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友、そして別れ。


 深い森の中、六人の男女が辺りを警戒しながら進んでいた。

 

 これは実践訓練ということで、5~6人の班を7組作り、各自動いているのだ。

 

 (しかし、いいタイミングだな。上手く別れればいいが……。)

 

 響は歩きながら今日の段取りを考えていた。

 そう、すでにお分かりの方も多いかもしれないが今日この機会にクラスから離れようとしているのだ。本来なら今日もチャンスがあれば程度だったが、昨日の会話を聞いたために確実に別れる方向に変更したのである。それはなるべく早く出ることが吉と判断したためもそうだが、あまりあの姫様に関わりたくなかったという気持ちも小さくない。

 

 (さて……どうやって消えようかねぇ。)

 

 「どうした響。そんな深刻そうな顔をして?」

 

 「トイレか?やめろよな。野郎の野糞なんざ見たくもねーよ。」

 

 そう話しかけたのは、響ととりわけ仲のいい工藤秀助と藍染慎吾だった。

 秀助の方はザ・秀才という見た目で、実際成績もクラスでトップだ。しかし、その頭脳をよく無駄なことにばかり費やしていいるのをよく見る。ちなみに眼鏡は曜日で変えているらしい。

 一方慎吾はほどよく鍛えた体、短く切り揃えられた髪、気さくな雰囲気のイケメン。が、しかし彼女いない歴=年齢の可愛そうな奴だ。理由はすぐにわかるだろう。

 

 「ちげーよ。つうか見なきゃいいだろ。何で見る前提なんだよ。」

 

 「わかってねぇなぁ。野糞ってのはその行為に意味があるんだよ。例えそれがお前だろうが40過ぎのオッサンだろうが、見なきゃいけねぇんだよ。」

 

 「わかりたくもないな、そんなもの。」

 

 この通り、性癖がかなりアブノーマルなのである。この他にも色々なものがあるが、本人の尊厳のために言わないでおこう。

 

 「響と一緒になれたのはいいけど、何で変態がいるのよ……。」

 

 そう、慎吾の変態発言にたいし、不快感MAXで毒を吐く少女。その髪をセミロングにし、三編み部分を後ろでくくっている。

 名は卯月 恵。響とは中学からの同級生であり、幽香かそかとも仲が良い。

 

 「聞こえってかんな!?卯月‼てめぇ顔はいいからって調子に乗りやがって‼この性悪女が‼」

 

 「はぁ!?性悪とかやめてくれない?事実じゃない変態なのは。せめてデリカシーの1つくらいもったらどうなの?」

 

 「なにおう!?俺は別になにも悪く……」

 

 「「いや、今のは普通に慎吾が悪い。」」

 

 「嘘だろ!?」

 

 それ見たことかと、満面のどや顔で見下す恵に悔しそうに睨み付ける慎吾。

 

 そんなみんなを見て、残りの二人が話し合う。


 「ねぇ、幽香かそかちゃん。やっぱりみんなキャラが濃過ぎないかなぁ。私埋もれそうなんだけど……。」

 

 「あ、あはは……。」

 

 一人は勿論篠山 幽香かそか。友人の言葉にどう対応していいか解らず、苦笑いを浮かべている。

 

 そして、幽香に口をこぼしているのが、白石 ほのか。一言で言えば地味。別に不細工でも何でもないし、普通に可愛い方なのだが、周りの個性が強くて埋もれてしまうかわいそうなお友達だ。

 

 「別に俺達だけじゃなくて、クラス全員だろう?」

 

 「まぁ、確かに濃いよなぁ。うちのクラス。キャラがないのがキャラっていうよくわからない奴までいるからな。別に白石が気にする必要はないさ。」

 

 「そうかなぁ……?」

 

 どうにも不意に落ちないという趣で首をかしげるほのか。

 

 このように各班に別れてからずっと和気藹々騒しくがやがやとしながら進んでいく響達。

 勿論ここは王都の外なのでモンスターが襲ってくるのだが、勇者パーティーには対した相手でもなく、易々となぎ倒していく。

 

 「しっかし、こうも易々と進むもんかねぇ。あの団子虫みたいなのはビックリしたけど。」

 

 「まぁ、確かに全然攻撃が通らなかったから焦ったわね。結局魔法でいちころだったから呆気なかったけど。」

 

 「レベルも順調に上がってきている。もう少し奥までいってみるのもいいかもしれないな。」

 

 「どう?響君。何か危ないものとかあった?」

 

 「いや、九割方大丈夫と見た。。」

 

 ここいらへんのモンスターは総じてレベルが低く、厄介な能力やスキルも持っていないので、よほどのイレギュラーがない限り、ステータスの上がった幽香達に危険はないだろう。

 

 5人のステータスとしてはこうだ。

 

 工藤秀助

 男 17歳

 Lv,9

 能力《複製》

 HP512/601

 MP378/507

 攻撃 177(+20)

 防御 121

 魔攻 181(+15)

 魔防 134

 俊敏 101

 《スキル》

 炎魔法Lv,1、水魔法Lv,1土魔法Lv,2、風魔法Lv,1、回復魔法Lv,1、強化魔法Lv,2、ナイフLv,2、投擲Lv,1

 《称号》

 増やすもの、キテレツな発想、秀才

 《装備》

 冒険服、マジックナイフ(攻撃+20、魔攻+15)

 

 藍染慎吾

 男 16歳

 Lv,10

 能力《二回攻撃》

 HP460/570

 MP181/312

 攻撃 211(+35)

 防御 167

 魔攻 98

 魔防 101

 俊敏 108

 《スキル》

 炎魔法Lv,1、水魔法Lv,1土魔法Lv,1、風魔法Lv,1、回復魔法Lv,1、強化魔法Lv,2、剣技Lv,2、スラッシュLv,1

 《称号》

 変態、ガルー○、残念なイケメン

 《装備》

 冒険服、ロングソード(攻撃+35)

 

 卯月恵

 女 17歳

 Lv,9

 能力《自己再生》

 HP487/514

 MP320/463

 攻撃 194(+15)

 防御 106

 魔攻 123

 魔防 103

 俊敏 161(+20)

 《スキル》

 炎魔法Lv,2、水魔法Lv,2、土魔法Lv,1、風魔法Lv,1、回復魔法Lv,1、強化魔法Lv,2、刀技Lv,2、一文字切Lv,1

 《称号》

 性悪、月の兎、過去の誓い、

 《装備》

 冒険服、小太刀(攻撃+15俊敏+20)

 

 白石ほのか

 女 16歳

 Lv,7

 能力《移行》

 HP300/300

 MP410/870(+40)

 攻撃 75

 防御 145

 魔攻 134(+20)

 魔防 238

 俊敏 102

 《スキル》

 炎魔法Lv,1、水魔法Lv,1土魔法Lv,1、風魔法Lv,1、回復魔法Lv,3、強化魔法Lv,1、結界Lv,1

 《称号》

 地味子、癒すもの、守るもの

 《装備》

 冒険服 、ロッド(魔攻+20、MP+40)

 

 篠山幽香

 女 17歳

 Lv,10

 能力《魔法作成》

 HP210/210

 MP1235/1670 (+40)

 攻撃 32

 防御 34

 魔攻 287(+20)

 魔防 213

 俊敏 55

 《スキル》

 炎魔法Lv,2、水魔法Lv,2、土魔法Lv,2、風魔法Lv,2、光魔法Lv,2、闇魔法Lv,2、回復魔法Lv,2、強化魔法Lv,2、魔術の理Lv,2

 《称号》

 魔の探求者、引っ込み思案、魔法使い

 《装備》

 冒険服、ロッド(魔攻+20、MP+40)

 

 まずは能力の説明からしよう。

 秀助の《複製》は 、名前の通り色々なものを増やす能力である。

 例えば魔法なんかも複製できる。しかも魔力は最初に使った分だけしか使わないのである。

 秀助は相性のいいナイフをメイン武器として使っている。

 

 次に慎吾、恵の能力だが、読んで時の通りなので割愛しよう。

 

 最後にほのかの《移行》は、傷や状態異常を何か他のものに移し変えるという、回復否医療全般において他に類を見せないほどのチート能力だ。これのお陰で、皆安心してレベル上げができる。

 

 このパーティーだけみても、何だこのチート集団はと思うかもしれないが、コレと同等レベルがあと6つあるというのだからたまったもんじゃない。一斉に責められる魔王が可愛そうに思えて涙が出てきそうなほどだ。

 

 さて、長々と説明ばかりしてしまったが話を響達に戻そう。一行は10分程の休憩を挟み、またレベル上げと探索を進めるために足を再び動かし始める。

 

 (アナザー、ここいらで俺以外じゃあ絶対に倒せないような敵を探してくれ。)

 

 (了解しました。)

 

 そして、自分の計画の為に、この男も動き出したのであった。

 

 

        ◇

 

 「いいよなぁ、洞窟。探索っていったらここだろ。」

 

 「まぁ、分からんでもないな。それに宝のひとつでもあれば儲けものだ。」

 

 一行は今、響の発見した洞窟のなかを進んでいた。本来は暗闇で覆われているのだが、幽香が光魔法のライトで道を照らし不備なく順調に進んでいる。

 

 「にしても何もいないわね。入ってから結構経つけどモンスターの一匹も出てこないのはおかしくない?」

 

 「確かにな……。少し用心して進んだ方がいいかもだ。」

 

 そう、全て把握している響が白々しく語りながら丁度角を曲がる。するとその先の景色は今までとは一転していた。

 広く広がった天井に、それを支えるいくつもの岩柱。先程までの道も、けして狭くはなかったのだが、この大空間と比較してしまうとやはり狭かったと思えてしまうほど。

 

 しかし、そこはだだっ広く広がってるのみで、入ってきたところと同じような続く道などなく、何かあると言えば、ただ巨大な岩山が見えるだけだった。

 

 「まじか、行き止まりじゃねぇか。ホントに何もなかったな。」

 

 慎吾がそういいながら岩山に近づく。

 

 「響、一応道がないか確認してくれ。」

 

 「あぁ、わかった。」

 

 秀助に言われた通りにわかりきった周りを確認する響。すると、どうやらまだ道はあることに気付くふりをする。

 

 「なるへそ、この岩山の向こう側に道があるみたいだ。先に進むならこいつをこえなきゃいかんな。」

 

 「この山を……。他に道はないの?霧村君?」

 

 岩山を見上げ、怪訝な表情で響に他の方法を尋ねるほのか。まぁ、わざわざこんなところまできて登山というのも酷な話だ。特に女子にはきつかろう。

 

 「無理だな、迂回する道もない。というか登山するにしてもこの大きさなら問題ないだろ。10分もかからんぞ?」

 

 「そうだけどさぁ……。」

 

 そういってほのかは口を尖らす。見れば他の女子二人もあまり乗り気ではないようだ。

 

 そんななか新たな提案をしたのは岩山をぺちぺちと叩きながら響達に顔を向けた慎吾だった。

 

 「ならこれぶっ壊しちまおうぜ。ただの岩なんだし、俺の攻撃と篠山さんの魔法なら、通れるくらいの道程度すぐ作れるだろ。」

 

 「いや、やめた方が……」

 

 「大丈夫だって、『パワーアップ』。」

 

 響の忠告も聞かず、自身の体に強化魔法を使用する慎吾。

 こうして見てみると、響の呼び方の方が時間がかかると思うが、しかし、魔法というのは初期魔法こそ何もないが、上位になるに連れて詠唱というものがつき、かつ長くなる。さらに何~何というように一気に魔法を使えるのも強みのひとつだ。

 

 脱線した話を戻し、自身に強化をかけた慎吾が岩山に向かって剣を構えるところ。

 

 そしてーーーー

 

 「スラッシュ‼」

 

 渾身の一撃を加えた。

 その一撃はたしかな威力があり、当たった部分は砂煙をあげている。がしかし、それが晴れそこにあったのは先程と何ら代わりのない光景だった。

 

 「マジかよ……、無傷じゃねぇか。」

 

 その予想していたものとは違う光景に驚愕の声をあげる慎吾。

 

 と、そのときだった。

 

 「っぐぁ!!」

 

 慎吾の姿が消えた。否、横から出てきた巨大な何かに吹き飛ばされたのである。うめき声がする方を見ると砕けた岩石とぼろぼろの慎吾が倒れているのが確認できた。

 

 ゆっくりと岩山が動き出す。

 

 慎吾を吹き飛ばしたそれーーーー巨大な尾の先端まで固い鱗に覆われ、畳まれた翼を羽ばたかせている。

 全長20以上はある巨体を短い足で大地を踏みしめてささえ、長く、大きな首を曲げ、その顋を向きながら響達をにらむそれ。

 竜種ーーーー下位の地竜、アースドラゴンである。

 下位ではあるが、亜竜種のワイバーンとは比べ物にならない。

 ワイバーンごときであれば、勇者パーティーの中でもトップである輝のパーティーであれば討伐できるであろうが、こいつはたとえクラス全員が束になってもかなわないような相手。

 なにせこいつを討伐するには王国に騎士団総動員でとりかからなければならないのだ。しかも、それでもなお、多大な被害を出した上での討伐である。 それが、最強種たるドラゴン。

 

 そんな存在が目の前にいる。

 

 この絶望的な状況、意外にも最初に動いたのはほのかだった。傷ついた慎吾をどうにか手当てしようとしたのだ。

 

 しかしさすがは竜種。他のモンスターと違い頭脳も良いらしく、ヒーラーであるほのかを最初に狙い、その顋で襲いかかった。

 

 間一髪、恵が助けに入り、その暴力的な一撃から逃れる。ついでに慎吾も回収済み。

 

 「ッ!!逃げるぞ‼慎吾の一撃ですらあれだ。俺達に勝ち目はない。生きて帰ることだけを考えろ‼」

 

 ハッとして、我に帰った秀助が本能に従いそう叫ぶ。

 

 その言葉を聞き、皆一斉に元の通路へと走り出した。

 しかしそう簡単に危機を脱することができるはずもなく、非情にもアースドラゴンが後ろから地響きをならしながら迫ってくる。

 

 このままの勢いだと壁を壊して追いかけてきたとしてもなんらおかしくない。そうなれば洞窟は崩れ落ち、下手をすれば生き埋め。かろうじて生きて出れたとしてもまだこの地竜が追いかけてくるだろう。

 つまり何かしらの策を打たなければ生きて帰れる道はないのだ。

 

 とりあえずなんとか皆通路まではたどり着き、残るは響だけとなった。

 

 しかし、

 

 「ここまで連れてきちまったのは俺だからなぁ……」

 

 「何をいってるの?響……」

 

 「そうだよ響君!早くしないとドラゴンが来ちゃ……」

 

 「ボム」

 

 幽香の声を遮るように、響が唱える。

 炎魔法Lv,2で覚える爆発魔法だ。それを響はあろうことか通路の上へ向かって放ったのである。

 当然、天井は崩れ、瓦礫が落ちてくる。

 

 落ちる瓦礫によって狭まる視界の中、やけに清々しい表情で響は弁をとる。

 

 「時間を稼ぐ。早く逃げろ。」

 

 その言葉に顔を青く染める幽香と恵。

 瞬間、彼女らの頭の中に一つの結論が弾き出される。彼は死ぬ気なのだと、自分達のために犠牲になるのだと、口外に伝わるその事実が、受け入れがたい。

 

 「響君‼」

 

 「響‼」

 

 その声を強く叫ぶも、

 

 

 

 

 道は非常に閉じていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 すべてはそう(ほぼ)彼の計画通りに。





皆さんのお陰で週間ユニーク数が百を越えました‼ありがとうございます!!

ぜひよろしければ評価、ブックマークや感想の方をよろしくお願いします。


※響のステータスに剣技、刀技を入れ忘れていたので記入しなおしました。

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