キウイにオリーブオイルをかける理由
ひどい便秘に悩まされていた。
そんな時、テレビでキウイにオリーブオイルを垂らし、塩をふって食べると便秘解消するというニュースが流れていた。
試さない理由はない。テレビの影響でキウイは人気のようだった。店頭のキウイの棚はスカスカだった。ギリギリ最後の一個を手に入れ、さっそく試してみる事にした。
よく熟れているキウイだった。少し黄色くなりかけ、柔らかく蜜が滴っている。オリーブオイルの味、酸味、甘味、塩がいい感じに溶け合う。普通にキウイを食べるより美味しい。
何日かこの方法を試してが、便秘は解消しなかった。仕方がないので医者に行くことにした。
医者は寡黙な頑固親父といった雰囲気だった。怖そうな医者だったが、私は調子にのり、キウイにオリーブオイルを垂らして食べても効果がなかった事を訴えた。
「あんた、バカかい?」
「え!?」
「病気っていうのは、その人の心と生き方が変わらんと治んないんだわ。私は何人も患者を見てきたからわかる。他責思考で誰かに何とかして貰おうって思っている患者は、長引くぞ。生きてるだけでも恵まれてるのに文句をつけてるヤツもそうだ。挙句、忠告をした他人も『裁いてる』とか言って拒絶したりする。こんなんで治るもんも治らねーぞ。ま、悲劇のヒロインをやりたければずっと不幸に浸っていればいい。白馬の王子様なんて来ないがな」
耳の痛い話だった。できれば聞きたくない話だったが、甘ったるい話だけ聞けば良いなんて思えなくなっていた。
「睡眠は? 運動は? 食事は?」
医者に色々質問され、生活習慣が手抜きという事に気づく。確かにファストフードばっかり行っているのに、突然キウイを食べたって治るわけがない。
それにストレス。
夜中まで起き、他人にSNSを見て嫉妬心を募らせていた。
こうして何が悪かったのか、だいたい原因が掴めてきた。一つ一つ生活習慣を整え、丁寧に生活していると、自然と便秘が治ってきた。
あの医者に行く事は、二度となさそうだけど。
耳の痛い事を言ってくれて良かったのだろう。
こうして再びキウイにオリーブオイル、少々塩を振りかけて食べる。もうテレビの影響はすっかり忘れ去られ、キウイは普通に手に入った。
前食べた時より、なぜか甘く美味しく感じた。