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9.【突撃】


 俺はまずはスキルの使い方を見せることにした。

 木製の的に向かうようにして、立つ。


 カールが言う。


「アルがスキルを? イーフィアのより、どうせダサいだろ?」


 思わずムッとする。


(せっかく指導してやるのに、口の悪い奴だ)

 

 俺はため息を漏らしながら言う。


「そうだよ。俺が見せるのは【踏み込み】の使い方だ」

「ほら見ろ! 冒険者なら誰でも持ってるスキルだぞ! アルはやっぱりアルなんだ!」


 ここぞとばかりに言うカール。

 俺はそれを無視して、剣を構えた。


 別に良い。これはイーフィアに説明する意味もあるんだ。


「【踏み込み】はただ距離を縮めるためのスキルだと思われがちだけど、使い方次第なんだ」


 イーフィアが問う。


「使い方、ですか……?」


 アルが息を吐いて、呼吸と整える。

 姿勢を低くした。


「はぁ……【踏み込み・小】」


 子どもとは思えぬ速度で、木製の的に向かう。


「はっ!? 早すぎるだろ!」


 カールが叫び声をあげた。

 アルが剣を頭上に構える。


「切り下げ」


 上から下へ、大雑把に剣を振りかざす。

 素振りでよくやる動作と一緒だ。


 スパッ……と音が響いた。


 綺麗に木製の的が真っ二つになる。


「な……っ! なんだよその動き! めちゃくちゃ綺麗だ!」


 カールとその取り巻きが唖然とする。


「【踏み込み】で距離を縮め、素早く切り下げる」 

 

 剣を鞘に戻し、俺は言う。


 今回見せた奴は動きが単調だけど、赤毛の魔熊(レッド・ベアー)の時は主に移動手段として使っていた。


 あとは勢いをつけ、攻撃力を高めるためにも使った。

 状況によって使い方を変える。これがスキルのちゃんとした使い方だ。


 カールが背筋を伸ばした。


「す……すげえ! アルすげえな!」

「へっ?」


 カールが俺の両手を掴んで、目を輝かせていた。

 その取り巻きも俺のことを囲み、興奮している。


「なんだよアル! お前カッコいいじゃん! あんな技、父ちゃんでも出来ねえよ!」

「もっと見せてくれよ! 他のスキルとかないのか!?」

「俺もそのスキル欲しい!」


「ちょ、ちょっと待ってくれ……!」

 

 こんな大勢に迫られたことがなく、俺は困惑していた。


「カール! 俺は普通にスキルの使い方を見せただけで、特別なことは何も……!」

「なに言ってんだよ! この村で、お前みたいなことできる奴は誰もいないんだぞ!?」

「俺も初めて見た!」

「恰好良かったぜ!」

 

 あぁ、そうか。【踏み込み】は移動スキルとしてしか、見られてなかった。

 体力も多く消費するから使えないゴミスキルって思われていたんだ。


「スキルの使い方を見せたかっただけだから、落ち着いてくれ」

「……でもよ、スキルって神様から貰える物なんだぜ? 俺たちはまだ、誰もスキルを貰ってないぞ? 訓練して、何になるんだ?」


 そう疑問を抱くカール。

 俺は不敵な笑みを浮かべた。


「カール? 努力は裏切らないって言葉、知ってるか?」

「おお! 知ってるぞ! 俺様、その言葉が好きだ!」

「だったら、努力すれば神様がスキルをくれるはずだろ?」

「……そうか! なるほど! そのための訓練か!!」


 俺が首を縦に振る。

 

「何をすればいいんだ!?」


 その言葉を聞いて、隣にいたイーフィアがビクッと動いた。

 どうやら、【パリィ】の時にやった丸太を思い出したのだろう。


 流石に10000回はちょっとしたトラウマになっているらしい。


「それはな……あれだ」


 俺が指さした方向に、全員が顔を向けた。


「木……?」

「アルくん、木しかありませんけど……」

「そうだ、木に突撃してもらう」


「「「へ……?」」」


 最初から、コイツらに体力や武術は求めちゃいない。

 子どもの俺たちに出来ることなんて、限られているんだ。


「お前たちが最初に得るスキルは【突撃】だ」


 *

 

「ぬああああああっ!」


 カールが木へ突進する。

 かれこれ、一週間の月日が流れていた。


 周りの取り巻きはまだまだだが、一番最初にスキルを獲得したのはカールだった。


 淡い白い光がカールを包む。


「うおおお! 【突撃】をゲットした!」

 

 カールが雄叫びを挙げた。


「おめでとう、使ってみるか?」

「おうよ! 行くぜ……【突撃】!」


 カールが腰を屈め、木に向かって突進する。


 ドゴォォォン……と響いて、木が倒れる。

 まさに猪突猛進。


 カールにピッタリのスキルだった。


「おぉ! 木を倒したぞ!」


 取り巻きが圧倒されつつ、つぶやく。


「でも闘牛みたいだ……」

「いや、あれ闘牛でしょ……」


 そんな言葉を無視して、カールが俺の前に来た。


「アル! ありがとう……ありがとう! お前のお陰で初めてスキルを手にすることができた……!」


 俺は別に感謝されることはしていない。

 これでカールも戦力になるんだ。有難い。


 今度はカールがイーフィアに向かう。


「……イーフィア! ごめん! 俺様、お前のことをイジメてて、本当に悪かった!」


 イーフィアが目を丸くする。


「俺様の家、貧乏でよ。お金持ちで裕福な暮らしをしてたイーフィアが妬ましかったんだ!」

「……カールくん、良いですよ。気にしないでください」 

 

 俺はその光景を眺めながら、僅かに微笑む。

 あの威力なら、Eランクの魔物を【突撃】で倒せるだろう。


「そういえばアルくん。ずっと森に入って何か探してましたけど、何やってたんですか?」

「あぁ……次のスキルに必要な薬草を集めてたんだ」

「アルくんの新しいスキルですか!?」

「う、うん……」


 俺はここ一週間、ずっと薬草を集めていた。

 副産物も多くあり、なかなか良い収穫だった。


 薬草がいっぱいに入っている籠に、カールが顔を覗かせた。


「ただの草じゃねえか。全部同じにしか見えねえぞ?」


 そう言って一つ手に取る。


「そいつは筋肉草って言って、一時的に筋力を倍増してくれるんだ」


 イーフィアが楽しそうに俺の話を聞いて、質問する。


「これはなんですか!?」


 先端が丸まった草を俺に見せる。


「それは毒消し草だな」

「初めて見ました……!」


 楽し気なイーフィアに、俺は僅かに顔を暗くした。


(俺が、コイツらに魔物と戦わせるためにスキルを取らせたって知ったら。嫌われるかな……)


 イーフィアもそうだ。

 最初は可哀想だと思ってスキルを取らせたが、戦力になるって考えてしまった。


 嫌われたくない。その我儘で、イーフィアに話すことを躊躇っていた。

 俺は最低だ。


 ちゃんと話そう。


「……さて、俺はスキルを取りに行って来る」

「何処に行くんですか?」

「〈血塗られた大食漢(デブ・オーク)の討伐〉だ」


 俺もあれから体を鍛え、【踏み込み】は【踏み込み・中】まで強化していた。


 二つ目のスキル取得に必要な条件は満たしている。

 スキル【血染めの剣】を取りに行こう。

 

「わ、私も行きます!」


 アルの後ろを、トコトコとイーフィアが追いかけて行った。

 

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