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目覚めた公爵令嬢は、悪事を許しません  作者: トモブー
あなたを愛するのに疲れました
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決戦の週末(土曜日)がつんとやってやります・サロンにて1

サロンへ行き扉を開けると相も変わらず楽しそうな声が聞こえ、フィーとカレンが眉をひそめた。

「レインがいるのか?」

「スティングとバカ王子のお茶会でしょ?」

「しっ!ガナッシュ王子よ」

「一緒よ」

平然と答えるカレンに苦笑いした。

「毎回いるわ。さあ、行きましょう」

うながし側に行くと、殿下が私達に気づき急いで立ち上がった。

「これは、フィー皇子様にカレン皇女様」

すっと殿下が恭しく会釈している間に、レインが渋々立ち上がった。

「ごきげんよう」

レインがいい慣れない言葉てあいさつしたが、やらないよりはましだな。

「ごきげんよう」フィー。

「ごきげんよう」カレン。

2人は、いやいやと分かる顔で軽く微笑みながら会釈していた。

すぐに椅子が2つ用意され、私達は座った。

「あれ、スティング、どうしたのお?顔が赤いよ?」

「何でもございません」

「でもお、手の跡があるよ?誰に叩かれたの?」

机に肘を付きながら、心配そうな声で私ではなく、殿下を見た。

「ご心配いりません。別段困る事はありませんでしたから」

逆にスッキリしたわ。

「だが、確かに赤いぞ?誰にやられた?」

殿下は私が言葉をとめたものだから、少し困ったようだったがそれでも聞きたかったのだろう。

「王妃様ですわ」

「まさか!?」

「うっそおお!!」

「母上がその様な事をするわけがない!」

「陛下も確認しております」

カチャリとお茶が注がれ、配られていくが、カタカタと震える音がする。

ちらりと見ると王妃派だ。

どこまで先程の状況の話が流れたのか分からないが、青ざめた顔で、私を窺っている様子を見る限り、少しは知っているわね。

「それならスティング、何やったのだ!?母上を何故怒らせた!!」

そう思う時点で、私、という存在は殿下にはいないのだ。

私に全ての咎があり、私の話を聞く態度でもない、という事か。

「何もしておりません。正式な理由は、帝国へと文書にて送られるそうですから、王妃様に伺えば宜しいのでは無いのですか?」

「また、帝国なのお?この国の事なのに放って置けばいいのにね」

フィーとカレンの前でよく言えるわ。でも、その図々しさが、前の私なら平民だから仕方ない、と思っていたが、

今の私は違う。

レイン、あなた何者?

どこから、

図々しい、

ではなく、

その自信は、

くるのかしら?

「他国の宰相様が見ておられましたし、フィー皇子様とカレン皇女様も納得される内容ではありませんでしたから、結果そうなりました」

絶対に、探すわ。

「だから、スティングが何かしたのだろうか!?」

「そうだよぉ。王妃様は怒ったりしないもん。また、一言多く言ったんじゃないの?スティングったら、頭いいのは分かるけど、余計な事言っちゃうよねぇ」

あからさまに馬鹿にした言い方のレインに、にっこり笑って、

持っていたカップを、

すっと真横に持ち、

あえて落とした。

カチャン、と割れる音が響く。

「失礼いたしました。少し手が滑り落としてしまいましたわ」

微笑みながら、殿下とレインを見た。

「何時ものように仕立て屋が参っております。お待たせするのはどうかと思いますので、さっさと行かれたら如何ですか?私とのお茶の時間など、無駄でしょう?それならお2人で、馬鹿馬鹿しい仕立ての内容などを話された方が宜しいのではないのですか」

呆気に取られている2人に、まくし立てた。

「何だその態度は!?」

「何か?何時もお茶の時間に合わせて仕立て屋を呼んでおいででしょう?私の事など眼中にないのですから、素直に言ったまでです」

「そんな事ないよお。スティングは大事な人だよね、ガナッシュ?」

「その通りだ!」

「そうですか?それならば私のドレスがないのは何故でしょうか?フィー皇子様とカレン皇女様の誕生日パーティー様のドレスですよね?」

「だってそれは、自分で用意するからいらないでしょ?私はガナッシュが用意してくれないと、作れないもん」

「あらあら、そんな嘘何時までも通用しませんよ。レイン殿は幾らも報酬を貰っておいでですよね?もしくは報酬の代わりにドレスを頼んでいるのですね」

「なんの事だ?」

殿下が不思議そうにレインと私を見比べた。

この方は、本当に何も知らないのだ。

「スティング何のこと言ってるの?私そんな報酬貰える事してないよお?スティングったら、元々おかしな事言うのは知ってるけどちょっと酷いよお」

「それは申し訳ありませんわ。証拠もないのに先走ってしまいましたわね」

にっこりと笑う私に、にっこりと微笑み返してきた。

バチバチと火花が見えるようだ。

「話は変わりますが、殿下1つ忠告させて頂きます」

「忠告?」

「はい。お金がない、というレイン殿に普段の服を仕立ててあげて下さい。前々から思っていましたが、あまりにも貧相で殿下とご一緒に歩くには酷いものです」

「何だその言い方は!?」

「ほらあ、私が平民だから馬鹿にしているんだよ」

「そうですよ。だってレイン殿は平民でしょう?我々貴族と生まれも育ちも天と地との差があります」

「スティング!!言っていい事の悪い事があるだろうが!!」

「殿下がいつもご自分で言われているではありませんか?私がいつも平民であるレイン殿を下に見ている、と。いつも仰ってましたよね?」

「うっ・・・それはそうだが、本当に言うべきではないだろう」

「何故でしょうか?では殿下は私が言ってもいないのに関わらず、勝手に作り上げて言葉を発しておいででしたの?その様なおかしな事はございませんでしょう?」

「そ、それは・・・」

「なんでそんな意地悪な言い方しか出来ないの?仕方ないでしょう?私は平民で、ガナッシュとスティングは貴族で生まれちゃったんだもの。でも、別に私は今の生活に不満は持ってないよ。ほらあ、良く言うね。不満がある人は、人を攻撃する言い方しか出来ない、とね。スティング?そうなっちゃうよお」

「ご心配ありがとうございます。残念ながら、相手によって言葉を選びますわ。それよりも、レイン殿の着ている服があまりにお粗末ですわよ」

ふっと上品に笑ってあげたら、一気に目が鋭く変わった。

勿論殿下には見えていない。

「長く宮殿に出入りしている割には、全く気品には遠く、また、身につけているものが、平民臭すぎて可哀想なのです。ああ、殿下が、可哀想なのですわ。殿下がその様な粗末な格好の方を連れて歩いていましたら、まるで奴隷を従えているように見えますもの」

「ぶっ」カレン。

「くっくく」フィー。

「な、なんですって!!私お金が無いんだもん!!それにとても似合っている、と皆言ってくれたわ!!」

「それは、平民の方から、でしょう?確かにお姿は可愛らしく、街の方々も褒めておいででしたわ。殿下、ご覧下さい。肩からほつれた糸が見えますわ。その格好のまま宮殿を御一緒に歩き、使者の方々にどのように映るか?」

「・・・確かに。これは恥ずかしい」

「気付いていなかったの!!帰ったらすぐに、お母さんに繕って貰うわ!!」

恥ずかしいようで、顔を真っ赤にした。

「ともかく、どうせ、殿下がお金を出すのですから、せいぜい良い品物を仕立てて差し上げてください」

「何よその言い方!別に服が買えない訳じゃないわ!ガナッシュ行こうよ!仕立て屋さんが来てるんでしょ?」

「あ、ああそうだな」

「そうですよ。このようなつまらない話で待たせては申し訳ありませんわ」

「あ、そうだ、ガナッシュ、スティングに明日からいないよ、と言わないと」

「そうだったな。スティング、明日から私とレインは避暑地に行く」

「行ってらっしゃいませ。大丈夫ですわ。どこに、とは質問しません。興味ありませんから」

「またあ、またあ。本当は聞きたいんでしょ?だって場所がわかんないと後から追い付けないもん。ガナッシュ、教えて上げてよ」

しつこいな。

「必要ありません」

「何だその言い方は!毎回しつこく聞いてくるから教えてやっているのにこの間から私の気を引くためにわざわざ素っ気ない振りをしているのだろうが、後悔するぞ!!」

「あらあ、なかなかの決めゼリフをまさか殿下から聞くとは思いませんでした。でも、その決めゼリフは大体悪役が負け惜しみで言う言葉ですよね」

「ぶっ・・・ぷぷぷ」

「クルリ、殿下に対して笑うのは失礼よ。もう少し我慢しなさい」

「・・・すみ・・・ぶっふふふふふ!!」

「ふざけんな!!」

「私は至って真面目ですわ」

「行こう、ガナッシュ!」

レインは不貞腐れ顔で殿下の腕を引っぱり歩いていった。

「殿下、レイン殿の服を忘れずに頼んで差し上げて下さいね!」

私の捨て台詞に、フィーとカレン、そしてクルリが堪らず笑いだした。

私も一緒に笑いだし、とても和やかになる中、すごすごと王妃派の召使い達がサロンを出ていった。

何の挨拶もなく、出ていくなんてねえ。

明日の事を考えてまた、楽しくなってきた。

「さあ、お茶会を始めましょうよ。宮殿で出るお菓子はねえ、結構美味しいの。私のおすすめはこのバタークッキー。シンプル何だけど、こだわったバターブレンドを使ってて、香りも味も最高なのよ」

「へえ、楽しみ」

「じゃあ頂こうか」

「あ、待って。スジャーナこの茶器全部片付けて新しいのを用意してくれる?」

「はい、スティング様」

宜しい。

近くで控えていた、公爵派の召使いの1人で、サリュート家からの紹介で入っている。

この間まで、公爵令嬢様、と呼んでいたのが、名前になった。

「こちらをお預かりしております」

「ありがとう」

三通の文を渡し、手早くお茶の準備をしだした。

勿論、王妃派か誰もいないのを確認してだ。

さあて、楽しくなってきたわね。


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