パーティボード
キャロスティ達と合流した次の日の朝、昨日ダグ達と一緒に食事をした店で俺たちは朝食を食べていた。
所々店の窓ガラスが割れていたりするのはダグ達が暴れたせいかな?
「ではソーマはダンジョンの2階まではソロで攻略したのですわね?」
「攻略と言っても1階から4階までは出て来るモンスターが同じだから、1階で問題なくモンスターを倒せれば4階まではそれほど苦労せずに進めると思うぞ?」
「それにしても災難でしたね。まさかご主人様もそんなトラブルに見舞われていたとは」
朝食を終えた後、昨日の夜に合流したばかりのキャロスティ達に俺の近況を報告しておいた。俺がダンジョンでトラブルに巻き込まれた話をすると、キャロスティは俺の心配をしてくれたが、リザは心配している風を装って明らかに俺に対してざまあみろといった視線を寄こしてきた。キャロスティを押し付けた件をまだ根に持っているようだな。
互いに話のネタが尽きてきたころ、キャロスティが俺が最も恐れていた言葉を口にした。
「今日からはわたくしも一緒にダンジョンに行くことですし、5階にいるというフロアマスターの元まで進んでみたいですわね」
「そ、そうだな」
やっぱりキャロスティのやつ、俺と一緒にダンジョンに潜るつもりだ。
モンスターが蔓延る危険地帯であるダンジョンの中を、歩くトラブル発生装置と一緒に行動するなんて俺には自殺行為にしか思えん。
せめて道連れを増やして負担を減らさねば。
「そういえばリザはどうするんだ? 俺たちがダンジョン攻略をしている間やることがなくて暇だろう? お前も火属性の魔法を使えることだしよかったら一緒にダンジョンに潜るか?」
俺に置き去りにされたせいでキャロスティのトラブル体質を嫌というほど理解しているリザは、俺のこの言葉の本当の意味をすぐさま理解したようで一瞬動きが止まった。
一緒に苦労を共にしようぜ? 運命共同体よ。
とりあえずこれで多少は負担が減るだろうと俺は思っていたのだが、リザの奴はすでに先手を打っていた。
「申し訳ありませんご主人様。実は私今日からこの店で働かせていただくことになっていまして。せっかくの申し出なのですがダンジョンにはキャロスティ様とお2人で行ってください」
「なにい!? いつの間にそんなことに!」
「今朝ご主人様を起こしに行く前にこの店の店主にお願いしてご主人様が滞在している間だけ働かせていただくことになりました」
ものすごく勝ち誇ったような顔を浮かべて俺にそう告げるリザ。ちくしょう! 完全に後手に回ってしまった。
「あらそうですの。リザさんと一緒にダンジョンに行けないのは残念ですわ」
「本当に・・・・残念だよ」
終わった。今日が俺の命日だ。
くっ! 短い人生だったなあ。
心の奥からこみ上げてくる絶望感に耐えきれず、俺の目じりにうっすらと涙が溜まった。
涙が下に流れぬように俺は天井を仰ぎ見た。
その天井には、うっすらと焦げたような跡がついていた。
もしかしたら昨日ダグたちが暴れた時に出来たものかも知れないな。
・・・・・ん? ダグたち?
そうだ!
俺は周囲に視線を向けてみた。
周りには年若いガーディアンたちが、大勢俺たちと同じように朝食を食べている。
その中には俺たち、というより主にキャロスティに熱い視線を向けている少年が何人もいた。
そうだよ。最近はすっかり忘れていたけど、キャロスティって金髪縦ロールに赤いドレス。整った綺麗な顔立ちに、ドレスの下から存在感を主張する豊満な胸を持っている。
つまり、何が言いたいかというと、キャロスティはとても目立つ。
中にはリザに視線を向けている者もいるが、大半は女性だ。
キャロスティの胸を見た後に、リザを見てほっとしているようだ。
まあ、中には男性もいるにはいるが。・・・・巨乳派の俺には無乳好きは理解出来ん。
勿論俺に視線を向けているガーディアンもいる。殺気付きだが。
リザやキャロスティと一緒に食事をしている俺が羨ましいのだろう。
ふっふっふ。安心するがいい少年たちよ。蒼真お兄さんが、君たちにもチャンスをやろう。
「なあ、キャロスティ」
「ん? 何ですの?」
「俺たち、何のためにダンジョンまで来たんだっけ?」
「それは勿論。ガーディアンとして腕を上げるためですわ!」
「そうだよな。でもな、俺は思うんだよ。このまま2人で組んでダンジョンに向かって、それで本当にいいのかって」
「どういう意味ですの?」
俺の言いたいことが理解できずに首をひねるキャロスティ。
よし、食いついて来た。ここからが肝心だ。
「ガーディアンは命がけの仕事だ。臨機応変な対応を求められることもあるだろう。初対面の相手と臨時でパーティを組んだりとかな。そういう時のために俺たちももっといろんな人とパーティを組んで経験を積むべきだと思わないか?」
俺のこの言葉にハッとした表情を浮かべるキャロスティ。その横ではリザが胡散臭そうな顔をしているが、今はこいつは無視だ。
「確かに、いつまでもソーマとだけ正式にパーティを組んでいては成長出来ませんわね」
俺とキャロスティはあくまで臨時のパーティで、正式にパーティを組んではいない。
何さりげなく正式にパーティを組んだことにしてんだこいつ。
まあいい。今は話を進めるのが優先だ。
「お前もそう思うだろうキャロスティ? 一人前のガーディアンになるためには他のガーディアンともパーティを組んで協調性なんかも磨かないとな。幸いここには年の近いガーディアンが多い。いろんな人とパーティを組むにはうってつけだ」
実際、ここで正式にパーティを組める相手を探すために何組ものパーティをはしごしている者や、助っ人として様々なパーティから呼ばれている者もいる。
いろんな人とパーティを組むことはキャロスティにとってかけがえのない経験になるだろう。
「どうだ? キャロスティ? この街にいる間、別行動を取らないか? それがお互いに成長するために必要なことだと俺は思うんだが」
キャロスティは少し悩みながらも、そう時間を置かずに結論を出した。
「そうですわね。ソーマの言う通りですわ。きっとそれがお互いの今後の成長につながるでしょう」
イエス! 上手く行ったぜ!
これでキャロスティを何も知らない他のガーディアンたちに押し付けられる!
内心大喜びの俺に、リザがキャロスティにバレないようこっそりとサムズアップしてきた。
「そうと決まれば早く朝食を済ませてガーディアンギルドに行こう」
「そうですわね!」
ガーディアンギルドにはパーティメンバー募集の張り紙が出せるパーティボードというものがある。
その中からよさそうな物を探してギルド職員に見せれば、あとはギルド職員がガーディアン同士を引き合わせてくれる。
キャロスティに熱い視線を送っていた奴らは急いで朝食を胃に流し込み一斉にガーディアンギルドへと走っていった。
精々頑張ってキャロスティを取り合うがいい小僧ども! それが自殺行為とも知らずにな!
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店で働くことになっているリザと別れた後、俺とキャロスティはガーディアンギルドへと向かった。
アルタ村はダンジョン目当てのガーディアンが集まる村なので、ギルド内にあるクエストボードは結構スカスカであまり依頼が張られていない。
だがクエストボードの隣に設置してあるパーティボードの方にはみっしりとパーティ募集の紙が貼られている。
『近距離戦が得意な方募集』『聖属性の魔法が使える方募集』『魔法使い募集』など、自分たちのパーティに欠けている要素を補ってくれる人材が募集されている。
中には『友達募集』『彼氏募集』『すぐに会える人募集』など出会い系サイトを彷彿とさせる内容の物もある。
出会い系かあ。俺も登録したことあるけど、誰とも出会えなかったなあ。いつも妹に妨害されてたから。
と、いかんいかん。話が脱線してしまった。
俺はとりあえず条件のよさそうな物を5~6枚見繕って、彼氏募集の紙には一応全部目を通しておいた。
「ソーマ! これなんてどうですの?」
キャロスティも何かいい条件の物を見つけたようで一枚の紙を俺に見せて来た。
その紙には『募集条件:金髪ツインテールで赤いドレスを着ている名前がキャから始まってティで終わる女性限定』と書かている。
これ、間違いなくさっきキャロスティに熱い視線を送っていた奴らの内の誰かだな。
露骨すぎるだろ。明らかにキャロスティのことしか募集してねえ。この紙張った奴はバカか?
「この条件ならわたくしクリアしていますわね」
俺の隣にもっと上のバカがいた。この紙が遠回しに自分だけを募集していることにキャロスティは気づいていないようだ。
ま、俺にはどうでもいい事か。キャロスティはこの紙が気に入ったようなので俺は適当にそれにすればいいんじゃないか? と相槌を打っておいた。
キャロスティは若干不安そうな表情を浮かべながらも、その紙を持ってギルドの受付へと歩いて行った。
ちなみに、あの紙に張り出し人ダグって書いてあった気がするんだが。・・・・気のせいだよな。
キャロスティも行ったことだし、俺もそろそろどのパーティに入るか決めないとな。
言い出しっぺの俺がソロでダンジョンに入ったではかっこつかないからな。キャロスティだけでなく、俺にとってもいろんな人とパーティを組むのはいい経験にもなるし。
候補を2枚にまで絞った所でどちらにしようか俺が迷っていると。
「あー! 私たちの募集の紙見てる!」
「ん?」
突然後ろから声を掛けられて振り向いてみると、女性2人と男性2人の4人組みが俺の方を見ていた。
女性2人の内の1人。背の低い可愛らしい顔をした子が小走りで俺の元へと走ってきた。
「あの! 今その紙見てましたよね! 私たちのパーティに入ってくれるんですか!?」
「まあ、そうしようかなって迷っていたところだったんだけど」
「やっぱり! ぜひ! ぜひ来てください! 歓迎しますよ!」
ぐいぐい来るなこの子。
俺が女の子の勢いに押されてうろたえていると、残りの3人もこっちにやってきた。
「こらメル! そんなに焦らないの。この人も困ってるじゃない」
「あ! 持ち上げないでよお!」
もう一人の女の子。こっちは背の高い少しボーイッシュな感じの子が、俺にぐいぐい来ていた背の低い子の襟首を掴んで後ろに引っ張ってくれた。
「すいません。うちのメルがご迷惑をかけて。最近ダンジョンの攻略が上手く行かなくって困っていたのでつい先走ってしまったみたいで」
女の子と入れ替わるように今度は赤髪の少年が前に出てきた。この少年がこのパーティのリーダーかな?
さっきの女の子2人やこの少年。どこかで見覚えがある気がするなあ? どこだったっけ。
「あの、あなたもしかしてこの間ダンジョンの入り口でギルド職員と揉めていた人じゃないですか?」
「ああ! あの時助けてくれた子達か!」
赤髪の子の発言で思い出した。俺がダンジョンに入ろうとしてギルド職員に追い返されそうになった時に助け舟を出してくれた子達だ。
「あの時はありがとうね。おかげで助かったよ」
「いえいえ。たいしたことはしていませんから気にしないでください」
「あの時のお礼に私たちのパーティに入って、モガ」
「はいはい、あんたは黙ってなさい」
引っ張られていった背の低い子がめげずに俺の勧誘を続けようとして、背の高い子に口を塞がれてしまった。
赤髪の子はそんな2人を見て苦笑いを浮かべた後、俺の方に向き直った。
「メルもああ言っていることですし。どうでしょう? 僕たちのパーティに入ってくれませんか?」
なかなか賑やかそうなパーティだが、助けてもらった恩もあることだし、このパーティに決めるか。
「俺で良ければ。よろしく」
しばらく投稿をお休みしてすみませんでした。不定期にはなりますが、また投稿を再開します。お暇な時にでも読んでいただけると幸いです。




