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甘じょっぱい話〜砂糖と塩の美味しい物語〜  作者: 地野千塩


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真夜中のワッフルチキン

 人間は禁止されるとやりたくなる生き物だ。


 心理学用語ではカリギュラ効果というらしい。例えば童話「浦島太郎」が玉手箱を開けてしまったのもそんな心理の影響と言われている。


 かくいう私も「食べるな」と言われると余計に食べたいくなる。


 私の母は、アンチ添加物の自然派ママだった。毎日の食卓は玄米菜食だった。家には電子レンジも炊飯器もない。電磁波が身体に悪影響らしく、母は全ての料理を手作りしていた。


 確かに美容には良かった。ニキビも全くできないし、健康にもいい。だからと言って風邪や頭痛などの不調は普通にあったし、微妙だ。実際、母は食事の準備に相当ストレスを溜めていて、よく父と喧嘩していた。


 そんな環境下で育ったので、ソーセージ、ファスフード、レトルトカレー、スナック菓子、冷凍食品、コンビニ弁当はほとんど食べた事がない。友達付き合いで数回食べた事はあったが、その後母に怒られた。友達とも絶交させられた。


 だからだろうか。


 母に禁止されればされるほど、ソーセージ、ファストフード、レトルトカレー、スナック菓子、冷凍食品、コンビニ弁当の憧れが強くなっていた。


「食べちゃダメ」と言われると、食べたくなる。別に他のことは禁止されても我慢できたが、母の嫌うジャンキーでチープで健康に悪い食品が食べたくて仕方ない。


 そんな折、父と母が親戚の用事で出かけてしまっていた。家には私一人。


 本来なら受験勉強に精を出さなければならな。夜も寝ずに英単語の一つでも覚えた方が良いにだが、小腹が減ってきた……。


 時計を見ると夜の二十三時。冷蔵庫を見てみたが、玄米ご飯のおにぎりとオーガニック栽培のカボチャ煮があるだけだ。母が作り置きしていったものだが、食べたくない。これから蒸し器で温めるのも面倒くさい。


 なんでウチには電子レンジが無いのだろう。母は電子レンジは悪いユダヤ人が発明したもので、金持ちは使っていないとか都市伝説にハマっていたが、金持ちだって便利な調理器具があった方がいいんじゃないか。夜中に突然お腹が減ったとき電子レンジが無いと不便じゃないか。


 そんな事を考えていたら、さらにお腹が減ってきた。財布を掴むと、近所のコンビニに行く。夜のコンビニに光は、妙に優しく見えた。何となく秘密基地ぽっく見えてドキドキしてくる。


 店内に入ると揚物も匂いがした。決して良い匂いではない。母もコンビニのフライヤーの油は毒と言っていたが、今はその匂いに吸い寄せられる。レジの側にある揚物のケースには、スパイシーなチキンが置いてあった。これ見よがしにライトに照らされ、思わず唾を飲み込む。


 チキンだけでけ買えば良かったが、もっと背徳的な食べ物を思いついてしまった。袋パンコーナーにあるワッフルとチキンを一緒に食べるのだ。ついでにウチにあるオーガニックのメープルシロップをかけてやろう。


 あのメイプルシロップは、確か二千円近くしたらしいが、添加物まみれの袋パンと危険な油で揚げたチキンの上にかけられる事など想像にもしていないだろう。


 あぁ、食べたい。


 オーガニックのメープルシロップをジャンキーな食べ物にかける事を想像してたら、余計に食べたくなってきた。口の中はよだれでいっぱいだ。


 コンビニで袋に入ったワッフルとチキンを買い、一目散に家に帰ると、皿にもった。本来は手洗いうがいもするべきだが、今夜はどうでもいい。


 格子状のワッフル、その上にチキンを鎮座させる。最後にオーガニックのメープルシロップを垂らす。黄金色の蜜は、危険な食べ物を汚していく。ワッフルもチキンも蜜でベトベトだ。


「い、いただきます……」


 手が汚れるのも気にせず、蜜が滴るワッフルとチキンにかぶりつく。


 口に中で甘さとしょっぱさが戦っている!


 さて、どちらが勝つか。この戦いは舌も上で泥沼化していたが、最後に飲み込んだメープルシロップの味が一番残る。やはり毒みたいな食べ物よりオーガニックが優勢という事なのか。


 それでも今夜だけ。


 今夜だけは、危険な食べ物を楽しもう。


 そうすれば明日からは受験勉強も母の不味い食事もきっと乗り越えられると思うから。

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