渇望/その土の下には
※どこか闇深い詩です。ご注意くださいませ。
「渇望」
海水の塩分濃度は、五パーセント以上
人体の塩分濃度は、一パーセント未満
飲めば飲むほどに水を失い、喉が渇く
身の丈に合わない目標も、同じことだ
望めば望むほどに我を失い、飢え続く
己を知らねば、永遠に満たされぬまま
そんなことを、お坊さんが言ったけど
だれも、聞いてやしなかったんだとさ
*
「その土の下には」
カレの噂を、知ってるかい
昼は、街で評判のいい庭師
カレが、手入れをする庭は
不思議と、植物が良く育つ
カレの噂を、知ってるかい
夜は、女を狙う快楽殺人鬼
カレが、解体した女たちは
有機物が、たんまりなのさ
豪邸の主人は、知らないよ
人当たりが良く、働きもの
そんなカレを、疑うものか
ただ、草花を愛でるだけさ
依頼した客も、知らないよ
消えた邪魔者が、どうだか
そんなことは、気にしない
ただ、自分が可愛いだけさ
その土の下には、秘密がいっぱい
その土の下には、屍肉がいっぱい
カレの手は、黒く汚れてる
カレは腹を、肥やしている