私が悪役?いいでしょう、乗ってあげましょう
思えば後悔は何一つもなかった。
私と彼の関係なんて親同士が勝手に決めた婚約者と言うもの。
私達はお互いに対して恋愛感情なんて存在しなかった。
だからこそ、自身の目の前にいる彼が本当に心から愛する者と結ばれるが為に私を悪者にして親同士が勝手に決めた婚約関係を破棄するという選択をしようとしていることを私は咎めようは思わない。
「……ジュリア・ヴィネット。今までお前はリアナに沢山の嫌がらせをしていたらしいな」
さてさて、私はここでこうとでも言えばいいのかしら。
「……あら、バレてしまいましたの?」
途端に私の発言を聞くなり目を見開きこちらを見るヴェナード。
私はこちらを見て固まってしまった彼に呆れながら、何の言葉も発しない彼の代わりに言葉を続ける。
「えぇ、そうよ。だって私達は婚約者でしょ?それなのにそんな何処の馬の骨かも分からないような礼儀も知らない平民の小娘が私達の関係を知っているにも関わらず貴方に近付いたのよ?そんなの許せる訳が無いじゃない」
と、まあ別にそんなこと一切思ってないんですけどね。
私はクスリと意地の悪い笑みを浮かべると、ヴェナード同様にこちらを見て固まっているリアナ嬢に目を向け、周りにバレないように彼女に対して微笑む。
ここで私がこの場を退場することによって彼らが幸せになるならそれでいい。
私はあまり他の貴族の令嬢達とは違って自分の地位にもお金にもあまり興味が無い。
どちらかと言えば、私は平民の様な生活を好む少し変わった令嬢なのだ。
だから、今ここで私が悪役となればもしかしたら私は貴族という鎖から解き放たれるかも知れない。
これは云わば私が貴族でなくなれるか、これからも悪役という名を背負って生きていくかの一世一代の賭けだ。
「それで、私が彼女に嫌がらせをしていたということを知った貴方は一体どうするのですか?……ヴェナード・シグバール王子殿下」
私はハッとした顔を浮かべた彼に対して口角を上げながらニヤリと微笑んだ。




