帝国へ(フィアット家)2
「ねえ、どれ着る?」
部屋に案内されくつろぐ間もなく、フィーとカレンがやってきた。それも2人の後からガラガラと何十着も服がかけられたハンガーラックを恐らく帝国のメイド達が引いてきた。
でも、桃色がないのは流石だ。
夕食時に着る服を決めようという事だ。
気持ちはわかるが、どれだけ持ってきてるのよ。
呆れるしかなかった。20着以上はある。
帝国から必要な物を集めておくね、と楽しそうに文を出していたのは知っていたがまさかここまでしていると思わなかった。
それもお揃いばかりだ。
「まだ少ないくらいよ。2人分だから多く見えるかもしれないし、急ぎで集めたのでしょうね。質はあまり良くないわ」
服を触りながらつまらなそうに、ちつ、と舌打ちをした途端、ハンガーラックを引いてきたメイド達が顔色が悪くなりながらも、微笑んでいた。
「カレン皇女様。ゆっくり選びたいですから人払いをお願い致します」
ん?と私を見て周りを見た。
やっと気付きましたか。
普段の口調で私に話しかけてきますが、仲がいい事はあまり知られてはいけません。
帝国が私を特別扱いする、と噂になっても困るでしょ?
そうは思うが、お揃い、と言う時点で分かってしまっただろうが、大きな声ではっきりとは言えない。それもわざわざ帝国からメイド達が服を持って来ているのだから、明らかに私が特別扱い、と帝国でも念が押されているだろう。
「ふっ」
フィーは分かっていたようで、堪えた笑いが聞こえた。
途端にカレンがにこやかに微笑みながらも、フィーと私も睨みつけた。
「そうね。下がりなさい。後は私が決めるわ」
「ターニャはここに残れ」
カレンの言葉にすかさずフィーが口を出した。
「かしこまりました」
ターニャが頭を下げた姿に、他のメイド達は反論の意思は感じられなかった。
侯爵家の三女という肩書きは伊達ではないし、また、メイド、と言うより、カレンの召使に選抜された素質を皆は納得しているのだろう。
馬車のながらでの会話が、思い浮かんでくる。
帝国侯爵家の三女、と言った言葉の中に秘められた、忌々しい感情を私は感じた。
三女の扱いは、どの国もぞんざいだ。
いや、女、として産まれたその時から血筋を護るための道具としかない。
子を作る、道具、だ。
腹立たしい言葉だが、それを、逆手に取れば、己がどれだけ高みに上がれるかの、存在意義を問われる。
愛人。
幾らでも作ればいい。
たが、最終的には正妻が産んだ子こそが、意義がある。
その意味を理解し、暗躍する。
ある意味殿方よりも賢しい頭脳を持たねばならないかもしれない。
そう考えれば女の方が男よりも、権力を持てるかもしれない。
だが、ターニャはそんな権力者争いには興味ななさそうに見えた。純粋に、フィーとカレンに誠心誠意尽くすことに喜びを感じている。
家のための権力争いに嫌気がさした、
本当に2人に尽くしたかった、
まあ、色々考え方はあるだろうが、ともかくターニャは侯爵家の3女、と言う立場には興味無さそうだ。
「これは?」
皆が部屋を出ると、カレンが楽しそうにレースがふんだんに使われているオレンジの服を見せてきた。
「駄目よ。それはクルリが作ってくれた服よ。クルリがいる時に着ないと意味が無いわ」
無理してると自分でわ分かる笑いで、カレンに首を振った。
「あ・・・そうだったね。じゃあこ・・・駄目だ。これもクルリが作った服だわ。えーとこれ!?」
「駄目よ。それもクルリが作った訳では無いけど、デザインしてくれたわ」
「そうだった・・・。あの子、センスが良すぎるわね」
「ふふっ、そうね。私達の好みをちゃんと取り入れてるものね。そうね、フィーが決めてくれる?」
「フィーが?どうせスティングにはどれも似合うとか言うだけだよ」
「当たり前だろ。スティングなんだから。だけど、これがいいかな」
薄いグリーンの服を選んでくれた。偶然か、それとも分かっていたのか、その服は帝国から用意されていた服だった。
「じゃあそれでいいわ」
カレンそれを見て異論は唱えなかった。
「私も。ねえ、お茶でも飲んで少しゆっくりしようよ。流石に疲れたわ」
帝国馬車は乗り心地は良かったが、ゆっくり寝られる訳がない。ウトウトしながら、車輪の音や馬の嘶きがきになり、なかなか寝られなかった。
うーんと背伸びしなが、ソファに座ると私の横にカレン、前にフィーが座ると、手際よくターニャがお茶の準備をしてくれやっと落ち着いた気分だったが、直ぐに
トントン。
扉を叩く音がした。
「ガルマでございます。少しお話しを宜しいでしょうか?」
皆で顔を見合わせ、同じ気持ちだった。
面倒くさっ、
である。
疲れてるからゆっくりしたかったが、無下にも扱えない。
この国の宰相様だし、滞在の許可についても動いてくれただろうし、フィアット子爵様共々、私達の為に色々準備してくただろう。
それに、隣国だ。
下手な事は出来ない。
「ターニャ、開けてあげて」
「はい、公爵令嬢」
腹部に綺麗に手を添え、会釈すると扉に歩いていった。
纏う空気が違う、と思った。
クルリの礼儀も全く問題は無いが、貴族として産まれ、貴族として教育されれば、やはりここまで違うのかと驚嘆する。
クルリはもう少し礼儀を教育してあげないといけないわね。




