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絶望から始まる異世界転生  作者: 鎖
第1章
17/19

ランドールという街


貿易港ランドール。


かつてはオルディア王国の支配下にあった街だ。500年前の解放戦でランドールの英雄シリウスは軍を率いてオルディア軍を大いに破り、和平によってこの地の自治権を獲得した。しかしシリウスはランドールを国とせず中立の立場を貫き、人間も魔族も関係ない貿易港として発展させた。はたして英雄シリウスが求めたものは金か。人間と魔族の共存か。それが本当は何だったのか今は分からない。


「というのがランドールの歴史です」


レナは歩きながら少し表情を曇らせて言った。


なるほど。ランドールという街の背景は分かった。しかし魔族の軍隊が入れない街というだけで朗報なんじゃないかと思える。とにかく落ち着ける場所が今の俺達には必要だった。不可侵とも言える貿易港ランドールこそこの大陸のオアシスだ。今も魔族に追われる身だし、とにかく今は進むしかない。



・・・。



港街。


と呼ぶにはあまりに堅牢で、まるで要塞のようだ。


聳え立つ壁はまさに城壁。幾重にも構えられた門は何者も侵入を許さないという決意すら感じる。俺達ははるか高い城壁を見上げると、見張りのような格好をした男が身を乗り出した。


「そこで止まれ。売りか?買いか?」


何の用だ?とは聞かない。中立がゆえに戦火から免れた街は軍事力ではなく金こそが力であり、ランドールの民にとって外からの来訪者は、金を落とす者か。金になる物を落とす者。このどちらかでしかなかった。これがランドールという街だ。


「売りでございます」


レナはフードを被ったまま答えた。


では、品物を見せてみろ。という男の声にレナは胸元にある金のアミュレットを取り出した。オルディア王家の紋章の入った金のアミュレット。もちろん遠目からでは紋章までは見えない。


「それは・・・金か!いいぞ!通れ!」


この時代の金の価値は分からないけれど、男の反応を見るに決して安い物ではないのだろうと思った。男の声と同時に鈍い音を立てて門が開き、俺達はそれを通る。その時に気がついたのだが、扉に何か模様のようなものが描かれている。顔を寄せてそっと扉をなぞってみる。大きな魚に翼の生えたような生き物が扉に彫られているのである。


解放戦で英雄シリウスを勝利へと導いた大河の魔物レビヤタン・・・。





_______





そして大きな門をくぐるとそこには活気あふれる港街があった。


「わたくし、ランドールなんて初めて来ましたわっ!」

「あたしもだぜ!」


ずらりと並ぶ露店にヴィネリアもフラウスもテンションが上がってしまっている。物珍しそうにところ狭しと並んだ商品を見ては興味津々のようだ。たしかに大陸では戦争してたというのに、ここはさながら観光地みたいに人で溢れかえっていて賑わいを感じる。俺達は人ゴミは掻き分けるように進んだ。


「あまり離れるなよ」

「ああ・・・商人と護衛・・って設定だっけ?」


ヴィネリアが半笑いで言う。そう。そういう設定で入ったのは間違いないのだが、護衛という意味では設定だけでは済まされない。この街は軍隊こそ入れないものの、人に紛れて暗殺するとか。毒殺するとか。その手の事は普通に可能だ。


「これウマそうだなぁ・・・なぁマスターこれ買ってくれよ」


そう言ってヴィネリアが手にしたのは肩幅くらいはありそうな大きな魚で、額に角が生えている。おそらくこの大河の漁で捕って来たのだろうが、当然俺は角の生えた魚は見た事がない・・・。


(これって・・・食えるの・・・?)



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