パーティーから逃げたした
近くの部屋に入ると、直ぐに扉を閉めた。
「スティング」
私を包むように優しく抱きしめ、
まるで泣くような辛そうに、
私の名を呼ぶ、
フィーに、もう気持ちが我慢出来なかった。
「私は殿下を愛していたのよ!」
「知っている」
「私はずっと我慢していたわ!」
「知っている」
「私は殿下を守ろうと必死だったわ!」
「知っている」
「私は殿下を信じていたわ!」
「知っている」
「私は・・・私は・・・殿下を助けるつもりでいたのよ!!」
「スティング?」
私の手を取り、私のそばにいてくれたらそれで良かった。
たとえ情でもいい、
たとえ嘘でもいい、
たとえ言わされていたとしてもいい、
私を見て欲しかった!
でも、殿下は差し出した私の手を振り払った。
殿下、何故
私を愛している、
と言ったの?
その言葉の重さを分かって言ってくれてたのよね?
私は、
その言葉と、
その時のあなたの眼差しに、
永遠の幸せを約束された、
と、
信じたのよ。
人の気持ちは単純。
じゃあ、
の時の思いは、
その時だけの、
単純な思い?
なんて、酷いことを言うの。
私の全てが、
あなたで、
あなたの全てが、
私だと言ったじゃない!
だったら、同じように
言って欲しかった。
私よりも、
レインを愛してしまった、
と。
そうしてくれたら、こんなに辛い思いをしなかった。
本心か、
感情か。
フィーの言った言葉がなければ私は、きっと感情に支配されていた。
殿下を助けるのは私しかいない、
その想いに全てをかけ、何も見えないふりをして、ずっと、
苦しくて、
辛くて、
悲しい、
本心に背を向け、
我慢してきた。
それを我慢だ、と気づきもしなかった。
「・・・私は・・・殿下を信じたかった・・・」
本心の言葉が、口を出た。
「スティング、座ろうか」
フィーの優しい言葉と背中をさする手にこくりと頷いた。
「・・・ごめんなさい」
「何故謝る。スティングは何一つ悪くない。さあ、座ろう」
フィーは優しく微笑み、促されソファに座ると、そっと私の涙を拭き、お茶を入れてくれた。
「まだ、熱いから気をつけてな」
「・・・ありがとう」
受け取り、1口飲むと熱いながらも美味しかった。
「フィーは覚えてないかもしれないけど、昔、こうやってお茶を貰ったことがあるんだよ」
懐かしい、幼い思い出が蘇る。
「覚えてる」
「本当に?」
嬉しいと思い顔を上げると、何かを求めるような瞳で私を見ていた。




