第二話 僕は桃から生まれた……
ブレイクは学院を飛び出し、近くの町に向かうため草原を歩いていた。
ふと顔を上げれば青い空、白い雲、眩しいほどの太陽。
風は東向き、天気はいたって良好である。
旅をするにはとてもいい日だ。
ブレイクは視線を元に戻し歩き出そうとする。
しかし先程まで明るかった足元が一気に暗くなった。
なにかと思い顔を上げる。
そこには先程までの青い空はなく、腹をすかせた気色悪い巨大いも虫がいた。
「ああ、グリーンワームか……こいつ斬ったら体液でドロドロになるよなあ」
斬ろうか斬らまいか迷っているブレイクに、空腹のグリーンワームはお構いなしに思いっきり突っ込んできた。
ブレイクは焦る様子もなくゆっくりと腰の剣を抜く。
「はあ、やらなきゃやられるか」
ブレイクは突っ込んできたグリーンワームの顔に剣をそっと置いた。
と同時に指のフェニックスの灯火が光り出す。
グリーンワームは炎に包まれながら真っ二つになった。
「不死鳥の灯火。 見たかいも虫め」
とは言うもののブレイクの体はグリーンワームの緑の体液でドロドロになった。
「うわ最悪俺のお気にのコートが……」
ブレイクのお気に入りの白いコートは緑色に染まっていた。
ブレイクはどうしようかと考えていると近くに川を見つけた。
ブレイクは川で裸になり自分と自分の服を洗う。
川はとても澄んでいて冷たくとても気持ち良かった。
「はあ……なんかガキのころ読んだ絵本みたいだな。 確かおばあさんは川へ洗濯に行って大きな桃を……」
すると川上から大きな桃が流れてきた。
「そうそう、こんな大きな桃が……ってはああああ!?」
そうその桃はあの絵本のようにとても大きく中に本当に人が入っているのではないかと思わせるものだった。
ブレイクはひとまず桃を岸にあげる。
「これ割ったら人がでてくんのかな? でもあれそのまま切ったら中血だらけになるよな」
だがここは絵本通り切ることにした。
ブレイクは剣を思いっきり振る。
すると桃は勢いよく切れた。
中から人が顔を出した。
「やあ、僕は桃から生まれた……ゴフ」
ブレイクはこのありえない状況に焦り桃を閉じる。
そしてもう一回恐る恐る桃を開ける。
「やあ、僕は桃から生まれた……」
やはり人がいた。
ブレイクは焦りまた桃を閉じる。
「はあはあ、ありえないだろ。 桃から人が……」
ブレイクは小刻みに桃を開け閉めする。
「やあ……」
「僕は……」
「桃から……」
「……生まれた」
「……桃って、いつまでやらすきだああああ!」
少年は勢いよく桃から飛び出してきた。
だが赤ん坊ではなく左目に眼帯をした好青年といった感じだった。
少年は服もちゃんと着ていてブレイクは少しがっかりする。
「何? その赤ん坊じゃないの的な目は」
「いや、別に何も……」
「まあいいや。 それにしてもやっと外に出られたよ」
「やっと?」
少年はしまったとでも言うような顔をしたがすぐに話を変えた。
「僕の名前はフェイト・M・ピーチ」
「桃だけにか?」
「ああ、気付かなかったよ。 そう言われれば」
「気付かなかったんかい!!」
ブレイクは少し取り乱して激しく突っ込む。
少し恥ずかしげにしていたがなかなかの突っ込みであった。
「あ……俺の名前はブレイク・オドランだ」
「へえ、ブレイクね。 ねえ僕帰るとこがないから一緒についてってもいい?」
「は?」
衝撃的な言葉にブレイクはその一言しか言い返せなかった。
帰るとこがない。
このまだあどけなさが残るピーチは確かにそう言った。
つまりピーチは家出か追い出されたか、それとももっと深い理由かで帰るところがないということだ。
だが、桃で川を流れてくるところを見ると深い理由があるのだろう。
ちょうど仲間が欲しかったブレイクだったので仲間にすることにした。
ピーチは喜んで川ではしゃいでいる。
「ふう、仲間ができたか……手間が省けた」
そう一息入れるとピーチにもう出発するぞと声をかける。
ピーチは満面の笑みで返事をしたが、その表情は一気に曇った。
ピーチが後ろ後ろと指をさしている。
「後ろ? ってはああああああ!?」
ブレイクが後ろを振り向くと先程の倍くらいのグリーンワームが立っていた。
突っ込んでくるグリーンワームに応戦しようとするが剣が地面に置いてあったので斬ることができなかった。
もう駄目かと思ったがピーチが間一髪で割って入る。
グリーンワームは真っ二つに割れた。
しかし飛び散った体液は緑から桃色の花びらに変わり、まるで桜の花びらが舞う幻想的な世界に変えた。
「居合・八重桜」
「うわ、すげえ。 綺麗だなあ」
「一時的にね」
「え?」
ピーチの言うとおりその桃色の花びらはブレイクの体に触れるとあのベトベトした緑の体液に変わった。
せっかく洗ったブレイクのお気にのコートと二人の体はまた汚れてしまった。
「テメェ……俺のコートがまた汚れちまったじゃねえか!!」
「わ! やめてよ、言ったでしょ一時的だって~!!」
「知るか!!」
結局もう一回川で洗濯をするおばあさ……二人であった。




