短編・限界突破の外れスキル《バフ・マスター》で世界最強。パワハラ騎士団長に追放されたけど、君たちが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ?面子丸潰れと騒いでるけど5回全滅しただけだよね
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「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕は、開口一番、クビを宣言された。
バランはこの国最強の騎士団、ブラックナイツの頂点に立つ男だ。
「な、何故ですか……!? ボクは【バフ・マスター】のスキルで、必死に後方支援をしてきたつもりですが!?」
「【バフ・マスター】だと? くだらん! たかだか、他人のステータスを多少、引き上げるだけの力ではないか!?」
「最初は確かにそうでしたが……毎日、スキルを使い続けることで、今では騎士団3000人分のステータスを上げることができるようになったのですよ」
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
英雄の息子に相応しくないパッとしないスキルだと……
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「それがどうした? 団員たちからも苦情が出ておる。貴様は、戦場で戦いもせず、ただ突っ立ているだけだとな。
さらには国王陛下もご覧になった剣術大会において、最下位! 剣の稽古を怠けて、貴様、毎日、何をしておった?」
「何度もご説明していますが、【バフ・マスター】のスキルを3000人にかけ続けるためには、極度の集中力を必要とします。その間、僕は動けなくなってしまうんです!」
この国の北側には魔王領があり、そこから、ひんぱんに魔物の大群が侵入してきていた。
だから剣術大会の最中も、僕は騎士団にいつ出動命令がかかっても大丈夫なように、全員にバフをかけ続けた。
それが僕の役目であり、仲間を守るために必要なことだからだ。
剣術大会は団長に辞退を申し出たのだけど、むりやり出場させられた。
皮肉なことに、僕は【バフ・マスター】で強くなった仲間に、剣術大会でボコボコにされるハメになった。
「黙れ! 言い訳をするな! 俺は貴様のような軟弱者がヘドが出るほど嫌いだ! 数々の英雄を輩出してきた名門ベオルブ伯爵家も地に墜ちたものだな!?」
バランが激しく机を叩いた。
「跡取りが、このていたらくとは。前団長のシグルド殿は、子育てにおいては無能であったということか?」
父上をバカにされて、僕は怒りをこらえるのに必死だった。
父上は3年前、ブラックナイツを率いて魔物の大軍勢と戦って、亡くなった。
父と入れ代わりに入団した僕だったが、剣術も得意ではなく、レベルは未だに1。
落ちこぼれだと、みんなから嘲笑われた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数が増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。
これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「クックック! アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。
そんな嘘八百を並べ立ててまで、ブラックナイツに残りたいのか!?」
団長は大声で笑った。
確かに常軌を逸した効果だと思うが、これは紛れもない僕の8年間の努力の成果だ。
「詳細については、報告書をあげています。僕はこの力で、みんなを守れる立派な騎士になりたいと、精進してきたのですが……」
「剣を取って戦ってこそ騎士! 戦えぬ無能など不要だ! さっさと出いけ!
これは俺だけでなく、騎士団の総意である!」
僕は、もはや何を言っても無駄だと悟った。
団長の中で、すでに結論は決まっているのだ。必死にがんばってきたつもりだったが……
僕は誉れ高きブラックナイツのお荷物でしかなかったのだろう。
「……わかりました。団長、お世話になりました」
込み上げるモノを抑えながら、僕はその場を後にした。
◇
この時、騎士団長バランは思いもしていなかった。
アベルが去ったその直後、最強の名を轟かせていたブラックナイツが、連戦連敗を重ね、やがては崩壊するということに。
ブラックナイツの栄光は、アベルが支えていたということに。
◇
「はぁ……団長に、まるで評価されていなかったなんて」
家に向かってトボトボ歩く僕は、大きくため息を吐いた。
ここは王宮へと続く、大通りである。
「きゃああああっ!?」
その時、甲高い悲鳴が響いた。
聞き覚えのある女の子の声。
まさかとは思うが、僕の直感が正しければ、この声は……
大勢の人が、血相を変えて逃げ出してくる。
振り返れば、僕の視線の先には巨大なドラゴンがいた。
バカな……
ここは王宮の近くだ。こんな最強クラスの魔物がいるなど、絶対にあり得ない。
生存本能に逆らって、僕はドラゴンに向かって駆け出した。悲鳴を上げた女の子が気になったからだ。
救援に駆け出した先に、彼女はいた。
流れ星を束ねたかのような金髪をした美しい少女。この国の王女リディア・リィ・アーデルハイド殿下だ。
「リディア王女殿下……!」
尻もちをつく王女の周りでは、護衛の騎士たちが、震えながら剣を構えている。
「ア、アベル……!?」
リディアと目が合う。
彼女とは幼馴染であり、昔はよく一緒に城の庭園で、隠れんぼなどをして遊んだ。
子供のお遊びで、結婚の約束もしたものだ。
僕が外れスキル持ちの落ちこぼれになってからは、周囲の目もあって交流が途絶えてしまったのだが……
そのリディアに向かって、ドラゴンが灼熱のブレスを吐き出した。
「うぉおおおおおおっ!」
無我夢中だった。
それは、一瞬のひらめき。
今までブラックナイツにかけていた【バフ・マスター】のステータス上昇効果をすべて解除して、自分に集中させた。
―――――――
名 前:アベル・ベオルブ
レベル:1
体 力: 46 ⇒ 4600(UP!)
筋 力: 71 ⇒ 7100(UP!)
防御力: 53 ⇒ 5300(UP!)
魔 防: 50 ⇒ 5000(UP!)
魔 力: 60 ⇒ 6000(UP!)
敏 捷: 42 ⇒ 4200(UP!)
全ステータスが100倍になりました!
―――――――
ステータスアップを告げる無機質な声が、頭に鳴り響く。
全ステータス100倍だって?
これは王国最強の騎士であるバラン団長を遥かに上回る能力値だぞ。
ステータスはひとつでも4桁を超えれば、冒険者ならAランクに認定される。
僕は、そのままリディアの前に立って盾となった。
火炎が全身に浴びせられるが、覚悟していたような痛みはない。
驚いたことにノーダメージだった。
防御力が5000以上になったおかげだ。
「ア、アベル、なんて無茶を……!?」
リディアが絶叫する。
―――――――
スキル熟練度を獲得! スキルレベルがアップしました!
スキル:【バフ・マスター】Lv4(UP!)
Lv2ボーナス: 効果人数最大3000人
Lv3ボーナス: 全ステータス10倍アップ
Lv4ボーナス: スキル発動中の行動制限なし(NEW!)
Lv5ボーナス: ???
―――――――
「スキル発動中の行動制限なし!?」
今まで、【バフ・マスター】を使っている間は、歩く程度の行動しかできなくなっていた。この行動制限が、なくなったらしい。
僕はそのままドラゴンに突っ込み、力任せに剣を叩きつけた。
剣圧ですさまじい衝撃波が発生し、木々が弾け飛び、大地に亀裂が走る。
ドラゴンが、あっさり両断された。
「「「……はぇ?」」」
僕を含めた全員が、驚きに目を瞬いた。
◇
「全軍、鋒矢の陣形!」
騎乗したバランは、ゴブリンの軍勢を睨みすえながら、号令を発した。
彼によって鍛えあげられた最強の騎士団が、一糸乱れぬ動きで陣形を組む。
ブラックナイツの騎士たちは、バランが団長になった3年前から、メキメキと実力を上げた。
最近では、なんと全団員の全ステータスが約10倍に急上昇するという前例のない成長を遂げていた。
「すべては、この俺の課した厳しい訓練のたまものだ」
炎天下での重武装での10キロマラソン。
砂利の上で、他の団員を背中に乗せての拳立て伏せ。
さらには、気合いと根性を養うために7百メートル級の滝からの紐無しバンジージャンプ――死人が出なかったのが、不思議なくらいの過酷な訓練を指示してきた。
おかげで、ブラック職場、ブラック騎士団などという悪評も広がっているが……
くだらんやっかみだ。
勝利によって、そんな声はすべて封じてきた。
連戦連勝を重ねたブラックナイツの名声はうなぎ登り。このまま行けば、やがて自分とリディア姫との婚姻も有り得ると、バランは、ほくそ笑んだ。
バランが二十代後半になっても結婚をしなかったのは、リディア姫を手に入れたかったからだ。
そして、ゆくゆくは、この国の王に登りつめるという野望を抱いていた。
そのために、英雄の息子でありながら、使えない落ちこぼれであるアベルを切り捨てた。
「あのような軟弱者がいては、士気に関わるからな」
上機嫌で全軍突撃を命じようとした時、水をさしてきた愚か者がいた。
「……団長! お待ちください。アベル様のお姿が見せませんが?」
銀髪のツインテールを赤いリボンで結わえた美少女。副団長であるハーフエルフのティファだ。
この小娘は前団長シグルドの弟子だったこともあり、あの落ちこぼれを『様』をつけて呼んでいた。
「ふん! ブラックナイツの面汚しであったヤツは追放した」
「……な!? しょ、正気ですか? なぜ、私に相談もなく、そのような暴挙を!?」
「暴挙? 剣術大会で最下位の軟弱者が、我が騎士団の末席に名を連ねている方が、おかしかろう?」
「それは違います! あのお方は、【バフ・マスター】のスキルを鍛え上げ、ついには、全団員のステータスを10倍アップさせるまでに至ったのですよ!? ブラックナイツが最強なのは、アベル様のお力があったればこそです!」
「……貴様は何を言っておるのだ!?
我が騎士団が精鋭なのは。全団員の力が急上昇したのは、この俺が厳しい訓練を課してきたからだ!」
「あのような身体を痛めつけるだけの訓練には、何の意味もありません!
すべてはアベル様のおかげだと、報告書で何度も申し上げてきたハズです!」
「貴様!?」
ティファのあまりの暴言に、バランは怒鳴り声を上げた。
もし、これから戦でなければ、このバカな小娘の首をへし折っているところだ。
そもそも、魔法になど頼るこの小娘とは、最初から反りが合わなかったのだ。
筋力を極限まで高め、剣で敵を真っ向から粉砕してこそ騎士だ。
それを前団長シグルドは、これからの戦は魔法が勝敗を決するなどと言って、ティファを副団長に据えた。
「ハーフエルフの小娘風情が、よくもこの俺に盾付きおったな! この戦に勝利したら、貴様も追放だ!」
「……はぁ。まさか、ここまで頭が固い方だとは思いませんでした。わかりました。このような騎士団に未練はありまん。
私はアベル様の元に行かせていただきす」
「勝手にするが良い。全軍、突撃だ!」
バランが馬の腹を蹴って駆け出す。その後に大勢の騎士たちが続いた。
圧倒的な速度とパワーでもって、敵を蹴散らす。いつもの必勝法だった。
「団長……! 敵が崖の上に!」
ブラックナイツを見下ろす崖の上に、ダークエルフの一団が現れた。
頭上から火や雷の魔法が、豪雨のように撃ち込まれる。
攻撃を受けた騎士たちが落馬し、後続の仲間に踏み潰された。
悲鳴が飛び交う。
「なに!? バカな!」
いつもの団員たちなら、この程度の魔法攻撃など、そよ風のごとく弾き返して突進していた。
「やはり! アベル様のバフがなくなり、魔法防御力が激減しているんです!」
まさかと思い、バランは自分のステータスを確認する。
―――――――
名 前:バラン・オースティン
レベル:48
体 力: 4760 ⇒ 476(DOWN!)
筋 力: 6020 ⇒ 602(DOWN!)
防御力: 5440 ⇒ 544(DOWN!)
魔 防: 1510 ⇒ 151(DOWN!)
魔 力: 530 ⇒ 53 (DOWN!)
敏 捷: 2270 ⇒ 227(DOWN!)
―――――――
「あ、ありえん……!」
あまりのことに、バランはめまいを覚えた。
4桁に達していたバランの全ステータスが軒並み10分の1にまで低下していた。
まさかティファの言っていることは、真実だとでも言うのか?
このブラックナイツを支えていたのは、あの落ちこぼれのアベルだとでも?
俺が団員たちに課した訓練は、無意味だったとでも……?
「ええい! とにかく突撃だ! 目の前の敵を粉砕せよ!」
怒号を発するバランは、次の瞬間、目を疑った。
貧弱な装備しか持たないゴブリンどもの中に、突如、巨大なドラゴンが出現したのだ。
「まさか、召喚魔法!? 敵に尋常ではないレベルの召喚士がいます!」
ティファが警告を発する。
ドラゴンが身をすくませるような咆哮を放った。
軍馬が、恐怖にみな竿立ちになり、突撃の勢いが潰される。
「退け! 退け! ドラゴンを倒すための準備はこちらにはない! このままでは、全滅よ!」
「ティファ! 貴様、何を勝手な命令を!」
「アベル様を欠いた状態で、あんな化け物に勝つなど不可能です!」
最強の騎士団に敗北など許されない。
例え、ドラゴンが相手であろうともだ。
ゴッオオオオ!
超高熱のドラゴンブレスが、ブラックナイツに浴びせられた。
バランは馬ごと弾き飛ばされ、地面の上を転げ回った。
「がぁあああ!?」
ミスリル製の鎧のおかげで、命は助かったが、激痛に意識が飛びそうになる。
栄光ある騎士団の3分の1近くが、今の一撃で消し炭に変わった。
「退却! 退却よ! 団長こちらへ!」
魔法で、辛くも身を守ったティファが命令を発する。
バランはティファに背負われ、歯ぎしりしながら、戦場を後にする羽目になった。
大敗北だ。
逃げ帰ったバランは、翌日、衝撃のニュースを知ることになる。
なんとアベルがリディア王女をドラゴンから救い、王女が新設した近衛騎士団の団長に抜擢されたというのだ。
さらにブラックナイツの敗北の噂は、瞬く間に広がった。
無理な突撃を命じ、多大な死傷者を出したバランの悪名は国中に流れた。
◇
「アベル、王家に伝わる神剣グラムを授けるわ。この剣で、私を守ってね?」
リディア王女の私室に通された僕は、彼女から剣を渡された。
「姫、お待ちを。これは剣術大会の優勝者のバラン団長に授与される剣では……?」
「アベルは竜殺しの英雄なんだから、バランなんかより、この剣を持つのに相応しいの!
それから、ふたりっきりの時は、敬語は無しにしてよね」
ぷうっと、頬を膨らませてリディアが言う。
まるで子供の頃に戻ったようだ。
「……嫌なの?」
「わかった、わかった。敬語はなしね」
「わかったのなら良し」
リディアは昔から変わっていない。
僕が勝手に、彼女と付き合う資格がないと、壁を作っていただけのようだ。
リディアから渡された剣を鞘から抜く。
鏡のように磨き込まれた刀身には一点の曇りもなく、魔性の美しさを宿していた。
これは、かつて王国最強の騎士だった父上が使っていた剣だ。
これを手に持つ日が来るとは、夢にも思っていなかった。
「実は今回のあのドラゴンの出現は、敵国の刺客の仕業であることが、わかっているの」
リディアが声をひそめて告げる。極秘にしたい話のようだ。
彼女から手招きされて、耳を寄せる。
「あの場に、魔力を増幅させるクリスタルが落ちていたわ。クリスタルの力を使ってドラゴンを召喚、使役したようだけど……
そのクリスタルには、魔法王国フォルガナの紋章が刻まれていたの」
「フォルガナの刺客が、リディアを狙ったてこと?」
「あの国との国境付近で、ミスリル鉱山が見つかって……今、その所有権で揉めているのよ。
刺客を放って、こちらを挑発し、戦争を起こすのが狙いだってお父様は考えているわ」
フォルガナは魔法の研究と教育に力を入れて、最近、勢力を伸ばしている隣国だ。
「……王女が暗殺などされたら、戦争にならざるを得ないね」
「さすがアベルね。そう。あいつらが、あからさまな証拠を残しているのは、そのためよ」
リディアが腕組みをする。気丈に振る舞っているが、命を狙われて不安を感じているのがわかった。
「お父様は、フォルガナと戦えば、我がアーデルハイド王国に勝ち目はないと、おっしゃっているわ。
最新の魔法技術を持つあの国と、未だに騎士による突撃戦法に頼っている我が国とでは、軍事力に大きな開きがあると……」
「それは、わかる……」
ブラックナイツに魔法使いの部隊はおらず、物理攻撃に特化した集団だった。
『剣にてすべてを粉砕する!』が、バラン団長が信仰する騎士の正しい在り方なのだから仕方がない。
そして、これがアーデルハイド王国の軍部全体に染み付いた伝統だった。
それが、だんだん通用しなくなってきているのは感じていた。
「だから、こちらも魔法戦闘に対応できる魔法騎士団を新設するつもりなの。私の近衛という名目でね。
アベルには、その団長になってもらいたいの。ねっ? いいでしょ?」
「……僕が騎士団長に?」
一兵卒からの大抜擢に、僕は声を失った。
「もう誰にもアベルを落ちこぼれなんて言わせないわ。私を守ってくれた英雄なんだもん!」
リディアが感極まったように僕の手を握る。心臓がドキッと跳ねた。
「名前は王女近衛騎士団ルーンナイツよ!」
これが、やがて伝説となる史上最強の騎士団が誕生した瞬間になるとは、この時、僕は思いもしていなかった。
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