リザとキャロスティ合流
「「かんぱーい!!」」
ギルドマスターとの話し合いを終えた後、俺とダグとシエルはギルドの一室に軟禁されていたリリルと無事再開を果たした。
俺を見たリリルは初め幽霊を見るかのように驚いていたが、俺が生きていたと説明されると今度は何度も頭を下げて謝ってくれた。
ダグとシエルの幼馴染なだけあって、やっぱり悪い子ではないようだ。
俺の生存が確認されたことでリリルの罪は軽くなり、釈放の流れとなった。
主犯格2人の罪も軽くはなったが、リリルより罪の重い2人はメルグに移送され、しばらくは牢屋暮らしになるそうだ。当然ガーディアンギルドからも永久追放だ。
リリルは投獄こそ免れたが、要注意人物としてガーディアンギルドの監視下に置かれることとなった。
定期的に最寄りのガーディアンギルドへの報告義務に、達成したクエストの成功報酬の3割没収。当分の間はガーディアンランクの昇級もなし。次に何か問題を起こしたら即座にガーディアンギルドからの永久追放にもなるそうだ。
結構厳しい罰則を受けることになってしまったが、これはあくまでリリルだけに課せられることなので、これからはダグとシエルが彼女を支えてくれるだろう。
今はギルドの近くの居酒屋で、リリルの釈放と俺の無事を祝って楽しく食事をしているところだ。
している所なのだが。
「ダグ。色々迷惑かけて本当にごめんね」
「気にしないで。これからも一緒に頑張っていこうよ」
「うん」
「ちょっとリリル! ダグに近寄りすぎ!」
あれ、おかしいな。俺たち今、丸型のテーブルに4人で座っているのに、どうしてダグのすぐ両隣にリリルとシエルが座っているんだろう。
こういう時って大体四方に座るもんじゃね?
普通、東西南北に座るもんじゃね? なんでダグの方に3人も座っているのかなあ?
あれ、おかしいなあ。何で俺今、こんなに疎外感を感じているんだろう?
リリルと一緒に俺も祝ってもらっているはずなのに、目じりに涙が溜まるのはなんでだろう? あ、うれし泣きかな?
「もう、ダグったら。また口元汚している。一気に口に入れるからよ。しょうがないわね。ほら、拭いてあげるから」
「ダグ。私が拭いてあげるよ」
「ちょっと、リリル! 私が拭くって言ってるでしょう!」
「2人とも、落ち着いてよ。自分で拭けるから」
血を吹かせてやろうかあああああああああ!!
これ見よがしに人前でいちゃつきやがってよおおおおお!!
羨ましいんじゃごらあああああああああああああああああああああ!!
俺の我慢が限界突破しかけたその時。
隣のテーブルに座っていたガラの悪いおっさん3人がダグ達に絡んできた。
「おいおい兄ちゃんいいご身分だなあ! ああ?」
「俺たちに喧嘩撃ってんのかよ、てめえ!」
「見せつけてくれちゃってよお! いっぺん死ぬかこらあ!?」
おっさんの1人に胸倉を掴まれて持ち上げられるダグ。
シエルとリリルが慌ててダグを助けようとするも、か弱い女子2人では結構ムキムキの体をしているおっさんに歯が立たない。
「ちょ、ちょっとやめてくださいよ! 別にそんなつもりでは」
「じゃあどんなつもりでいちゃついてたんだよ!」
「やめてください! ダグを離して!」
「離しなさいよ、おっさん!」
「うるせえ! 人前でいちゃついてんのが悪りいんだよ!」
「そうだ! そうだ! ダグが悪い!」
「モテねえ俺たちに対する当てつけか!? ぶっ殺すぞ!」
「そうだ! そうだ! 半殺しにしろ!」
「なんでナチュラルにそっち側に味方しているんですか、ソーマさん!?」
「うるさい! 俺はいつだってモテない男の味方だ!」
いつの間にかおっさん3人組みの中に紛れていた俺を見て、裏切られたような表情を浮かべるダグ。
クックック。いつから俺が味方だと錯覚した? 俺はずっとこの時を待っていたんだ。リア充に八つ当たり! じゃなくて、天誅を下す時をな!
「さ~て。どういたぶってやろうか」
「やめてください! 誰か! 誰か助けてえ~!」
往生際の悪い奴め。貴様に助けなど来んわ!
精々泣きわめくがいい!
「ど~れ。まずは肉体言語で語り合うところから始めようか」
モテない男達からのモテ男への天誅が下されようとしたその時!
「お待ちなさい!!」
む! こ、この声は!? まさか!?
「か弱い少年少女をいじめるなど、例え天が許してもこのキャロスティが許しませんわ!!」
キャ、キャキャキャキャッキャッキャ、キャロスティィィィ!!!
ば、バカな!? あのキャロスティがこんなに早くこの村にたどり着けるわけがない!
軽く一週間はかかるだろうと予想していたのに。どうしてもうここに!?
よく見るとキャロスティの足元には、ボロボロのメイド服を着たリザが屍のように倒れていた。
ああ、そうか。リザが頑張ってキャロスティをここまで運んだんだな。
俺は心の中でリザに向かって合掌した。
「何だてめえ! 俺たちの邪魔すんのか!」
「上等だこらあ! 相手してやんよ!」
「かかって来いやあ!」
完全にキャロスティと戦う気満々のおっさん達。
だが俺には分かる。このままオッサン達とキャロスティが戦えば、確実にキャロスティのトラブル体質が余計な仕事をして、この状況をややこしくすることを。
俺は両隣にいるおっさん2人の肩に手を置いて、魔法を発動した。
「サンダーショック」
「「アババババババ!!!」」
すまない。同士たちよ。これはお前たちの為でもあるのだ。これ以上話がややこしくなる前に事態を収束させなければいけないんだ。
何より、今からおっさん達を鎮圧すれば、俺だけは助かることが出来るからな!
「ソ、ソーマさん!」
俺の後ろでダグが『やっぱりソーマさんは裏切ってなんていなかった』といった感じの熱い視線を送っている。それはシエルとリリルも同じだった。
それに対して俺は『裏切ってなんかいないよ! 俺はいつだってお前たちの味方さ!』という感情を込めてサムズアップしておいた。
「て、てめえ! 俺たちを裏切るつもっぶほ!」
最後のおっさんも、俺の裏切りに気を取られている隙に、後ろからキャロスティに杖で頭を殴られて気絶した。
その後、おっさん達は騒ぎを聞きつけてやって来た知り合い達に家まで運ばれていった。
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「それでは、キャロスティ達も無事合流出来たということで。もう一度かんぱーい!!」
「「かんぱーい!!」」
改めて、キャロスティとリザを加えて宴会を再開した俺たち。
ちなみに。メルグに置いてきぼりにした件について、リザとキャロスティに滅茶苦茶怒られたが、今後二度と同じことをしないことと、今日の宴会の2人分の食事を俺が奢ることで何とか許して貰った。
「えっと。ダグ達は初対面だし、まずはお互いの自己紹介をしようか」
最初にダグ達が自分たちのことと、俺との出会いについて説明した。
続いてキャロスティとリザが自己紹介をした。リザが、自分は蒼真の奴隷だと余計な説明をしたせいで危うくダグ達に俺が違法に奴隷を所持している犯罪者か、もしくはやばい性癖の持ち主と勘違いされそうになってしまったが、二ドル伯爵から頂いた証明書を見せてちゃんと誤解は解いておいた。
毎回説明するのも面倒だし、今後リザには、俺のパーティメンバーとでも言って誤魔化してもらうことにしよう。
「それにしてもリザ。こっちに着くのが思ったよりも早かったな。もっと時間が掛かると思っていたんだが」
俺はキャロスティに聞こえないように注意しながら隣に座るリザにそう聞いた。
リザもキャロスティに聞こえないように小声で質問に答えた。
「大変だったんですよ。ちょっと街を出ただけでトラブルの連続で。街中でもやたらとガラの悪い連中に絡まれるし。このままではいつまで経ってもアルタ村にたどり着けないと思って、自分たちで馬車を借りて強引に突っ切って来たんですよ」
道中モンスターに襲われようが、盗賊に襲われようがひたすら無視し続けてここまでノンストップで馬車を走らせてきたそうだ。
なるほど。トラブルに遭遇しても強引に無視して突破する。それもキャロスティのトラブル体質に対する対策の1つとして有効だろう。覚えておくことにする。
この2日間で相当苦労したであろうリザにビールを注いであげていると、ダグ達がいる方から不穏な気配を感じた。
視線を上げてダグ達の方を見てみると、ゆでタコのように顔を赤くしながら楽しそうにキャロスティと話しているダグと、それを面白く思っていないシエルとリリルの姿が見えた。
恥ずかしくてキャロスティの顔を直視できないのか、視線を下げるダグ。だが、その視線の先には大きく盛り上がった2つの丘があり、ダグは更に顔を赤くして明後日の方向を向いた。
そんなダグを見て眉間のしわを深くするシエルとリリル。
まさか、ダグの奴。キャロスティに惚れたか?
ダグは完全にキャロスティのことしか視界に入っていないようで、両隣で不満そうにしているシエルとリリルに全く気付いていない。
それはキャロスティも同じで。こっちは顔を赤くはしていないが、俺と同じくDランクのキャロスティは、Eランクのダグに先輩風を吹かせるのが楽しいようで、シエルとリリルに気づいていない。
楽しそうに話すダグとキャロスティとは対照的に、どんどんどす黒いオーラを放ちだすシエルとリリル。
あ、これは逃げた方がいいな。
リザも同じことを思ったようで、俺とリザは互いに無言でうなづいた後、姿勢を低くしてこっそりとその場から離れた。
そそくさと会計を済ませて俺たちは店を出て宿へと向かった。
ちなみにリザ達ももう宿の手配は済ませているそうで、俺が宿泊している宿と同じ宿だった。
俺たちが店を離れた直後、店からシエルとリリルの怒号、そしてダグの悲鳴が聞こえた。
ふ~、間一髪。修羅場に遭遇することを回避できたようだな。
キャロスティのトラブル体質の被害者がまた1人増えたか。・・・・・・いや、今回はダグがキャロスティに惚れたのが原因だから自業自得か?
まあ、何にしても。ダグの悲鳴を聞いて少し胸がスッキリしたのは秘密だ。




