王妃様との決戦2
私が手を差し出すと、ついてきた兵士が紙束を渡してきた。
「止めなさい!!」
私の行動にはっとし、王妃様の怒号に満ちた必死な声と、王妃様に集まっていた人々の嘆きの声がホールに響く。
その必死な顔と、
必死な声が、
甘美だわ!
なんの躊躇いもなく、その暖炉の中に紙束を放り投げた!
「いやあ!!」
「やめてください!!」
阿鼻叫喚がホールに響き暖炉の側にひしめき合うように群がってきたが、兵士がその全員を捕えた。
轟轟と紙は綺麗に燃えていく中、泣き喚く声で暴れる召使い達を悠然と見た。
燃え尽きた紙は、謝罪した召使い達、全ての紹介状。
彼らには、もう、未来がない。
そうしたのはあなたよ、王妃様。
静かになったホールに残るは、爵位ある貴族達が震えながら土下座している。
さあ、クラウス、次はあなたよ。
ゆっくりと、初めの場に戻り、陛下と王妃様を見た。
「陛下、この者達は貴族という立場でありながら、立場を弁えず傲慢な態度をとりました。よって、この先100年王宮の出入りを禁ずる事を望みます!」
「お待ちください、それはあまりに重い仕打ちかと思います!」
すかさず王妃様が入ってきた。
「王妃様、勿論ご覚えておられますよね?殿下とご一緒におられた方々が、帝国皇子、皇女の逆鱗に触れ、爵位返上し平民になりました事を」
「それは・・・」
だって貴女がその処罰の決断をした張本人。
「それに比べれば、まだまだ甘い処分かと思います」
「だが、100年も王宮に出入りを禁止されれば、貴族としては面目も、立場もないでしょう!?」
はい?
だから何?
その偉そうな言い方、もう沢山だわ。
「あらあら、王妃様、はっきりお伝えしなけれいけませんね」
ふんわりと微笑み、思いっきり睨んだ。
「はっきりとはどう意味ですか!?」
「ご自分の昨日の所業をお忘れですか?何があっても手を出すべきではございません。それを、最も見せてはいけない帝国皇子、皇女に見せた。貴方様がこの国の品位を落としているのです!それを私が尻拭いしていると分かりませんか!!」
「黙りなさい!!」
「王妃、お前が黙れ!!スティング殿の言う通り、昨日の失態をどのように収める気だ!?」
初めて聞く陛下の怒りの声に王妃様は、一気に青ざめ言葉をなくした。
これまで蚊帳の外にいて、傍観に徹していた陛下の変貌に、流石に分が悪いと、本当に、やっと、今更気づいたようだ。
「スティング殿、全てを任そう。何をすればいい」
荒くなった呼吸を整えながら、私には優しく声をかけてくれた。
「ありがたきお言葉。では、この者達は先程お願いしました処分でお願いします」
声を呑むのが聞こえ、私に助けを求めるように顔を上げる、クラウスと目が合ったが、ふい、と背けた。
気持ち悪い。
二度と顔を見たくない。
「わかった」
「陛下!」
王妃様、誰もあなたの言葉を聞くものはいないわ。
「新しく雇う召使いは、私にお任せ頂きたいと思います。父や他の公爵様と、宰相様と話し合い、王宮に相応しい者達を選別致します」
「わかった」
「陛下!そのような事をすれば、公爵達の好きなようにされます!」
「次に、レイン殿についてです。流石にこれ以上、好き勝手な事をされては諸外国に対しても失礼です。それ相応の礼儀作法を、学ばすべきでございます」
「わかった」
「レインは関係ないでしょうが!お前がこなせばいいでしょう!」
まだ、言うの?
仕方ないわね。
「王妃様?この現状を誰が招いたか、また、はっきりお伝えしなければいけませんね」
悪女。
本当にそんな気分だった。
高揚感に、自然に笑みが浮かび、声が低くなる。
王妃様は、扇子を持つ手がぶるぶると震えてきた。
「あなた様、ですよ。当然お分かりですよね?ご自分が、全てやって来た事ですもの。だって、全員が王妃様に助けを求め、同じ事を口走っていた」
「やめなさい!」
「王妃様に言われたようにしたのに」
「やめなさい!」
「スティング様をいじめなさい、と言ったからやったのに、と」
「やめなさい!」
「それなのにこの仕打ちは、酷すぎます、と」
「やめなさい!」
「スティング様は、王妃様の操り人形だと言っていましたよね、と」
「やめなさい!」
「やめません!これが現実、そして結果でございます!!結果が全てと仰ったの王妃様、あなたです!!王妃様は、帝国皇子、皇女を侮辱する結果を残し、私が、それを」
そこで言葉を切り、カツカツと、王妃様の顔に顔を近づけた。
「尻拭いして差し上げているのです」
ふらりと、王妃様がよろけ近くにいた宰相様がすかさず助けた。
陛下は微動だにせず。冷ややかに王妃様を見つめいた。
「王妃様。もう、お下がり下さい」
出る幕は、終わりましたよ。
あなた様に、用はない。
あなた様に、この王宮での権力は、もうない。
だって、
削ぎ落としてやったわ。
王妃様、あなたの手駒、
全てを!!




