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能力は隠すもの。

私立興英高校の2年B組の面々、41人がいたのは、いつもの見慣れた教室ではなく、何か欧米風の大きな建物ーーーーまるでお城の中庭のようなところだった。

 辺りには甲冑や豪華権欄な鎧を纏った男達がおり、目の前には3人ーーーーローブを羽織った男、中世の王様や姫様が着ているような衣装に身を包んだ初老の男性と自分たちと同じぐらいの歳の美少女がたち、こちらに目を向けている。

 先程まで授業をしていたはずなのにこれは一体どういうことだ?なんだ此はと、皆目をぱちくりさせていた。ちなみにその担当教師は気絶している。

 そんな中、彼、霧村響はいち早く我に返り、冷静に分析した。

 (成る程……異世界召喚……しかもクラス転移か……。)

 先ずは周囲を確認する。どうやらあの教室にあったものごと転移したらしく、机や鞄何かはそのまんまだ。

 (恐らくあの魔法使い風のローブをきた男が俺たちを直接呼び出したヤツ。

 その隣にいるのが命令した王と姫様ってとこか……。)

 その時、ドレス姿の美少女ーーーー響が姫だと推測した女性がみんなに声をかけた。


 「皆さん、落ち着いてください。只今事情をせつめいいたします。」


 簡単に説明するとこうだ。

 曰く、ここは魔法や剣の蔓延るファンタジー世界。

 その中の国の一つ、ハルアキア王国の王城の中庭。そして自分は第一王女のシスターナ、隣にいるのが父で国王のランベルト。ローブを羽織った優男が、第一宮廷魔導師のエドワード。

 曰く、魔族という極悪種族を率いている魔王が復活し、世界は危機にさらされている。

 曰く、民を守るため、神祈魔法で、勇者である彼らを呼び出したのだそうだ。


 ここまで聞いて生徒達の反応は十人十色だった。異世界と聞いて歓喜に震えるもの、これからどうなるのかと不安に顔を曇らせるもの……。

 ここで、顔もよく、正義感の高さやその行動力、カリスマ性からクラスのリーダー役である二ノ宮輝が声を上げた。


 「それで、俺達は元の世界に帰れるんですか?」


 もっともな意見だ。これは皆が一番知りたかったことでもあるだろう。


 が、しかしこの男は違った。


 (アホか。帰れる分けないだろうが。お前はこの状況下で帰れる物語を読んだことがあるのかよ……。)


 「残念ながら今すぐと言うわけには……。ですが魔王城に帰還用の魔法陣があると伝えられています。」


 それみたことか!と若干ドヤ顔混じりに輝を見る響。

 それにこの男、魔王城に行けば帰れるというのも信じていない。そもそもこの姫様も王も魔法使いも全てを疑いかかっている。

 何せこいつらが正しいという証拠がなく、また、勇者たちを利用しようとしているかもしれないのだから。


 (呼び出したやつらがクズ共。よくあることーーーー最近のテンプレだよなうん。)


 「しかし、王女様、俺達はただの高校生です。戦う力なんて持ってません。そんな俺らに魔王の討伐だなんて……。」


 「そちらについては問題ありません。皆さん、心の中でステータスと呟きください。」


 そう言われ、皆心の中で呟く。

 勿論響も言われたとおりにした。

 すると……


 霧村響

 男 17歳

 Lv,1

 能力《人格》

 HP300/300

 MP300/300

 攻撃 70

 防御 40

 魔攻 70

 魔防 55

 俊敏 75

 《スキル》

 炎魔法Lv,1、水魔法Lv,1土魔法Lv,1、風魔法Lv,1、闇魔法Lv,1、回復魔法Lv,1、強化魔法Lv,1

 《称号》

 無し

 《装備》

 学生服


 と目の前に出てきた。

 回りの生徒もにたようなリアクションをとっているがそれらしいものは見当たらないので、他人には見えないものらしい。


 「それが皆様の強さの証となるステータスです。ちなみに、この世界でLv,1のステータスというのは二桁いっていればいい方ですね。」


 (成る程……そう考えるとこれまたチートじみたステータスだな。)


 一番低いステータスですら4倍なのだ。これだけでも勇者というものの強さがよくわかる。

 が、しかしそれだけではない。


 「さらに皆様には一部の人間しか持ち得ない能力を皆お持ちのはずです。」


 (この《人格》ってやつか……。いったいどういう能力だ?俺でもわからんぞ。)


 数多くのラノベを読んできた自分にもわからない能力が出てきて、悔しさ半分、面白さ半分で考察していた響。

 そんな彼の頭のなかに、なにやら中性的な声が聞こえてきたのである。


 (マスターからの接続を確認。アクセスの成功を確認しました。)


 (!?なんだ、こいつ直接脳内に……。)


 と、どこかで聞いたことのあるセリフで返す響。確かに、このシチュエーションであのセリフを言わないのはもったいない。

 そして、その言葉に答えるように謎の声は説明をし始めた。


 (私はマスターの能力の《人格》そのものです。識別名はまだありません。)


 (猫かお前は……。しかし成る程。AI系の能力って訳か……。)


 (あれほど低性能ではありませんが、おおむねその認識で間違いありません。)


 それを聞いてほっとする響。本当に未知の能力であれば扱いが大変だが、前例があるのでれば問題ないと、安心したようだ。

 確かに、響ほどの異世界中にもわからない能力となると、かなり特異なものであり、情報のないそれを扱うのは至難のことだっただろう。


 「おぉ!!すげぇぞ輝‼お前、攻撃と魔攻3桁とか化けもんじゃねぇか!!しかも能力もすごそうなヤツだしよぉ!」


 響が自分の能力についてまとめていると、急に騒がしくなった。

 自分のステータスも、許可をすれば人にも見せられるということらしいのでみんなでお披露目会が始まったのである。中でも輝のステータスは目を見張るものがあった。


 二ノ宮輝

 男 17歳

 Lv,1

 能力《神の手》

 HP710/710

 MP550/550

 攻撃 215

 防御 90

 魔攻 180

 魔防 90

 俊敏 65

 《スキル》

 炎魔法Lv,1、水魔法Lv,1土魔法Lv,1、風魔法Lv,1、光魔法Lv,1、回復魔法Lv,1、対魔の証Lv,1、強化魔法Lv,1

 《称号》

 無し

 《装備》

 学生服


 最早こいつ一人でいいんじゃないかというような具合である……。ステータスも去ることながら、《神の手》という一時的にだが神の力を使えるというとんでも能力すら。持っているのだ。さらにスキル、対魔の証は魔族やモンスターに対して与えるダメージが上がり、受けるダメージもへるという、正しくなるべくして勇者になった男である。


 「いいよなぁ、輝は。俺なんか《硬化》だぜ。」


 「瑞季の能力だって充分強いじゃないか。攻守共に使い勝手のいい能力だ。」


 輝が、彼の親友である八瀬瑞季と自身の能力について話している。皆、自身の能力に不満があったり、満足していたりと様々だ。まるで福袋ガチャを引き終わったユーザーのようである。

 皆が能力を見せ、話し合っているのを見て響はふとおもった。


 (おい、……えーと……。)


 (必要でしたら識別名をお付けください。)


 (そうだな……じゃあアナザー、聞いてもいいか?)


 (識別名を認証……承認。これからはアナザーを呼称します。マスター、いかがなさいました?)


 (いやぁな、ステータスの偽造ってできないか?まだここの人間を信用できないから余り知られたくない。特に能力はな。)


 (了解しました。只今より、マスターのステータスを目立たないものにします。……終了いたしました。)


 (速いな……。優秀な相棒を持って何よりだ。)


 すると、なんともタイミングを見計らったかのように人の女子生徒が近づいてきた。

 おとなしそうな黒髪ロングで前髪の少し長い巨乳の子、名を篠山幽香かそかという。響が仲良くしている女子生徒の一人だ。


 「響君……、どう、だった?」


 「まぁ、可もなく不可もなく?とても残念なことに妥当なところだったよ。ほれ。」


 そう言って、いい機会だと思い偽装したステータスを見せる。


 霧村響

 男 17歳

 Lv,1

 能力《索探》

 HP140/140

 MP140/140

 攻撃 45

 防御 30

 魔攻 45

 魔防 35

 俊敏 50

 《スキル》

 炎魔法Lv,1、水魔法Lv,1土魔法Lv,1、風魔法Lv,1、回復魔法Lv,1、強化魔法Lv,1

 《称号》

 無し

 《装備》

 学生服


 「そっか……、私はこんな感じなんだ。」


 篠山幽香

 女 17歳

 Lv,1

 能力《魔法作成》

 HP100/100

 MP800/6800 (600)

 攻撃 20

 防御 20

 魔攻 220

 魔防 160

 俊敏 35

 《スキル》

 炎魔法Lv,1、水魔法Lv,1土魔法Lv,1、風魔法Lv,1、光魔法Lv,1、闇魔法Lv,1、回復魔法Lv,1、強化魔法Lv,1、魔術の理Lv,1

 《称号》

 無し

 《装備》

 学生服


 魔法だけ見るととてつもない能力の持ち主である。ステータスもそうだが、能力そして消費MPの半減、威力2倍、最大MPupという破格の性能を持つ魔術の理をこのレベルから所持していたのである。

 「すげぇじゃねぇか。能力もステータス魔法も相性が相当に良い。俺なんてどっからどう見ても平凡の極みだぜ全く。

 「そ、そんなことないよ……!響君だって充分強いよ!」


 「一般人からしたらだけどな。」


 そんな風に二人でイチャコラ?しているようにも見えなくないやり取りをしていると、輝たち中心グループで動きがあった。


 「なぁ皆。どうやら俺達は魔王を倒さないと帰れないらしい。それにたくさんの人たちが困っているんだ。それを助ける力があるのに黙っているなんて俺にはできない。」


 輝が皆の顔を見回す。皆もそれの答えるように輝の顔をみてうなずいた。……一部をのぞいて。


 「俺は戦おうと思う。俺達が帰るために。この世界の人のためにも。だから皆、一緒についてきてくれないか?」


 聞いていた皆が顔を合わせるそして……


 「何当たり前のこといってんだ。行くに決まってんだろ?」


 「二ノ宮ばっかりにいい格好させられねぇよ。」


 「輝君が行くなら私たちもいくわ!」


 「皆……、ありがとう!!さぁ!皆で魔王を倒すぞ!!」


 「「「「「「「おぉぉ!!!!!!」」」」」


 燃え上がる熱意。立ち上る完成に、皆心一丸となって決意を露にした。

 が、しかし、やはりこの男は違う。


 「すごいね……皆。」


 「あぁ、見ていて暑苦しいわ。」


 (アホかこいつら。悪いが俺はパスだね。そもそもここの人間が信用できんし、そんなヤツをわざわざ助けてやるほど残念ながら俺はお人好しじゃねぇ。心が痛むような正義感も持ち合わせていないしな。自分の方が何百倍も大事に決まってんでしょ。早急に帰りたいことこの上ないが魔王討伐で帰れるとも思えん。俺は俺のやりたいようにやらせてもらうよ。)

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