異世界種族のV転生 ~天使エルエルはVTuberで楽して稼ぎたい……が、ダメッ!! ゼロ円の雨水美味しいですわ(たぶん大阪弁)~
雲間に隠れるように存在している神聖なる神殿――そこに二人の天使がいた。
片方は背の高い熾天使であるガブリエル、もう片方は見習い能天使の小柄な少女であった。
「能天使、エルエル・エクスシエルに命じる……」
「はっ、何なりと!!」
「汝、地球へ赴き、VTuberをせよ……」
「……が、ガブリエル様が命じてくださるのなら」
エルエルは困惑しつつも、最上級である熾天使に命じられて我々の世界へと降り立つのであった。
頭には神々しい光輪、背中には白鳥を連想させる美しい翼、清浄なる白布に身を包んでいる。
まさに彼女は天使だった。
「ここが地上ですか。迷える子羊たちよ、このわたくしが救ってみせましょう」
***
――そして一ヶ月後。
「はぁ? 殺すぞアンチたち! このワイを誰だと思ってるんや。能天使エルエルやぞ!!」
●底辺VTuberおつw
●天使の設定でその性格は無理でしょ
●完全におっさんの喋りで草
能天使エルエルは一ヶ月で見事に堕天していた。
悪魔の囁きなどではなく、ただ勝手に自滅して堕落するというのは前代未聞である。
ボロアパートの中、クーラーもないので汗ダラダラでPCに向かってVTuber配信をしている。
着古したTシャツ一枚でボサボサの髪、魔力不足で頭の輪っかも、背中の翼もない。
「おっさんの喋りじゃねー!! これは大阪の方の方言だって聞いたわ! 高貴なお嬢様たちも使ってるって――」
●すまん、アレは嘘だ
●ワザップに騙されすぎて草
●大阪に謝れw
●大阪というかネットスラング口調
「天罰下してぶっ殺すわ、テメェら! 住所教えろ、今から徒歩で向かってやるわ!」
●徒歩wwwww
●エルエルちゃん、お金なくて徒歩以外選択肢がないから……
●貧乏萌えだから一生貧乏でいてほしい
「くっそ! 貧乏を舐めやがって!! ワイは心までは貧しくならんわ!! ちょっと喉渇いたから水飲む……!! あ、水道止められてた……エナドリの空き缶に貯めてた雨水飲みま~す…………っぷはー! ゼロ円の雨水美味しいですわ!!」
●貧しすぎて泣ける
●ライフラインはちゃんとしようよ、天使……
●溜めてた雨水ってお腹壊さない?
「最初はお腹壊してたけど慣れたわ~。飲んでみ? 飛ぶぞ?」
●天国へ直行しそうだから遠慮します
●天使が雨水っていうと幻想的だけど、エナドリの空き缶で台無し
●初見です。どうしてこんなに堕天してしまったのですか?
「あ~……話せば長くなるんだわ~。ガブリエル様の命令で天球世界からこっちにやってきたんだけど、な~んか配信機材一式もらってVTuberやることになったんだわ。配信で魔力を集めて地球を救うとか。んで、初配信の頃はお寒い清楚キャラだったからさ~、配信機材以外いりませんってお天使ぶっちゃったんだよ~」
●初配信から豹変しすぎて笑う
「あ~、大後悔。銭がほしい~。支度金と言われて最初にガブリエル様にもらった結構な万札も馬のゲームやってガチャで溶かして、取り返そうと競馬やったら有り金全部すっちゃったし……熱くなってリボ払いまでしなきゃよかったわ……」
●考え得るサイテーなパターンで草
●その設定で天使は無理でしょ
「はぁ~~? 天使ですけど何かぁ~? しかも、階級はちょっとだけ偉い能天使なんだわ。芸能にも能ってついてるやん? だから、VTuberもラクショーって思ってたけど、全然チャンネル登録者数が増えねーでやんの……なんでかな~……」
●天使らしさゼロだからじゃね
●もっと上手い人外設定のVTuberなんていっぱいいるしな~
●あ、人気VTuber森焼イセルちゃんの配信に行ってきますね~w
●エルエル、お前本物の天使に謝れ
「うっせー! おまえら地獄に落ちて死ね!! ワイが本物の天使やー! あ、お水飲みま~す…………っぷはー! ゼロ円の雨水美味しいですわー!」
●やっぱり、こんな天使いるはずねぇな
今日も本物の天使であるエルエル・エクスシエルは、リスナーたちに煽られながら配信をするのであった。