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第3話 後白河上皇院政推進派と二条天皇推進派の対立

 更にこの当時の朝廷、政府は問題を抱えていました。

 これまで白河院政、鳥羽院政と「治天の君」を抱いた院政が二代続くことで、それなりの政治的安定が為されていましたが、後白河上皇は表向きは「治天の君」でしたが、白河院政や鳥羽院政のような権威が伴っていなかったのです。


 この「院政」、「治天の君」についての理解は、私なりの理解に基づくものであり、詳しい方々から多大な叱正を受ける覚悟で書きますが。

 まず大前提として、白河院政、鳥羽院政ですが、余りにも皮肉なことに御堂関白、藤原道長の摂関政治が上手く行き過ぎた末に近親婚が相次いだ結果からか、後三条天皇が誕生する事態が起きたことが、院政成立の背景としてあります。


 ともかく摂関政治の肝は今上陛下の外祖父なり、母方伯叔父なりになって外戚政治を行うところにあったのですが、道長と頼通の父子二代に亘る余りに長い政権は後三条天皇誕生によって破断した一方で、摂関は藤原頼通の子孫が成るのが当然で、外戚イコール摂関ではないという意識を産んでいました。

 詳細な説明を省略しますが、こういった背景が後に摂関家、後世の五摂家成立にまで繋がります。

 

 その一方、白河天皇も鳥羽天皇も色々と皇位継承(及び自らの権力保持)については思惑があり、そういったことが自らは退位して、自分の支持する皇子を天皇に即位させて、自らの権力を確保しようとする動きを引き起こします。

 そうしたことが、外戚で無い者、摂関家が摂政、関白になるのを「治天の君」が基本的に支持するという事態につながったのです。

(外戚で無い者を摂政、関白にすれば、今上陛下に対する立場が弱く、「治天の君」が優位に立てるという裏事情があります)


 更に言えば、摂関家も色々なゴタゴタ(その頂点といえるのが、保元の乱における藤原忠通と藤原頼長の兄弟対立)を内部で抱え込んでおり、後三条天皇即位から白河院政、鳥羽院政から保元の乱と結果的にその内部対立解消に苦闘する事態が起きて、「治天の君」の思惑にのったのです。


 ともかく、その結果として皇室も摂関家も権威が下落する事態が保元の乱終結後に起きていました。

 そして、二条天皇即位によって、後白河上皇が「治天の君」になって後白河院政が成立しましたが。

 そうはいっても、二条天皇の即位は「ただ仏と仏の評定」と当時の貴族の平信範の日記に記される有様で、時の今上(後白河天皇)陛下や摂関家の意向を完全に無視して、信西と当時は出家していた美福門院の意向で決まったモノでした。


 だから、後白河院政が成立したとはいえ、権威が極めて乏しい現実があり、そんな院政が敷かれるならば、二条天皇が親政されるべきではないか、という貴族がそれなり以上にいるのも当然でした。

(信西は後白河上皇の乳母の夫であり、当然のことながら、権威不足の後白河院政を支持しているという現実がありました。

 だから、信西を批判する面々は、ほぼ必然的に二条天皇が親政されるべき、と考える方向に流れる現実がありました) 


 とはいえ、信西の政治改革の基本方針は真っ当なモノであり、実際に荘園整理等で成果も挙げていたようで、いわゆる中立派、良識派から信西は支持されているという現実がありました。


 ですが、桃崎氏の新説を読んで、私自身が気付かされたことですが。

 こういった現実は極めて脆い代物だったのです。

 後白河院政を速やかに強化する施法がある一方で、二条天皇親政を支持する面々の息の根を止める施法がありました。

 それを後白河上皇が執ろうとして、信西が賛同した(若しくは、そう周囲の院近臣から想われた)ことが、平治の乱の勃発を最終的に引き起こしたのでは、と私は今では考えています。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  やはり拗れに拗れてる平安末期の宮中情勢( ̄∀ ̄)こーなると平治の乱の後に暫し平穏な小康状態があったのは後白河院や清盛たち勝ち組と見られた人々の実力ではなく二条天皇や美福門院など対抗馬…
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