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第六話 人間らしく生きたい

不死鳥の炎が迫ってくる。

逃げようにも囲まれていて逃げれない。

炎が目の前まで迫り死を意識する。

目を瞑り真っ暗になり炎の熱だけが伝わってくる。

炎が迫ってくる中オガラはもっと人間らしく生きれば良かったと後悔した。

迫りくる不死鳥の炎に少し怖いと感じた。

そして一筋の涙を流した。

だが突然炎が消えた。

オガラは驚いて立ち上がろうとしたが腰を抜かしていて立てなかった。


「何で炎を消したんだ!?」


オガラが殺すなら殺せと言わんばかりに叫んだ。

その質問にブレイクはため息混じりに答えた。


「俺は犯罪者じゃない、冒険家だ。人は殺せない」


その言葉にオガラは顔を見せないように俯く。

髪の毛でよく顔が見えなかったが確かに涙がきらりと光っていた。

自分を人として見てくれたことが嬉しかったのだろうか。

確かにここに来る冒険家は化け物、怪物とオガラを罵った。

その度オガラは己の腕を憎しみの刃に変え彼らを斬り殺してきた。

だがたまたま口にしてしまっただけかもと思いオガラは尋ねる。


「僕はこんな全身刃物だしとても人とは」

「バーロー、お前さっき炎の中で死ぬことに怖いと思っただろ? 死ぬことは誰でも怖い。それだけで充分だろ人と言うには」


ブレイクが微笑んで言う。

その微笑みと言葉に我慢できずに泣いてしまった。


「おい泣くなよ。男だろ?」

「泣いてない!ご、ゴミが入っただけだよ」

「そうか……」


ブレイクはその姿に過去の自分を少し重ねてしまった。

ドラゴンに襲われたときの死への恐怖。

そしてシビアという男の偉大さ。

しばらくオガラは泣いていたがブレイクは止めなかった。

オガラが泣き止むとブレイクは目線を会わせる為しゃがんだ。


「なあオガラ……お前が呪いを受けて嫌なこともあったかもしれない。でもな、ただ憎んで人を傷つけるためにお前の腕はあるんじゃない。もっと人間らしく使うべきだ」

「どうすればいいの?」

「さあな……でもそれはこれから見つけていけばいいんじゃないか? お前も俺もまだ若いんだから」


ブレイクが白い歯を見せる。

オガラもそうだねと白い歯を見せた。


「よしじゃあお前も俺たちと旅をしようか。そうした方がいいだろ」

「えっ……でも依頼主の町長さんが僕を許さないよ」


心配そうな顔をするオガラの背中をブレイクが思いっきり叩く。


「大丈夫だって。町長さんもきっと分かってくれる」


ブレイクはまた白い歯を見せた。

その表情に安心したのかオガラも立ち上がりよろしくと握手した。


「んじゃ洞窟を出るか」

「うん」


そう言ってブレイクたちは歩き出した。

だがオガラは何か違和感を覚えた。

体の奥から自分の魂を持って行かれるような痛みを。


(この痛みは……まさか)


オガラは痛みに耐えきれずその場に倒れる。

その音に気付いたブレイクが顔色を変えて駆けつける。

しっかりしろとオガラの肩を揺する。

オガラの目は細く顔色は青ざめていた。


「ブレイクごめん……僕もう駄目みたいだ。悪魔が僕の魂を食べに来たらしい」

「オガラしっかりしろ!!」


だが先ほどよりもオガラの顔は青ざめていく。

ブレイクは肩を揺すりながら大声でしっかりしろと叫び続けた。

無我夢中で肩を揺すっているとオガラが手を伸ばしてブレイクの頬に置いた。

そして口を動かした。

声はもう聞こえなかったが口の形で分かった。

オガラは確かにこう言っていた。


「ありがとう」


その瞬間オガラの手はブレイクの頬から滑り落ち洞窟の冷たい地面の上に落ちた。


「オガラアアアア!!」




暗くて何もなくて寒いとも熱いとも感じない空間。

そんなところにオガラはいた。

とりあえず周りを見回す。

だが一寸先も見えない闇だった。


「僕死んだのかなあ」


するとどこからか声がした。

オガラは誰だと問いかけてみる。

コツコツと足音が何もない闇の世界に響く。

不気味に思い身構える。

来るなら来いと言わんばかりに握りしめていた拳が一気に解けた。

彼は見てしまったのだ足音の正体を。


「僕……?」


そう足音を響かせながら近づいてきたのはオガラだった。

不敵な笑顔を作りながらそいつはオガラに近づいた。

オガラは驚きのあまり言葉を失っている。


「驚いた? そう僕は君だ」


不敵な笑みを浮かべながらそいつは言った。


「嘘だ! 僕は二人もいない!!」

「悲しいことを言わないでよ。僕は君が生まれた時から一緒にいたんだからさ」


そう言うとそいつは手で顔を軽く触る。

するとそいつの顔はオガラの顔ではなく赤眼の骸骨になった。

その赤眼はまるで血のように、そしてとても冷徹な眼だった。

まるで『悪魔』のような。


「ククク……俺はお前に呪いをかけた悪魔だ、驚いたか? このままお前を殺すのは造作もなくつまらない。どうだ今までの自分を見てみるか」


悪魔は指をオガラの額に当てて少し念じた。

するとオガラの頭に映像が流れてきた。

それはまるで脳裏に焼きつくように鮮明に映し出された。

生まれて平和な幸福の生活から能力に目覚め人々に非難され絶望と憎悪に溺れ殺戮を繰り返した日々。

オガラの今までが全て映し出された。

それをオガラは眉ひとつ動かさず見ていた。


「なんだお前? 他の奴らとは違うな。他の奴らは止めてくれえええ! とか言って殺してやったのに」


悪魔が不思議がって尋ねる。

オガラはため息交じりに答える。


「バーロー……僕の人生はまだ終わってないよ。だから過去の自分も受け入れて僕は今から僕と言う人間の答えを見つけたいんだ」

「なるほどな。つまりお前はまだ生きたいと」


オガラは鼻で笑って答えた。


「当たり前だよ。僕はまだ生きたいんだ!! そしてこの力を人間らしく使いたい」


すると悪魔は大声で笑い出した。

オガラは少しムッとする。


「何がおかしいの?」

「いや、お前みたいなのは初めてだからな。いいだろうお前の命少し待ってやろう」

「ありがとう……でも君にはもう会いたくないな」

「だったら答えを見つけるまで生き続けろ。もし途中で逃げ出そうとしたらすぐに殺してやるからな」

「ガキがほざきやがって」


悪魔はオガラを掴み上に投げ飛ばした。

そして気付くとオガラは洞窟で横になっていた。

側ででブレイクが泣いている。


「ブレイク……?」


声に気付きブレイクがオガラに抱きつく。


「止めてよ気持ち悪い」

「だってよ~お前急に青ざめて倒れるんだから」


ごめんごめんと手を合わせ軽く舌を出す。


「なあお前どうなったんだよ」


オガラは少し戸惑ったが笑って答えた。


「悪魔にね生きたいって宣戦布告してきた」


ブレイクはよく理解できなかったがひとまずオガラが無事だったのを確認し安心したのかその場に倒れてしまった。

生きたい……この言葉をオガラは忘れないように何度も心の中で叫び続けた。



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