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転生したら、どうやら水滸伝の世界に迷い込んだみたいです  作者: 奈津輝としか


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第17話 遼vs.梁山泊 第3戦目②

 盧俊義は断崖の上から下を見下ろし、絶望していた。周囲はほぼ垂直の崖に囲まれて、とても登りきる事は不可能に思えた。だからと言って、切り立った崖から下へ降ることも無理だろう。

 周囲を捜索させ、この場所に入って来たと思われる横穴(トンネル)しかこの断崖からの出口は無かった。しかしそこは、土砂や瓦礫で(ふさ)がれていたのだ。ここに閉じ込めて放置し、餓死させるつもりだろう。


「副首領、このままでは全滅を待つのみです。助かる可能性に賭けましょう」


 白勝は、無謀とも思える案を献策した。


「馬鹿な!死ぬつもりか?仮に無事降りられたとしても、見つけてもらえねば死ぬだけだ」


「宋首領も、必ず我らを探しているはず。このまま何もしなければ死を待つだけです。何もせずに諦めるよりも、何かをして諦めた方が良いとは思いませんか?」


 白勝の熱意に打たれた盧俊義は、(わず)かな可能性に賭けてみる事にした。


 白勝は、某シミュレーションゲームのステイタスなどで雑魚扱いされて能力が低いイメージが定着しているが、水滸伝の物語の中では主に軍団の副将を務めており、梁山泊の豪傑達と比べると影が薄くなってしまうが、将に必要なのは武力だけでは無い。



 一方、宋江の命令で盧俊義達を探していた段景住の目に、不思議な光景が映っていた。ほとんど垂直の断崖の上から、布袋が転がり落ちて来るのが見えたのだ。あんな所には誰も居そうに無いし、落ちて来た布袋に何が入っているのかも気になって駆け寄った。

 毛氈(もうせん)羊毛(ウール)100%)の袋を縛っている口紐(くちひも)を開けて中を覗くと、思わず悲鳴を上げた。


「ひやぁ!」


 中に血塗(ちまみ)れの人が入っていたので、遺体が捨てられたのだと思い、「遼の奴ら酷い真似をしやがる」と憤慨した。しかし良く見ると、誰かに似ている。顔の血を手巾(ハンカチ)(ぬぐ)うと、果たして白勝だった。


「白勝?白勝だ!!だ、大丈夫か!?」


 鼻に指を近づけると、まだ(かす)かに息をしていた。梁山泊には神医・安道全がいるので、助けられるかも知れない。急ぎ白勝を背負って、陣へと走った。



「峠は超えました。安静にしていれば、大丈夫です」


 神医は白勝の脈を診て、心配して集まっている頭領達に知らせた。


「白勝、お前の知恵と勇気には毎度驚かされる。あの断崖から布袋に入って転がり落ちるなど、思い付いても実行出来る者など居ない…」


 宋江は、盧俊義達を救う為に瀕死の重傷を負った白勝を褒め称え、涙を流した。

 呉用は、白勝が転がり落ちて来た断崖の周辺地図を広げて、盧俊義達は「青石峪」に閉じ込められているに違いないと目星を付けた。

 梁山泊軍は全軍で青石峪を目指した。2本の大きな(ひのき)があり、そのすぐ側に瓦礫で塞がれた横穴が見えた。ここで間違い無いだろう。遼軍に警戒しながら、瓦礫を取り除く作業を始めた。




「この我の術を破る者がいるとはな。噂に聞く南の大宗師・羅真人の弟子とは、本当であったか」


 自分と互角に渡り合った関勝と言う男は、あの関羽の子孫らしい。梁山泊が誇る豪傑達の中でも一、ニを争う豪の者と言う。それならば、自分と互角に戦える者は梁山泊では限られると言う事だ。また、羅真人の弟子とやらの方も、予め対策を立てていればどうにかなりそうだ。次に会う時が梁山泊の最期の時だと、賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)は不気味にニヤリと笑った。


(ポゥ)!(報告!)梁山泊軍が青石峪に気付き、瓦礫を撤去しております」


「何だと!?」


 どうしてあの場所が判った?と考えたが、直ぐに軍に伝えた。


「全軍で梁山泊の背後を突き、殲滅せよ!」


 脚の速い騎馬隊は、半刻もせずに梁山泊軍がいる青石峪を視界に留めた。賀拆(フェァ・チャイ)賀雲(フェァ・ユン)も突撃態勢に入った。そこへ賀拆(フェァ・チャイ)に向かって林冲が一騎で駆けて来た。


「それっ!」


「喰らえ!」


 賀拆(フェァ・チャイ)が繰り出した槍を林冲は受け流し、騎馬を反転させて蛇矛で突いたが、賀拆(フェァ・チャイ)は辛うじてそれを()わした。しかし林冲は、目にも止まらぬ速さで連突を繰り出し、賀拆(フェァ・チャイ)の胸を貫いた。


「兄者ぁ!」


 怒り狂った賀雲(フェァ・ユン)を尻目にし、林冲は一瞥(いちべつ)すらせずに駆け去った。


「おのれ許さん!逃すものか!!」


 賀雲(フェァ・ユン)は我を忘れて林冲を追うと、突如天地がひっくり返った。地面に叩き付けられる瞬間に受身は取れたが、直ぐに立ち上がる事が出来なかった。

 何が起こったのかと見れば、馬の前脚が無く、目の前に血の(したた)る斧を握り締めた大男が立っていた。


「お前さんは、俺様の獲物だ」


 次の瞬間、賀雲(フェァ・ユン)の首と胴は離れていた。


 横穴を塞ぐ瓦礫を取り除き、大石を退()かそうと懸命に作業している所へ遼軍が殺到して来た。


(シャア)!(殺せ!)」


 遼軍が歓声を上げて梁山泊軍に蟻のように群がると、黒衣の道士が立ち塞がって剣を携えて呪文を唱えて手を広げた。すると次の瞬間、遼軍は業火に包まれたのだ。


「うぎゃあぁぁ」


 身体に着火した火を消そうと、遼兵は地面に転がった。悲鳴を上げて逃げ惑う遼兵に、花栄が率いる弓隊が矢を撃ち込んだ。


「おのれ、公孫勝の他にもまだいたか…。恐れるな!まやかしに過ぎない。斬り込め!」


 賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)は兵を叱咤激励し鼓舞したが、そうは言われても間違いなく炎の熱さを感じる。これが本当に、幻とはとても思えない。そこへ公孫勝が横から呪文を唱えると旋風が巻き起こり、混世魔王・樊瑞が作り出した炎を巻き込んで出来た炎の壁が遼兵の前に立ち(ふさ)がった。これではとても戦えぬ。そう思った兵が数人退却すると、それに(なら)って雪崩を打って兵が勝手に退却を始め、遼軍は混乱を極めた。


「うおぉぉぉ!!」


 そこへ李逵が率いる歩兵軍が、突撃して来た。鮑旭と李逵が逃げて来た遼兵を斬って斬りまくり、李袞と項充が飛刀を投げて2人を援護した。


退()け、退()け!」


 ここに来てようやく賀重宝(フェァ・ヂョンバオ)は、退却の合図を出した。遼軍が退()いた為に、全軍の力を結集して大石を退()けた。横穴の先からも瓦礫を除いている者の姿を確認した。


「索超殿!」


「おぉ、関勝殿か!?」


 断崖に取り残された盧俊義隊は、助かった喜びで歓声を上げた。助け出された盧俊義は、宋江と抱き合って涙を流して無事を喜びあった。2人の(わだかま)りが解けた瞬間だった。

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