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転生したら、どうやら水滸伝の世界に迷い込んだみたいです  作者: 奈津輝としか


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第23話 遼vs.梁山泊 第4戦目⑤

 惨敗…これまで勝てない事はあっても、敗戦らしい敗戦を梁山泊は経験した事が無かった。配下達の多くは、元官軍であり天下にその名が轟く豪傑を多数(かか)えた我が梁山泊は、無敵だと思っていた。負ける事などあり得ないとも思っていた。

 朱武自身も神機軍師と渾名(あだな)され、天下広しと言えども己と互角に張り合える戦術家など居ないとさえ思っていた。それがどうだ?敵の陣形を崩す事すら出来ずに、ただ(いたずら)に兵を(そこ)ない、頭領達は逃げ戻るのが精一杯の有り様であった。

 全ては指揮する自分の責任だ。敵が多かったなどと言い訳をするつもりは無い。そんなものは始めから分かっていた事だ。一手のミスも許されない状況で、敵に飲まれ恐れを成して後手に回った。


(この敗戦の責任は、全て自分にある)


 朱武は涙を流し、(ひざまず)いていた。むざむざと死なせた兵や、その家族に申し訳ないと(うずくま)って泣いた。呉用や宋江も朱武に声を掛ける事が出来ずにいたが、史進は朱武の襟首を(つか)んで起こすと、右の(こぶし)を振り上げて殴り飛ばした。


「何し…」


 地面に転がって口の中を切り、「何しやがる!」と朱武は史進に怒鳴り掛けたが、史進の姿を見て言葉を飲んだ。史進は、悔し涙を流して朱武を(しか)った。


「馬鹿やろう!何て情け無え(ツラ)してやがる!?神機軍師って渾名(あだな)は伊達じゃねぇんだぞ!陣形や戦術に関しては、あんたは呉軍師よりも上だ。そいつぁ、ここにいる皆が認めるところだぁ。あんたの実力はこんなもんじゃねぇ。見てみろよコイツらを。俺は、梁山泊は官軍より強えぇと思ってる。そんな梁山泊にあって少華山の連中は無類の活躍を見せてるじゃないか?それも皆、あんたが少華山の連中を鍛えに鍛えて来たからこそじゃねぇのか!?」


 元少華山出身の手下達は(うなず)いて、「俺達は、(かしら)(朱武)に付いて梁山泊に来た。これからも俺らの命は(かしら)に預けますぜ」と涙を流して「俺らの命は気にせず、駒だとでも思ってくれりゃあ良い」と言って、その場にいる者の涙を誘った。史進が朱武に手を差し出して立たせると、手下や他の頭領達から拍手を受けた。


「朱武よ。勝敗は兵家の常と言う。この(たび)の敗戦を(かて)として、我が梁山泊は更に強くなる。儂らにも…朱武、お前にもその力があると信じておる」


 宋江がそう言って、朱武の肩を叩いた。朱武は皆に頭を下げると、「こうしちゃいられねぇ」と言って(あわ)てて立ち去った。


「へへ、俺の知ってる朱武って奴は、そんなもんじゃねぇって所を奴らに見せてやれ」


 鼻を(すく)りながら、史進も立ち去った。宋江は呉用と目を合わせて、自分の言いたい事を史進が代わりに言ってくれた事に感謝し、少華山の絆を(うらや)ましくも思いながら、そんな好漢達を義兄弟に持てた事を誇らしくも思った。

 誰一人としてこの(たび)の敗戦の責任が、朱武一人にあると思う者はいなかった。(むし)ろその逆で、朱武一人に責任を感じさせた自分達を恥じた。


「次は絶対に負けねぇ」


 梁山泊は敗戦を知って絆が強まり、末端の兵卒に至るまで士気が昂揚(こうよう)した。死を恐れて背を向ける者は、梁山泊にはいない。「同じ死ぬならば、1兵でも多く敵を斬って死ぬまでだ」と天地に誓った。


 古来、中国人は指を3本立てて「◯◯を天地に誓う」と言う誓いを立てる。もしこれを破れば、日本の侍であれば切腹するところである。つまり、絶対に誓いを破る事は無い。破る事があれば、死んで()びるのである。

 誓いを破る事は、天の神や地下に眠る先祖の霊に対して嘘をつく事になる。嘘をつく事は、世間に対して顔向け出来ない恥である。面子(メンツ)を何よりも重んじる中国人は、恥をかくくらいならば死を選ぶのである。

 逆に恥をかかされた場合は、己が死を選ぶ程の事をされた訳であるから、相手に対して激しい殺意を覚える。己の命に替えても恥をそそぎ恨みを晴らすと、生涯に渡ってその相手の命を狙うのが中国人である。

 中国人は自分どころか、何代も前の先祖が(はずかし)めを受けた恨みを決して忘れない。日本人が日中戦争で中国人を虐殺した恨みを忘れる事は無いのだ。


 その証拠に微◯(ウェイボー)では、「この日、大日本帝国によって侵略され、大切な同志を失った悲しみは、決して忘れてはならない。この悲劇を繰り返さぬよう、我々は世界平和の為に努めていかなければならない」「この日、悪逆非道を重ねた大日本帝国に正義の鉄槌が下されました。我々の正義が勝利したこの日を皆で祝おう」等と言ったツイートが毎年拡散されるのである。だから中国人が忘れる事など決して無いのだ。

 多くの日本人は、南京の大虐殺が何年何月何日なのかさえも知らない。中国人なら知らぬ者など1人もいないのだ。日本人への恨みは、骨髄に渡って刻み込まれている。

 これを知らない日本人は、何故中国人にそんなに恨まれて嫌われているのか理解していない。無知とは罪なのだ。中国人の前でそんな事を言えば、殴りかかって来る事だろう。


 話が脱線したついでに、作者の見解を述べさせて頂くならば、日本もまた被害者なのである。「洗脳教育」と言う名の被害者だ。

 日本人は純粋で、鎖国の様に他者を受け入れないかと思えば新しい物好きで、良い物は良い、悪い物は悪いと選別して受け入れる包容力がある民族性だ。

 だからこそ明治維新の様に、それまで江戸時代の丁髷(ちょんまげ)をあっさり捨てて散切(ざんぎ)り頭にし、西洋に追い付け追い越せと国会を創設して新法を作った。軍艦を建造し、持たざる国である日本は西洋に(なら)って植民地を求めた。

 日本人の恐るべき所は、異常なまでの吸収力の早さと品種改良である。

 例を挙げるならば、日本の戦国時代たった1(ちょう)種子島(ひなわじゅう)を品種改良し、それは(またた)く間に日本全土に広がった。

 織田信長が天下統一目前とした頃は、日本全国の鉄砲の数はおよそ1500万挺にも昇った。当時の全ヨーロッパの鉄砲を()き集めてもおよそ800万挺にしかならなかった事を考えると、これがどれほど驚異的であるのか分かるだろう。

 (わず)か数十年もせずにポルトガルから伝来した鉄砲が、全ヨーロッパが保有する数の約2倍にも達したのだ。この時代、間違いなく日本は世界最強だったのである。鉄砲の数だけで世界最強と言うのは少々野蛮だが、侍達は剣術の腕を磨き、個々の武勇は他国をも圧倒していた。

 また日本が明治維新となり、軍艦を建造して日露戦争で勝利するまでに、たった27年の歳月を要した。第二次世界大戦での零戦は言うまでも無い。どの国の戦闘機よりも高く速く飛び、コストパフォーマンスも優れていた。日本にもう物資が残り少なかったからではあるが、それでも尚、あれ程高性能な物を造り出せるのが日本人である。

 日本人もまた被害者であると作者が訴えるのは、お国を守る為に「特攻」を始めとする「人間魚雷」などの自分を犠牲にして敵を倒すと言う精神である。

 神国日本は、神様に(まも)られている。その証拠に初代天皇である神武天皇は、天照(アマテラス)大御神(おおみかみ)の子孫であり、かつて元寇に()いては神風が吹いて日本は(まも)られた。神様に(まも)られている日本が敗ける事などあり得ない。婦女子は天の神様に日本の勝利を祈れ、日本男子は大和魂を見せ、お国のために見事散って見せよ!と徹底した洗脳教育を受けた。

 当然、疑問に思って反発した者もいた。だが非国民として軍人に死ぬほど殴られ、近所から村八分を受けた。配給による食糧は、1人あたりジャガイモ1個になったが、それすら分けてもらえなくなり餓死する(ほか)ない。

 「特攻」「人間魚雷」、これらは近年騒がせたイスラム国の自爆テロを思い出させた。筆者はイスラム国の有志志願の動画を観た事がある。

 それにはまだ8歳くらいの男の子が父親から銃の使い方を学び、捕虜にした兵士の首をナイフで斬り落とし、その頭をボールに見立ててサッカーをしている動画であった。

 そして最期の動画では父親自ら送り出し、その男の子がジープに乗って「今日、僕は神になるんだ!」「僕は英雄だ!ヒャッハー」と、はしゃぎながら敵の砦に突撃して、火薬を積んだジープごと爆死するシーンだった。その父親もまた、銃によって頭を吹き飛ばされた遺体が映って終了する。


「こうして彼ら父子おやこアラーの元へ召された。死は恐れるものでは無い。彼ら父子おやこの英雄達の様に、我らも続こう!我らが崇めるアラーと正義の為に、この聖戦を勝ち抜くのだ。同志達よ立ち上がれ!共に正義をつらぬくのだ!」


 男の子は微塵(みじん)も死ぬ事に対して恐怖を感じていなかった。そればかりか死ぬ事に対して、喜びさえ感じていたのだ。筆者は、男の子が爆死するシーンを観て号泣した。これが洗脳教育の怖さだ。

 言うならば、イスラム教もキリスト教もユダヤ教も皆同じ神様を信仰しているのだ。「唯一神」である。イスラム教では「アラー」、キリスト教では「YHWH(ヤハウェ)」(神様の名前は人間では発音出来ない為このスペルであり、ヤハウェとは便宜上付けられた呼び名に過ぎない)。同じ神様を信仰しているのに、「教えが違う」と言う理由で何千年も殺し合っているのだ。

 日本人もある意味狂信国であり、日本国自体が神様の住む国として神様の権現である天皇陛下の為に、「特攻」や「人間魚雷」など自爆テロにも似た玉砕行為を強制された。

 この様な真似が出来るのは、狂信国だけであると筆者は思っている。純粋な民族性である日本人は、信じやすく洗脳されやすい。その為、洗脳教育を受けた日本人もまた、被害者であると筆者は思う。

 考えてみよう。今日(こんにち)の中国は、中華人民共和国であり共産党が支配する国である。かつて日清戦争によって勝利し、台湾を割譲された日本は植民地を手に入れた。1滴の血も流さず手に入れた台湾を日本は大切にした。当時の台湾は田舎の島国に過ぎず、物資を輸送するのに不便であったので鉄道を通し、学校もほとんど無かった為に建てて教育を行った。その他、水道などのインフラも整備したりと台湾に対して日本は恩しか施していない。だから台湾人は親日家が多いのである。

 その後、太平洋戦争で負けた日本は、台湾を清から中華民国となっていた中国に返還した。しかし中国では共産党によるクーデターで中華人民共和国を建国し、中華民国は台湾へ逃れて政権を維持したのである。つまり我々が言う台湾とは、中華民国なのである。台湾が中国から独立したがる理由はこの為だ。

 日本は台湾を返還するに当たって、台湾に関しては今後一切関与致しませんと約定を結んだ。だから中国は、日本がアメリカに格好付けて台湾事情に口を挟む事に反発する。お前らは台湾に関して放棄したはずだろう?と。中国が日本に怒るのも無理は無いのである。

 では、「中華民国と中華人民共和国は同じ中国でも違う国でしょう?領土として同じ中国であるから一つの中国にしたいのよね?」と中国人に聞けば、そうだと答えるだろう。もしも「それは違う、台湾は同じ国だ」と言われたら、「ふーん、その理屈で言うなら中華人民共和国は中華民国なんだ?」と言い返してやれば良い。きっと顔を真っ赤にして怒り出すはずだ。

 日本もかつての帝国主義であった大日本帝国は滅び、今は日本国である。日本国と大日本帝国は違う国だ。

 だからと言って、日本人が中国の人々に対して行った責任転嫁をするつもりも無い。日本はアジア諸国が西洋によって食い物にされる中で日露戦争に勝利し、「アジアの星」と讃えられ、日本を見倣(みなら)えと言う運動が起こった。

 しかし持たざる国である日本もまた西洋に(なら)って、物欲の為に朝鮮や中国に攻め込んで植民地化しようとしたのである。アジア諸国に対する裏切りであった。恨まれるのも無理は無い。日本は、中国や朝鮮に対して大きな借りがあるのだ。この様な悲劇を繰り返さない為にも、日本はもう2度と戦争をしてはいけない国だ。

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