表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶望から始まる異世界転生  作者: 鎖
第1章
5/19

エルダードラゴン


エルダー山脈には飛竜が住む。


飛竜と一口にいってもその種類は多種多様らしい。ワイバーンからドラゴンまで生息しているという、まさに飛竜種の楽園なわけだが、他種と交わる事のない飛竜がなぜこの山脈に集まったのか? 答えは簡単でここが山脈だからだ。もともと別々の山に住んでた飛竜達だが、長い年月をかけて山自体が合わさって行った。そう。住みか自体が連なって自然とひとつになっていったらしい。

それが大地の精霊の仕業だったのか、地震などの自然現象が起こしたものなのかはわからない。


「ヤマト様。少し待って下さい」


レナの顔色が悪い。当たり前だ。昨日からずっと歩きっぱなしで疲労の色が見える。けれど俺らに休んでいる暇はない。少なくとも、空を飛び交うワイバーン達から身を隠せる場所を見つけないといけない。


ちょうど岩が重なる窪みを見つけた。


「レナ。ここで少し休もうか」

「はい・・・って、えええ!?」

「レナ!?」


岩が重なって見えなかったが、その窪みには奥に続く穴があってレナはそこに滑るように落ちていった。俺は慌てて後を追った。


レナは潰れたカエルのような格好で倒れていた。


「大丈夫か?」

「だ、大丈夫じゃないです」


涙目のレナ。たまらん。


周りを見渡すと広い洞窟のような空間。山の構造を考えればこんな場所は不自然だ。ここがエルダー山脈でもなければ魔物でも住んでいそうなものだ。


突然、地面がぐらりと揺れた。


山のような巨大な竜だ。こんな地下にいたなんて。


「人間よ。我らの縄張りから出ていくが良い」


そうは言われても、ここから出れば待っているのは死だ。簡単に、はい。わかりました。というわけにはいかない。けれど今の状況もまた絶望的だ。


「出て行くならば争うつもりはない。しかし縄張りを侵す者に容赦するつもりもない。ここは初代オルディア皇女から与えられた我らの土地だ」

「初代オルディア皇女…!?」


かつて人間が魔族に虐げられていた時代。初代オルディア皇女は異世界より強力な勇者を召喚し、大陸を統一し王国を打ち建てた。その際、エルダードラゴンは人間と共に戦い、国から公爵の地位とこの土地を与えられた。


「故に我らの土地は不可侵だ。出てゆけ」

「なるほど。しかし、お前らの土地を約束する者はもういないんだぜ。エルダードラゴン」

「なに?」

「オルディア王国は滅んだ!見ろ!麓のシノンの森を!」

「おお…焼けてゆく…!我らの大地が…!」

「こんなところに引き篭っているから、時勢においていかれるんだ。目を覚ませ!今にも魔族の軍勢が押し寄せて来るぞ!」




ふっ……。

その原因は俺たちだ。


しかし!もうヤケクソでいい!エルダードラゴンを利用してこの絶望的な状況を覆すほか手はない!ドラゴンがここに住まう理由はこの際、好都合だ。上手くいってくれ。


「しかし、貴様の言う事は信用できん。オルディア王国が滅んだなど有り得ない」

「バカやろう! 目の前にいるレナがオルディア皇女の末裔だ!」


俺はレナの首からぶら下がっているオルディア王家の紋章の入った金のアミュレットを指差す。


「そ、それはオルディア王家の証・・・!」

「さぁ決めてくれ。迫る魔族に住処を追われ、居場所のないこの大陸で死んだように生きるのか。それとも縄張りを荒らす外敵と勇敢に戦い、飛竜種としての威厳を!尊厳を貫いてこの大地に自分達の領土と誇りを掲げるのか!どっちだ!」



エルダー山脈にけたましい咆哮が響いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ