所まで追い詰めたのだ。
「俺たちが、あの遼国を滅亡寸前まで追い詰める事が出来た」
宋建国有史以来はもちろん、五代十国時代の後晋が遼国に燕雲十六州を割譲してより186年もの間、遼国をここまで完膚無きまで叩き潰したのは、我が梁山泊だけである。
本来なら胸を張るべき所だ。だが皆の顔は暗く、漂う空気は重苦しさを乗せて誰も口を開こうとはしなかった。
「なんでぇ、なんでぇ、皆暗い顔して。オイラ達は、あの遼国相手に1歩も引けを取らなかっただけじゃなく、勝っちまったんだぞ?こんな事は有史以来の快挙だ!我が梁山泊は国士無双だ。わははは」
李逵なりに、重苦しい空気を払拭しようと明るく振る舞ったのかも知れない。それと察した魯智深も、わざと快活で豪快に笑って話題に乗った。
「ガハハハ。李逵よ、お主にしては珍しく良い事を言う。兄弟達よ、もっと胸を張れ!儂らは、どの官軍にも出来なかった事をやってのけたのだぞ?」
「そうだ!俺達は、この大宋国で最強の軍隊である事を証明して見せたのだ。俺らは最強!俺らは最強!」
武松が片手に酒の入った瓢箪でグビグビとやりながら踊り出し、この酔っ払いが歌い出すと、配下の歩兵達も釣られて歌い出した。
「俺らは最強!俺らは最強!」
後ろの歩兵軍が急に歌い出して場の空気が明るくなり、騎兵軍の林冲はさすが義兄の魯智深だと笑みを浮かべた。そのやや後方で馬を走らせる楊志は、無言で表情1つ変えなかった。相変わらず無愛想な男である。
宋首領と呉軍師は、共に馬を侍らせて先頭にいた。遼国には勝てたものの、高俅らが遼国からの賄賂を受け取って和睦を結んでしまった。それも最悪のタイミングでだ。冷静であれば追い詰められた遼国が、その様な策を用いる可能性は考えられ、事前にその芽を摘む事も出来たはずである。此度の失策は自分にあると、呉用は深く反省と後悔をしていた。
宋江は、「致し方無かった」と思っていた。そんな事を考えるゆとりすら無いほどの激戦であったのだ。遼国とは紙一重の差であった。1歩間違えれば、勝者と敗者の立場が入れ替わっていてもおかしくは無かった。皆必死だった。するべき事をやり、やるべき事を積み重ねた結果での勝利だ。
全ての苦労は、天祚帝を捕える事で報われるはずであった。宋江は替天行道の旗の下、命をかけて戦ってくれた義兄弟たちに申し訳なく思っていた。
「だからこそ1日も早く、この国を変え無ければならない」
国を変えるとは、政治を変えると言う事である。それが並大抵では無い事は、我々にも理解出来る。現代で国を変え様と考えるならば、国会議員になるしか無いだろう。例えなれたとしても、自分の声が国民に届かなければ意味がない。それに保守派の老議員達が己の権威と金の欲望に塗れて、自分の椅子を必死にキープし若手の台頭の芽を摘んで来る。
新人議員は領収書の書き方も知らず、先輩議員に相談する。
「あの、これはどう処理すれば良いですか?」
「ああ、そんなの適当に本代とか書いてれば良いんだよ。別に税務署も何も言って来ないよ。俺もそうしてるから」
「なるほど、有難う御座いました」
数日後、新人議員は嵌められた事を知る。
「あの、この本代3000万って何ですか?3000万円分も本を買ったって事でしょうか?ならその本を見せて下さいよ!国民は説明を求めています!説明責任を果たして下さいよぉ!」
マスコミに取り囲まれ、逃げる様にして車に乗り込み、先輩議員に連絡する。
「馬鹿だなぁ、全部、本代って書いちゃったの?」
「だって、チリも積もればあのくらいの金額になりますよ」
「あれは、本や衣装代やら分けて適当に書いてれば良いって意味だったんだよ。もう俺に電話して来ないでね。巻き込まれたら大変だからさ。ガチャ」
こんなニュースが時々流れるのは、当然マスコミに内部からリークしているからだ。そうやって若い芽を潰しているのだ。
宋江が招安に拘った理由は、官僚となって自分達の声を皇帝に届けなければ、この国は何も変わらないと思っていたからである。徽宗皇帝は暗愚では無い。ただ芸術に秀でた才能を持って生まれてしまったが為に、それに没頭してしまっただけなのだ。
蔡京や高俅が皇帝を操り易い様にする為に、この国は泰平の世であり皇帝の手を煩わせる様な事は何も無い。安心して画や書、庭園造営をなさって下さいと皇宮の奥に言葉巧みに閉じ込めてしまったのだ。
時々忠臣が皇帝の耳に入れ、それを知った徽宗が激怒して蔡京を罷免したり、左遷したりしたが結局戻されて元の椅子に座らせていた。蔡京も徽宗ほどでは無いが書の達人であり、文芸の趣味が合った為に失策はあれども憎めない奴だとでも思っていたのだろう。そろそろ反省した頃だと呼び戻すのだ。茶番劇の様に、これは何度も繰り返されていた。
しかしあの老怪物が政治を牛耳っている限りは、この国は何も変わらない。先ずは蔡京をその座から引き摺り降ろす。高俅などは、蔡京に擦り寄っておこぼれの権威を啜っているだけの小物であり、蔡京さえ倒せば自ずと高俅も倒れる事だろう。
何はともあれ、懐かしい水寨が見えて来た。自然と笑顔が戻って来る。我が家に帰って来たのだと。留守を任せていた柴進と李応が出迎えた。
「報告は承っております。お疲れ様でした。よくぞご無事で何よりです」
「嗯、お主達もよくぞ留守を守ってくれた、感謝する」
「恐縮です。留守を預からせて頂き、全う出来て胸を撫で下ろしております。さ、何はともあれ、ささやかではありますが、宴の用意も出来ております」
「どうぞこちらへ」
「では皆と一緒に」
右腕を前に伸ばして、「どうぞこちらへ」と言ったリアクションをする。された側も、「貴方もどうぞ」とか「それではご一緒に」とか言いながら同じ様に右腕を前に出して相手を促すのが、中国での礼儀だ。
それを知らない日本人は、料亭に入り「どうぞこちらへ」と言われて、そのままスタスタと前に歩き出してしまう。中国人はそれを見て、「礼儀も知らぬ田舎者が」と腹の中で思うのだ。
「皆の者、兄弟達の凱旋だぁ!派手に祝うぞー!!」
「おぉー!」
その日は夜遅くまで、飲めや歌えやの大宴会となった。
「うぃ~。たらふく飲んで食って満足したわぃ。後は女だな。花娘子、来いよ。可愛がってやるぜ」
「え?えーっと…その。もう貴方とは出来ない、彼がいるから」
李逵は横目で、フードを被った男をギロリと睨んだ。
「何んでぃ、コイツは?いつから居たんだ?お前の男か?まぁ、そんな者は居ても構わねぇ。俺はお前を抱けりゃ良い」
「ふざけるな!」
フードを被った男が、無理矢理に花娘子を連れて行こうとする李逵の腕を掴んで離さなかった。
「あーん?俺様とやろうってのかぃ?兄弟でも何でもねぇお前さんに、手加減なんてしねぇぞ?」
「そこまでだ、李逵!」
林冲が割って入って来た。
「止めろ、李逵!」
楊志は殺気を帯びて、李逵に怒気を含ませた。
「楊志…何だぁ?これまでも黙って見てたじゃねえか?それが何で今になって言うこたぁねぇじゃねぇかよ?」
「これまで嫂嫂(義姉)は特段、嫌がってはいなかったからだ。だが今は違う。嫌がっているだろう。無理に連れて行くならば、俺が相手だ」
「はぁ?義兄弟であるこの俺と、こんな事で殺し合いをするつもりかよ?」
「殺すとは言って無い。止めるだけだ。それに花娘子は、俺の義兄弟だ」
李逵は楊志と睨み合っていたが、「チッ」と舌打ちして諦めて出て行った。別に李逵は楊志を恐れた訳でも、周りを取り囲んで楊志の味方をする林冲や魯智深、史進や武松に気後れした訳でも無い。ただ今回は楊志の顔を立ててやっただけだ。酔いが醒めて、不機嫌になって出て行った。
「皆んな、有難う…迷惑を掛けたわ」
「迷惑なんて言うなよ嫂嫂(義姉)…」
林冲は、フードを被った男に目配せをして言った。
「所で、ずっと気にはなっていたのだが、彼はもしや…」
「僕?いや某は、北の大宗師と呼ばれる者だ」
おお、やはりと林冲と魯智深が跪くので、史進と武松も顔を見合わせて跪いた。
「わぁ、立って立って。畏まらないで!」
俺は直ぐに、林冲らの腕を取って立たせた。相手の腕を取って立たせるのは、中国での礼儀だ。
「花娘子、貴女も東の大宗師だ。大宗師が2人も梁山泊へ。こんな栄誉な事は無い」
栄誉な事は無いと言われて、思わずフードを被った男はニヤけた。それから再び彼はご馳走が並んだ席に戻り、腹に詰め込めるだけ飲み食いしていた。
「ちょっと、未成年なんだから、お酒はダメよ!?」
「何だ未成年って?今の僕は二十歳超えてるんだぞ!」
「むしろお姉さんが飲んでる方が問題じゃないか!!」
グゥの根も出なかった。そう言えば中身が37歳のオッサンだとは言って無かったのだ。普通の女子高生が、お酒を飲んでると彼は思っただろう。
「そ、それは…雰囲気に飲まれて…あははは」
笑って誤魔化した。
「ねぇ?お姉さんは、さっきの彼と付き合ってるの?」
「ううん、付き合ってないよ。何で?」
「ええ?付き合ってないのに…そ、その…か、身体の関係を…ゴニョゴニョ…」
「ふふふ、今時なら別に珍しくないでしょう?」
「そ、そうかも知れないけど、やっぱりそう言う事は、恋人同士じゃないとしてはいけないと思うんだ」
「じゃあ、君が私の彼氏になってくれる?」
俺は一体何を言っているんだ?この梅の実を入れたアルコール度数の高い紹興酒を飲んで、酔いが回っているのか?と思った。
「本当に?本当に付き合ってくれるの?」
「え、えーっと。う、うん」
彼は嬉しそうな表情をした。ずっと1人で山奥に居たのだ。人恋しかったに違いない。何せ14歳の精神年齢のまま、姿だけが大人になって転生させられたのだ。さぞかし心細かった事だろう。中身が大人の俺でさえ、考え方も文化も違う異国の地に尻込みしてしまっていた。
その晩、童貞だった彼をリードして挿入し、肌を何度も重ねた。初めてだったので最初は俺が上で彼が果てるまで続け、その後は彼に主導権を移して好きな様に動いてもらった。必死に腰を動かしていて可愛いなと思い、正常位で達すると今度は後輩位を希望されて四つん這いになった。
「はぁ、はぁ、はぁ。お姉さん、気持ちいい。気持ちいいよぉ。こっちの体勢の方が、正常位よりも頑張れそうだよ」
俺は正常位よりも後輩位の方が、膣の奥まで届いて突き上げるので気持ち良く、彼からは見えないので良かったが、ヨダレで枕を汚していた。
「孫二娘の姐さんじゃねぇか。相変わらず良い女だな。どうでぃ、今からオイラとしけ込むってのは?」
「何言ってんだぃ。あたしゃ亭主持ちだよ」
「なあに構いやしないさ。あんたみたいな良い女と1度やってみてえと思ってたんだ」
そう言いながら手を伸ばした李逵に、孫二娘は腕を叩いて拒絶した。
「あんたみたいなのは、お断りだねぇ。あたしの好みじゃないよ」
「ちぇっ、しけてんな。楽しみゃあ良いじゃねぇか?オイラのイチモツは最高だって評判だぁ」
「あははは、確かにナニはデカそうだねぇ」
孫二娘は、チラリと李逵のアソコら辺を見て言った。
「まあ、気が向いたら相手して上げるかもね」
孫二娘は後ろ手にして去って行った。今度は顧大嫂が見えたので、懲りもせずに言い寄りに行った。
「これは顧大嫂の姐御じゃねぇですかぃ。相変わらず良い女だ。で、どうだい?今からオイラと楽しく過ごすってのは」
ふぅ、と顧大嫂は溜め息を吐いた。
「あんたね、ずっと見てたよ。二娘にも同じ事を言ってたじゃないかぃ。馬鹿にするのも良しとくれよ」
「まぁ、まぁ、オイラは馬鹿だから同じ口説き文句しか言えないのさ。許してくれよ。でも姐御が気立ての良い美女だってのは嘘じゃないぜぇ」
顧大嫂は三十路を過ぎたが、それでも隠しきれない美しさがある。気さくで豪快な彼女は、誰からも人気があった。性にも奔放であり夫には秘密だが、男性経験も豊富であった。
李逵が馴れ馴れしく肩を抱いて来たので、後ろ手に腕を掴んで捻じ上げた。
「痛てて、痛てて…勘弁してくれよぉ姐御」
「これに懲りたら大人しく寝な!」
掴まれた腕越しに胸が当たり、李逵はムンズっと顧大嫂の胸を握って揉んだ。
「あんっ、止めっ!」
顧大嫂の力が弱ったので、身体を反転して馬乗りになって胸を触り、太ももの裾から手を入れて性器を弄った。
「ひゃあ!な、何してるの。こんな所、夫に見られたら殺されるわよ!」
それでもお構い無しに李逵は指で刺激を続けて、嫌がり抵抗する顧大嫂の吐息が火照って来たのを確認すると、指を挿入して感度を確認しながら強弱を調整していた。
「うぅぅ、あっ…はぁ…」
「くふふ、良い感じに濡れて来たじゃねぇか?もっと気持ち良くしてやるから、来いよ」
腕を引き起こされて、ぼーっとしたまま顧大嫂は李逵の部屋へと消えて行った。




