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第百二話:戦慄の魔将、襲来! 聖域の防壁を守り抜くために――シロとササマル、初陣の時!

平穏な聖域の日常は、空間を引き裂く黒い亀裂とともに終わりを告げた。

現れたのは、歴史の闇に埋もれた因縁を纏う魔王軍幹部。

語られるシルヴィアの隠された過去、そして999年という悠久の時がもたらす悲劇の真実。

守るべき場所、守るべき仲間。奏多の静かな怒りが、新たな守護者たちの牙を目覚めさせる!

聖域防衛戦、開戦!!

中庭の空気が、凍りつくような冷気から、不吉な熱と焦燥の入り混じった澱んだ空気に塗り替えられた。

突如として、ハルが空を見上げて背中の羽毛を逆立て、喉の奥から聞いたこともないような威嚇の咆哮を放った。

「ガオオオォォォォォッ!!!!!」

「ハル!? お前、どうしたんだよ!?」

俺が叫ぶのと同時に、館の門番として庭を見張っていた自律型ゴーレムのアイギスが、眼光を赤く明滅させながら機械的な警告音を響かせた。

「……侵入者感知! 魔王軍幹部! 緊急事態!! 結界防壁の出力、最大値を超えて崩壊中!」

「ま、まさか……あのマーリドが張った聖域の結界を?」

俺の問いに答える暇もなく、乾いたガラスが割れるような音とともに、聖域を覆っていた半透明の光のドームが粉々に砕け散った。

「パリーンッ!!!」

『なんと!? 結界を破壊しただと!? この私ですら一瞬で無力化されるなど、有り得ぬ……!』

マーリドの驚愕の悲鳴が響く中、亀裂の向こうから現れたのは、漆黒の外套に身を包んだ、異形の影だった。その周囲には、空間そのものが腐食するかのような禍々しい魔力が渦巻いている。

「そんな……」

ルミナの顔から血の気が引く。レオは牙を剥き出しにして唸り、ミケは毛を逆立てて背を丸めていた。

「こ、この姿は……魔王軍幹部!? あの時に見たヴォルグ・ザードとは、纏っているオーラの種類がまるで違う……!」

ヴィオラの声も震えている。初めて見るその圧倒的な重圧に、エリスでさえ剣を構える手に冷や汗を滲ませていた。

「私ですら息が詰まる……。あんな存在、騎士団の伝説にも記されていないわ!」

霧が晴れるように姿を現したのは、銀色の仮面をつけた、冷徹な美貌を持つ男だった。彼はゆっくりと地面に降り立つと、懐かしげに聖域の館を見渡した。

「久しぶりだな……またここに訪れるとは……。実に懐かしいよ」

「お前は一体誰だ!?」

男は銀の仮面に手をかけ、低く、そして冷酷に笑った。

「我が名は魔将**『ゼノス・カルナ』**。ここは私にとって、因縁深き場所だ。私はここで、忌々しい賢者のエルドラド・ルシファー……いや、黄金郷という名前の異世界転生者と戦い、一度は敗北したのだ。老いぼれて、もはや勇者一派の面影すらないただの老人にな!」

ゼノスはゆっくりと、シルヴィアの方へと視線を向けた。

「まさか、その忌々しい因縁の血筋を持つ末裔がいるとはな……そうであろう? シルヴィア・ルシファー!! 貴様は裏切り者として人間側へ寝返ったデーモン族の血を受け継ぎ、我ら魔王軍を滅ぼそうとしたあのエルフの血までをも混じらせている……汚らわしい!」

「……!」

シルヴィアの顔色が青ざめる。ゼノスは愉悦に浸るように言葉を重ねる。

「貴様はあの時、まだ赤ん坊だったか? 貴様はこの目で絶望を見た……黄金郷を裏切って、神聖エデン王国に王位継承の戦争を仕掛けた異世界転生者……奴はこの世界を支配するために鋼鉄の帝国を建国した! その裏切り者は裏で戦争を牛耳り、貴様らルシファー一族を滅ぼした。二つの国に分裂させ、今も続く争いの火種を蒔いたのだ。貴様は赤ん坊から999年間、その絶望を背負い続けて今ここにいるのだろう?」

「999年……!?」

俺は耳を疑った。999歳? シルヴィアさんが?

ルミナが愕然として口を開く。

「二ヶ月前に帝国軍に滅ぼされたアルカディア王国……あれが、彼女のルーツ……?」

エリスも言葉を失っていた。自分が仕える王国が、そんな陰謀の上に成り立っていたなど、知るはずもなかった。

「……言いたくはなかった。でも、事実よ……」

シルヴィアは震える声でそう呟くしかなかった。ゼノスは鼻で笑う。

「奴の思惑通りには行かず、生まれた国々は逆らい続けた。だから帝国は科学と機械を頼ったのだ。私が裏で技術を授けてやった。奴は死んだが、今や帝国は魔王様さえも排除しようと動いている……世界征服のためにな! 恩を仇で返された気分だ。だから私は復讐を誓った。手始めに、因縁のこの地を終わらせる!」

ゼノスは俺を指差した。

「賢者の意思を継ぐ愚かな転生者よ。我ら魔王軍の傘下に入るなら命は助けてやる。ただし、シルヴィア・ルシファーだけは……ここで処刑だ!」

心臓が早鐘を打つ。俺の背後では、シロとササマルが、ゼノスの放つ禍々しい魔力を察知し、獣としての本能を全開にさせていた。

「断る!! そんな勝手な理由で、俺達の大切な居場所を無くされてたまるか!!!」

マーリドが激昂する。

『随分と生意気な奴だなぁ……よかろう! ヴォルグの時のように、清らかな水でズタズタにして浄化してやろう!』

ゼノスは仮面の下で冷酷に笑った。

「残念……貴様が召喚するその未知なる魔獣たちを歓迎したいところだが、仕方ない! 望み通り、この地でリベンジ戦争と行こうか!!」

聖域の庭が揺れる。

魔将ゼノスの背後から、無数の機械仕掛けの魔兵たちが次元の裂け目から溢れ出してきた。

「シロ、ササマル! みんな、防衛体制を取れ!! 奴らに一歩も侵入させるな!!」

俺の号令とともに、シロが巨大な咆哮を上げ、ササマルが地を叩いて威嚇する。

運命の、そして復讐の戦いが、今ここから始まる。

ついに姿を現した魔将ゼノス・カルナ!

明かされたシルヴィアの999年にも及ぶ悲劇の過去。そして、機械と魔法が融合した魔王軍の軍勢が、静かな聖域を蹂躙せんと迫ります。

次回、聖域防衛戦の幕が上がる! シロとササマルの初陣の行方は!?

次回:

「氷と大地が荒れ狂う! 帝国の機械兵を叩き潰せ、聖域防衛戦開始!!」

お楽しみに!

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