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余談―2 信西及びその子どもの運命について

 力にすがって、力で勝ったモノはその力で身を滅ぼす、と何かで読んだ覚えがあります。

 信西も同じことをしたのではないか、と私は考えます。

 ここまでこのエッセイを書いていて、私なりに浮かび上がる一節があります。

 極めて有名な平家物語の冒頭で、

「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり。(以下、略)」

 私なりに考えるのが、信西自身は否定するでしょうが、結果的に信西がいわゆる武者の世を切り開き、自らは処刑され、又、鎌倉幕府を成立させる遠因等となったのではということです。


 信西は自分としては(既述ですが)藤原南家の出身で学者の路を歩みたいと考えていましたが、高階家の養子に縁戚関係からなることになり、その結果として大学頭になれませんでした。

 更に高階家は院近臣の一員ではありましたが、信西が俗世を離れる頃は地位を下落させており、大きく出世することが望めない家になっていました。

 そうしたことが、信西を出家させて、身分制の枠外に自らを置く事態を引き起こしたのです。


 そして、このことは信西にとって、結果的に吉となることになりました。

 信西が鳥羽上皇の私的顧問になった後、近衛天皇崩御後に誰が天皇陛下に即位されるのか、朝廷内で紛議となった末に、信西の妻が乳母を務める雅仁親王(後白河天皇)が今上陛下になる事態が起きることになるのです。

 更に言えば、後白河天皇が即位してそう間を置くことなく、当時の「治天の君」であった鳥羽上皇が病に罹って危篤になり、更に崩御するという事態が起きます。


 そして、皇位継承問題に(当時、起こっていた)摂関家の継承問題が絡み合った末、(細かく言えば間違っていると言われても仕方ありませんが)保元の乱が起きることになります。

 この辺り、細かく考えていくと当時の史料を作った著者の背景等まで考えねばならず、それこそ偏見から誤った記述が史料で為されている危険性を考慮しないといけませんが。


 私が調べる限りで誤っているかもしれませんが、保元の乱が勃発して、結果的に崇徳上皇と藤原頼長が結託して、正統政府といえる後白河天皇と藤原忠通と対峙する事態、いわゆる最終段階と言われても仕方のない段階になった状況でも、後白河天皇らは崇徳上皇に対する実際の武力攻撃を逡巡していて、何とか武力行使をせずに崇徳上皇方を屈服させられないのか、と模索していたらしいです。


 ですが、この後白河天皇らの躊躇を止めさせたのが信西であり、信西が声を大にして、崇徳上皇らに対する大規模な武力攻撃を主張したことから、後白河天皇は平清盛や源義朝らに崇徳上皇らを攻撃することを命じます。

 その結果として、崇徳上皇らが打ち破られたことから、保元の乱は後白河天皇方の大勝利で終結することになります。


 ですが、後から顧みてみれば、という話になりますが。

 信西のこの行動は、平治の乱において、二条天皇陛下を筆頭とする二条天皇親政派が、後白河上皇方に対する武力行使を躊躇わない原因になったのではないか、と私には考えられてなりません。


 何しろ保元の乱から平治の乱までの時間ですが、5年も経っていないのです。

 そういった近い過去に有った保元の乱の実例からして、平治の乱に際して、二条天皇親政派にしてみれば、

「やられる前にやるのが当然だ。後白河上皇を幽閉してしまおう。更に信西を排除しよう」

という考え、勝てばよいのだ、武力行使をしても問題無い、という考えをもたらして当然ではないでしょうか。


 その結果として、三条殿襲撃が起き、信西は自害するものの謀叛人として梟首され、更に息子達は流罪という悲運に遭うことになります。

 そして、藤原経宗や藤原惟方が流罪になり、平治の乱が終結した後で、ようやく信西の息子達は流罪先から召還されることになるのです。

 

 もし、保元の乱で信西が武力行使を主張しなければ。

 そんなことを私は考えます。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  血を流す事を躊躇わぬ一歩を踏み出したが故に自身もその連鎖に巻き込まれざるを得なかった信西、因果応報とは良くぞ言ったもんですな(ただ保元の乱でのやり口は非情ではあるけど乱を早期に収める為だ…
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