第2話
「また魔物の群れか」
俺はリーデルへという。
「そうそう。なんでも村人が逃げる暇もなく、魔物の群れにやられたらしい。戦おうとしていたものもいたようだが、多数の家はその時していたものがそのまま残されていたそうだ。食べかけのものや、作りかけの裁縫道具とかな」
「ということは、音もなく、逃げる暇もなくやられたってことか。最近そんな話が多いな」
「まあ、な」
グラスをすべて拭き終えたらしく、拭き上げタオルを4つ折りに、さらに長方形になるように折り畳み、カウンターの下側へとしまい込んでいた。
「また討伐の命令でも出るな。しばらくはおとなしくしてくれていたんだがなぁ」
「今回のものは指定されていないらしいから、もう少し後だろ。どうせ今頃国王からの諮問を受けた魔物討伐委員会が、どのランクにするかを決めているころだろうさ」
言いつつも、少し気になるようだ。
実際、王都から少し離れた郊外にあるこの居酒屋だとはいえ、街道沿いにあるおかげでかなり儲けているという話を以前聞いた。
ここが王立ギルドの称号を得れたのも、その上納金のおかげだということが大きいだろう。
「指定されたらまた討伐にいくか」
「そうだな。ま、その時にはまたここにきてくれよ。ほら、そろそろ開店だ。追加注文がなければ隅っこに行ってくれないか」
壁にある時計が、そろそろ開店時間である午前9時を指そうとしている。
紫色をしている、いわゆる魔法結晶が少し輝いているのを見ると、移動する時間が来ているのは間違いがないだろう。
「連絡が来るまではこうしておくさ」
入れてもらったコップを手に取り、カウンターの一番隅、入り口を見ることができる、一番離れたところへと移動する。
そもそもここが俺にとっての指定席のようなものだ。
誰かが俺を探しに来て、真っ先に向かうべき場所ともいえる。