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転生したら、どうやら水滸伝の世界に迷い込んだみたいです  作者: 奈津輝としか


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第18話 遼vs.梁山泊 第3戦目③

「クソがっ!」


 忌忌(いまいま)しい。またしても後一歩のところで、公孫勝に邪魔をされた。公孫勝以外にも、妖術使いが居たのは計算外であった。樊瑞とか言ったか?だが公孫勝は勿論、自分と比べても格下の妖術使いだ。

 陛下に(いさ)んで梁山泊に挑んだものの、2人の弟を亡くした上におめおめと幽州に戻って来てしまった。面目は丸潰れであり、どの(つら)下げて陛下の前に立てると言うのだ。酒も食事もまるで喉を通らない。イライラだけが積もった。


(ポゥ)!(報告!)梁山泊軍1万が、この幽州を目指して進軍中です!」


 行動が早過ぎると賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)は思い、直ぐに守りを堅めさせた。


(ポゥ)!(報告!)太真(タイヂェン)駙馬(ふば)様と李金吾様がご到着されました」


 紅旗を掲げる軍を率いる太真胥慶(タイヂェン・シュチン)は、駙馬(ふば)であり天祚帝の娘婿だ。青旗の軍団は李集(リー・ジー)で、かつて中国の役職では執金吾とか金吾衛と呼ばれた金吾職を(にな)い、皇帝の警護や宮殿及び首都の警備を行う役職で、三品の高官であった。


駙馬(ふば)様に拝謁致します。李金吾様」


 駙馬(ふば)に拝謁した後、李金吾には軽く会釈をして迎え入れた。直ぐに酒と料理を用意させ、もてなした。


「今は戦時中(ゆえ)にこの様な物しかなく、どうぞお許し下さい」


「ははは、構わぬ」


 駙馬(ふば)は注がれた酒杯を飲み干して、李金吾に目配せをした。李金吾は頷くと、賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)に皮肉を言った。


(フェァ)副統軍は、大言荘厳を吐きながら大した戦果を挙げておらぬとか?それで面目を保って都に帰れますかな?」


 官位が上だと思って偉そうにしやがってと、賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)は内心穏やかでは無かったが、笑顔を取り(つくろ)ってヘラヘラと笑って見せた。


「言い訳は致しません。思ったよりも梁山泊の奴らが手強かったのです。ですがまだ挽回する余地は御座います」


「ほう?まだ手立てがあると申すか?何やら策がある様だが、儂が李金吾と幽州までやって来たのは、一つ手助けをしてやろうと思ったからよ」


駙馬(ふば)様達に手助けして頂けるとは、心強い限りです。お2人に一献捧げます!」


 賀重宝(フェァ、ヂョンバオ)は杯の酒を飲み干して、空になった杯を2人に向けた。


(ハォ)!(よし良いぞ!)梁山泊の奴らは、我らが援軍として到着した事はまだ知るまい。今のうちに左右に別れて埋伏し、梁山泊軍が攻めて来たらその背後を討ち、城の内外から挟撃して殲滅する」


「ははは、見事な策ですな。これで奴らも一貫の終わりでしょう」


 勝利を確信した(うたげ)は、深夜まで続いた。



「白勝は大丈夫なのか?」


 助け出された盧俊義は、心配して白勝のベッドに駆け寄った。


「重傷であったが、峠を越えて今は眠っている。いつ目覚めると言う保証は出来んがのぅ。じゃが、安静が大事じゃ。このまま目覚めるまで眠らせてやれぃ」


 神医・安道全は、盧俊義達に告げて酒を飲みに行った。徐寧や索超も白勝に感じ入り、涙ぐんだ。


「幽州を攻める」


 宋首領や呉軍師に言われるまでも無く、あわや全滅寸前まで盧俊義隊を追い詰め白勝が重傷を負った。そのお礼参りは必ずさせてもらうと、頭領達は殺気立ち士気が昂揚していた。


 怒れる梁山泊軍は、幽都府(幽州城は正確には幽都府)の城門へ押し寄せた。

(幽州は副都・南京とされた事もあるが、その後幽都府と改称された。ちなみに現在の遼国の副都は燕京である)


 城門の上に立つ賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)を確認すると、宋江は声を張り上げて説得を試みた。


「もうお前達は、袋の(ねずみ)だ。大人しく降伏すれば、命だけは助けてやろう!」


「笑わせるな!弟達の仇を討たなければ、あの世で会わせる顔が無い!」


 賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)は城門を開くと、打って出た。それを合図に、林冲と花栄の騎馬隊、李逵の歩兵隊が突撃を開始した。


「それ!」


 林冲が蛇矛を振り回して突き入れたが、寸前の所で()わされた。直ぐに反転して賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)の三尖両刃刀を弾き、蛇矛を回転させて一撃を加えたが髪を(かす)めただけだった。

 賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)は、逃げながら背負った剣に手をやろうとしたので、妖術を使う気だと察して更に追って攻撃し続けた。攻撃を受け流すのが精一杯で、妖術を使う隙が生まれなかった。


「チッ!」


 林冲が妖術を警戒して、出すに出せない状況となり舌打ちした。幽都府の城門近くまで戻ると、手を挙げて合図を送った。林冲は一斉射撃を恐れて途中から追うのを止めたが、振り返ると軍鼓が鳴らされ背後から銅鑼を鳴らし、土埃を巻き上げながら迫る軍団を見た。


「ははは、梁山泊(きさまら)はこれで終わりだ!」


 策に(はま)ったと笑いが止まらない賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)は、再び反転して突撃し、宋江の首を取ろうと迫った。


賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)よ。我が軍が誇る、関勝や林冲と互角に戦える腕には恐れ入った。だがな、知恵比べに()いては、お前は我が軍師の足元にも及ばない」


 幽都府が籠城するならば、もはや策は無い。かつての副都であるから、()とすにはかなりの日数を費やす事になる。その間に援軍でも到着しようものなら、更に困難を極める事になったであろう。

 しかし遼軍が攻めの姿勢を見せたなら、必ずや伏兵が潜んでいるだろうと呉軍師は読んでいた。果たして読み通りとなったからには、対策は立ててある。

 梁山泊もまた伏兵しており、太真(タイヂェン)駙馬(ふば)には関勝が、李金吾には呼延灼がその横腹を突いた。伏兵に伏兵するなど想像もしておらず、遼兵は混乱して壊滅状態となった。


退()け!退()け!」


 彼らは「梁山泊を討って手柄を立てる」と言う欲にかられただけであり、幽州を守る責任は無い。命あっての物種だとばかりに、さっさと首都である上京に逃げ戻って行った。


 賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)は、駙馬(ふば)達が逃げるのを見て吐き捨てる様に言った。


「偉そうに威張り散らした割には、早い逃げ足だ。口先だけで役に立たない奴らだ」


 幽都府の城壁に取り付く梁山泊軍を見て、落城は必須だと(あきら)めて城を捨てて逃げる事にした。周囲は既に梁山泊軍に囲まれていたが、青石峪まで逃げ切る事が出来れば助かると考えた。

 断崖絶壁の地に追われれば、普通なら逃げ切る事など不可能だと考えるだろう。しかし自分には妖術がある。黒雲に乗って断崖から逃げ出すのは容易(たやす)い。


「うおぉぉぉ、こんな、こんな所で死んでたまるかぁ!!」


 賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)は最後の力を振り絞って血路を切り開き、遂に青石峪まで辿(たど)り着いた。


「ふふ、ふわぁははは…。助かった。勝った、俺は(賭けに)勝ったぞ!」


 賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)が妖術を唱えて黒雲を出して乗ろうとすると、霧散して消えた。またもや公孫勝か?と思ったが、周囲には梁山泊軍は居なかった。


「な、何だ?」


 鳥肌が立ち、手足が震えていた。怯えているのか、この副統軍である自分が?一体何に?そしてハッと気付いた。近付いて来る人間に。その人間はフードを深く被り、姿がよく見えなかった。


「い、いつの間に…」


 ここは断崖に囲まれた天然の要塞とも呼べる地だ。だがこいつは一体どうやって?馬鹿な、まさかこの断崖を登って来たとでも言うのか?そんな事は有り得ない。そう思った時には、既にその得体の知れない人間は自分の間合いにいた。

 恐怖で三尖両刃刀をその人間に繰り出すと、「カチンっ」と言う音が聞こえた気がした。そしてそのフードを被った得体の知れない人間が女だと認識したのは、自分の首が落ちる時に目が合ってからだった。


「何者だ!?」


 黄信が()える様に言うと、宋万、楊雄、石秀らも続いて現れた。本来のストーリーであれば、黄信によって馬上から斬り落とされた所を、宋万と楊雄に匕首で背中や腹を刺され、石秀に心臓を貫かれてトドメを刺されるのである。


「ごめんなさいね。貴方達の獲物を横取りしちゃって。私は楊志の義兄弟、花娘子と申します。以後お見知り置きを」


「楊兄貴の義兄弟だって?」


「会わせてくれれば、本当か嘘か判るわよ」


 俺は半信半疑の黄信達に連れられて、梁山泊軍と合流した。


(グゥア)!(兄ぃ!)」


嫂嫂(サオサオ)!(義姉上!)」


 俺は、楊志との久しぶりの再会を喜んだ。見た目年齢は俺の方が遥かに歳下なのだが、楊志が義姉あねと呼ぶので皆は不思議そうにしていた。


「はっはぁ。息災であったか?」


 手合わせをして顔見知りとなった魯智深も声を掛けて来た。元ニ龍山の面々と顔見知りなので、梁山泊に歓迎ムードで迎えられた。幽都府に入城し、勝利の(うたげ)に参加した。


「この度の論功行賞第一位は、白勝だ」


 宋江が白勝の功績を褒め称えると、誰も依存は無かった。


「白兄貴、あんたがいなけりゃ、俺たちは今頃は骨になってたぜ」


「違いねぇ。あの断崖を転がり落ちて助けを求めるって言い出した日には、正気だとは思えなかったわぃ」


「さすが白兄貴だ。あの勇気と決断力には敬服致した」


「俺達がこうして生きていられるのも、白兄貴のお陰だ」


 梁山泊が誇る豪傑である徐寧や索超らに兄貴と呼ばれ、他の頭領達からも褒め称えられて悪い気はしなかった。白勝は、照れ臭そうに頭を()いて「今日は飲むぞ!」と叫んだ。


「こりゃ!怪我人に飲ませちゃいかん!」


 酒好きの安道全が、既に顔を赤らめて白勝を叱りつけ、「お前の分は儂が飲む」と言って酒甕を奪い合って騒いだ。


 後世の歴史研究家が、梁山泊の頭領は方臘の乱まで1人も失わないが、この対遼国戦争で一歩間違えば大惨事となった可能性は高く、梁山泊が1人の頭領も失わなかったのは正に奇跡と運の連続であった。ここで梁山泊軍は、壊滅していてもおかしくは無いほどの激戦であったと評している。

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