3通の手紙1
「なんて書いてあるのですか?」
夕食を食べ終わり、文を開けて見ていると、クルリがお茶を入れながらソワソワと聞いてきた。
今日はお父様、お母様、お兄様がいないから、堂々と聞いてきた。
王宮から帰ってきてお父様達に根掘り葉掘り聞かれるかと思っていたら、グラバル伯爵様からいいワインが手に入っからと急遽夕食に誘われ、お兄様を先頭に出掛けていった。
お兄様の恋人である、ミネア様とそのお父様グラバル伯爵様はかなりのワイン好きなのである。
それもかなり豪酒なのである。
お兄様とミネア様の婚約が決まってからは、よく集まり、つまりはどんちゃん騒ぎの飲み会が始まる。
さすがに今はフィーとカレンがいるから私は断った。というよりも、邪魔されずに文が読める、と私達的には丁度良かった。
だから、食堂にいるのは私達だけだから、思う存分話が出来る。
ワインかあ。
テレリナ子爵様のワインを今度貰ってみようかしら。質はいいと言っていたから、もしかしたらもっと早くに助けてあげれるかもしれないわ。
そんな事を考えながら、文を読んでいた。
1通目は、サリュート様からの文だ。
「あれから直ぐに、私に言われたように何か印がないのか見ていたら、見つけたかもしれない、という内容よ」
「何だったの?」カレン。
「桃色の小物、らしいわ。指輪だったり、イヤリングだったり、キーホルダーだったり、さりげなく身につけれるものみたい。それに・・・」
読みながら、武者震いが襲い、笑みが浮かんできた。
「どうしたんだ?」
フィーが私の嬉しそうな顔を見て、聞いてきた。
「その小物をつけているのが、全員中立派の方ばかりらしいわ。勿論、確実な情報ではないけれど、同じ色を持っているのは怪しい、と書いてある。それよりも、中立派が持っているという事は、中立派では無いと言うことだわ」
「王妃派、と言うのを隠しているのですね」クルリ
「そうよ。私としては、王妃派の中で中心的な人物を炙り出そうと思っていたけれど、逆に隠れていた敵を炙り出せたわ。だって、中立派は、私達の認識ではどちらにも属しない、それが中立派。そこを逆手にとって、公爵派がふと漏らした情報を流しているのよ」
盲点だった。
つい、中立派、という当たり障りのない立場にいるから、考えも及ばなかった。でも考えてみれば、公爵派、王妃派、どちらに属しているかは、ほぼ分かっている。
でも、中立派は?
上手く隠したものだわ。
いや、やはり、暗躍している誰かがいるのだ。
「誰だか知らないけど、やってくれるわね」
その誰かが、王妃様を動かしている。そうでなければ、今日の王妃様があまりにいつもと違う。
元々、王妃様は、王妃としての質があった訳では無い。
まって。
国の飢饉を助けた褒美として、グリニッジ伯爵様が娘を王妃に、と願った。
でも、それだけで、王妃の座が貰える?
誰が?
誰が、後押したの?
「・・・そこに辿りつく、あなた様が一番暗躍されていると思います」
「何?ザン何か言った?」
考えに夢中であまり聞こえなかったけど、また、呆れてる。
「いいえ。つまり、その中立派の核となる人物、つまり、王妃派の中でも中心的に動いているのでしょう?その輩をどうやって探し出すのですか?」
「簡単よ」
即答に、誰もが首を傾げた。
「簡単?全然簡単そうに見えないよ。だって、これまで気付かれず来たわけでしょ?」カレン
「明日よ。明日の私の動きで、姿を現すしかない状況になるわ。小説の中でもよく3人、というのが犯人を探すキーワードになっているでしょ。王妃派にとって、キーワードの3人は、グリニッジ伯爵様、公爵派の中にいる内通者、そうして、もう1人。見てなさい!その輩を表舞台に立たせてやるわ!!」
やってやるわ!
「お嬢様、素敵です!」
ぱちぱち取拍手するクルリに、急に恥ずかしくなってきた。
「輝いていきますよね。特に、今日の王妃様を睨むあの形相と、カレン様の行動を制し、こっちに来なさい!と眼力で呼んだあの顔!」
「そうよ!凄い怖かったもの。従わなかったら私が踏み潰れそうだっもの」
「・・・大袈裟よ」
「いや、それがスティングの良さだ。大丈夫だ。俺はスティングには逆らわないからな」
どういう意味よフィー。
そんな真顔で言わないでよ。
「あのね、これまで私が大人しかったから、それに比べたら、少し変わったから驚いでるだけでしょ?」
「つまり、これが本当のスティングの姿、という訳ね!人を貶める天才だわ!」カレン
はい?
「そうだな。大人しいよりも、今の様に激しい方が綺麗だ」フィー
はい?
「ですから、暗躍されているのですよ」ザン
はい?
「綺麗な方が睨むと怖い、というのは本当ですよね」クルリ
はい?
「なるほど。では、お嬢様の言葉を素直に信じてはいけないという事ですね。常に試されている、と思うように致します」リューナイト
はい?
「じゃあ、スティングには、逆らわない、というのは暗黙の了解でいきましょう!」
カレンの言葉に何故か皆は賛同し、頷いていた。
どういう意味よ、もう。




