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魔導書と歩む異世界ライフ  作者: ムラマサ
ダンジョン攻略編
60/78

新人ガーディアンが集う村

リザとキャロスティを出し抜いてメルグを旅立ってから3日後、俺は今猛烈に感動している!


 「キャロスティがいないだけでこうもすんなりと目的地に着くなんて」


 メルグを出てから特にトラブルに会うこともなく、あっさりとアルタ村に着いた。

 やっぱりキャロスティをリザに押し付け、もとい任せて来て正解だった。


 目的地のダンジョンから一番近いアルタ村は、村にしては結構規模が大きい村だった。

 ここに来るまでに何度か村を通って来たが、そのどの村よりも大きい。


 流石にファウードやメルグとは比べ物にならないが、村とは思えないほどの建物の数々と、なにより人が多い。

 というかガーディアンの数が多い!


 視界に入る人の半分以上が武器や防具を身に着けている人たちばかり。このほとんどがガーディアンなのだろう。

 ただ、全体的に平均年齢が低い。みんな10代後半ぐらいの年齢に見える。


 目的地のダンジョンは初心者向けの簡単な難易度のダンジョンと聞いているから、この村に集まるのはダンジョンで腕を上げに来た新人ガーディアンが大半なのだろう。


 周りが自分より年下ばかりなので、俺少し目立っているいる気がする。例えるなら高校生の集団の中に大学生が混ざっているような異物感がある。

 まあ、俺は実際この間まで大学に通っていた大学生なんだけどね。


 ガーディアンギルドは15歳から入ることが出来るから、20歳超えてから初心者向けダンジョンに来る俺みたいなのは珍しいのかもしれない。


 とりあえず、村の中心にある一番大きな建物にガーディアンギルドのマークが付いているから、そこがこの村のガーディアンギルドなのだろう。


 アルタ村のガーディアンギルドの中は、ファウードのようなオッサン臭もしなければメルグのようなさびれた感じもなく、なんというかフレッシュ感に満ち溢れていた。

 目をキラキラさせた若者たちが大勢いるせいでそう感じるのだろう。


 俺はファウードのようなオッサン臭溢れる落ち着いた雰囲気の方が好みだ。まあファウードの方は一時間に5~6回は乱闘が起きるから実際は全然落ち着いてないが。


 俺は受付にいる男性に話しかけた。

 受付の人も若いな。新人ガーディアンが集まるギルドだから、新人のギルド職員の教育の場にはちょうどいいのかも。


 「すいません。この村の近くにダンジョンがあると聞いて来たのですが」

 「ええ。勿論ございますよ。というか、この村にダンジョン以外の目的で来るガーディアンなんてほとんどいませんよ」


 でしょうね。


 「ダンジョンまではどう行けばいいですか?」

 「このギルドの右手がダンジョン行きの専用馬車の発着場になっております。午前と午後で3回ずつ運行しておりますので、その馬車に乗ってもらうのが一番早いですね。ダンジョンまで歩いて行くことも出来ますが、あまりおすすめは出来ません。ダンジョンに入る前に体力を消耗しても良いことはありませんからね」


 確かにそりゃそうだ。

 ちなみにガーディアンなら馬車にはタダで乗れるそうだ。


 ダンジョンへの行き方も分かったことだし、今日は宿を取って英気を養い、ダンジョンアタックは明日にすることにした。

 急がなくてもダンジョンは逃げないからね。


 それに、ダンジョンに行く前に少し見ておきたい物があるのだ。

 実は、師匠から貰ったガントレットを買い替えたいと思っている。

 ノラの森でスピリットイーターと戦った時のダメージが大きくて、結構傷んでいる。

 まだ当分は持つとは思うが。


 本当はメルグでリザと買い物をした時に買っておきたかったのだが、メルグにはあまり武器防具を売っている店がなかった。

 リザの話では、メルグのガーディアンの数が激減したせいで売り上げが落ちてほとんどの店が潰れてしまったそうだ。


 生き残っていた数少ない店を回ってみたが、なかなかちょうどいい物が売っていない。

 そもそも格闘戦をメインにしている人自体が少ないし、この異世界では武器と言えば剣やハンマー、斧や杖が一般的で、格闘専用のガントレットなど売っている店はなかった。


 武器を落とさないようすべり止め加工されたガントレットなどならあったが、そんなの俺には必要ない。勿論、普通のガントレットでも戦うことはできる。しかし、師匠から貰った物もそうだが、鎧の一種として防具目的で作られているガントレットだと武器を掴みやすいように手首から先の部分の装甲が薄く作られていて、格闘戦用として使用すると壊れやすい。あと、装甲が薄い分手が痛い。


 新人とは言えこれだけガーディアンが大勢集まる村ならきっと品ぞろえのいい武器屋もあることだろう。


 ただし、今は手持ちの金がないので購入は出来ない。今回はただの下見だ。

 ダンジョンへの行き方を教えてくれた受付の男性に尋ねてみると、お勧めの店を数軒教えてくれた。

 やはりこの村にはガーディアン向けの店が多く揃っているようだ。


 さて、俺のお眼鏡にかなう物はあるかな?


 -----


 教えてもらった店を数軒回ってみたが今のところ特にめぼしいものはない。

 置いてあるのはどれも防御目的のガントレットばかりで、格闘戦用の物など全然なかった。

 メルグでの悪夢が脳裏をよぎる。今回も無駄足に終わるのだろうか。


 教えてもらった店もほとんど回ってしまい、次が最後の店だ。

 店内に入ると壁一面に剣や斧が掛けられていたが、見るからにガントレットは置いてそうにない。


 一応ダメもとで店主のおっちゃんに聞いてみた。


 「ガントレット? 悪いがうちの店じゃあ取り扱ってねえな」

 「やっぱりそうですか」

 「ガントレットなんぞ防具屋に行けば売ってんだろ? なんで武器屋でガントレット探してんだ?」


 俺はおっちゃんに事情を説明した。


 「ふーん。変な戦い方してんだな。この街の武器屋は大半が金のねえ初心者ガーディアン向けの安物の武器しか売ってねえから、そんなマニアックな武器を売ってる店なんてないと思うぞ?」


 うわー。聞きたくなかったなその情報。

 王都ぐらい大きい街に行かないと手に入れるのは無理なのかな?

 俺が落ち込んでいると、おっちゃんが面白いアイディアを出してくれた。


 「店で売ってねえなら、直接職人に注文するって手もあるぞ? オーダーメイドになるから金はかかるが、良ければ知り合いを紹介してやろうか」


 おっちゃんがこの店に武器を卸している鍛冶屋を紹介してくれた。

 オーダーメイドかあ。当然そんな金はないが、いつまでも壊れかけのガントレットで戦うわけにもいかないし、いくらぐらいの値段になるのか確認するだけでも行く価値はあるかな。


 紹介してもらった鍛冶屋に向かう途中、楽しそうにおしゃべりしている男女4人組とすれ違った。


 「今日こそは5階のフロアマスターを倒すぞ!」

 「うん! アイテムも補充したし、今日はきっと勝てるよ!」

 「低難易度のダンジョンでいつまでも手こずっているわけには行かないからな」

 「ほら、あんたたち! 気合十分なのはいいけど、急がないと馬車に乗り遅れるよ!」

 「やば! 急がないと」


 4人組は慌ただしくガーディアンギルドの方へと走っていった。

 どうやらギルドから出ている馬車に乗ってこれからダンジョンへ向かうようだ。

 それにしてもフロアマスターねえ。なんか強そうな響きだな。


 ダンジョンの最奥にはそのダンジョンのボスであるダンジョンマスターと言われる強力なモンスターがいると言う話は聞いたことがあるが、フロアマスターなんてのもいるのか。

 ゲームで言うところの中ボス的な存在かな?


 まあ、なんにしても、さっきの4人組が無事フロアマスターとやらに勝てるといいな。


 -----


 「なあにい!? 格闘専用の武器が欲しいだあ?」

 「は、はい。そうです」


 紹介してもらった鍛冶屋のおっちゃんに事情を説明すると、おっちゃんは俺を値踏みするように見てきた。

 なんかまずいことでも言ったかな? 若干不機嫌そうなおっちゃんは、なぜか俺の腕や肩、腰や足をバンバン叩いてきた。

 ちょっ、痛いって。


 「ふーむ。それなりには鍛えているようだな。お前さん、ちゃんと格闘術を学んでるんだろうな?」


 どうやらさっきのは俺の体を調べていたようだ。だったらそう言えばいいのに。

 俺はおっちゃんに、ちゃんと格闘術の師匠の元で修行した経験があることを伝えた。

 師匠がモンスターだと言うことは話がややこしくなりそうだから伏せておいたけどね。


 俺の説明を聞いたおっちゃんは今度は急に笑顔になって、俺の肩をどんどんと叩いてきた。

 だから、痛いっての!


 「そーか、そーか。ならいいんだよ。いやー、たまにお前さんみたいに、新人のくせしてやたら武器に拘ったりしてくるガーディアンがいてよ。あんちゃんみたいに変わった武器を注文してくる奴の中には、修行もしてねえのに目立ちたいからとか、かっこよさそうだからとか安易な考えのやつが多くてな。自分の命を預ける武器を何だと思ってやがんだか」


 一般的に広まっていない変わった武器と言うのは、それだけ使いこなすのが難しい武器と言うことだ。

 剣や斧が広く普及しているのはそれだけ使い勝手のいい武器だからであって、意味もなく普及しているわけではない。


 新人ガーディアンが多く集まるこの街では、使ったこともない武器を持っていきなりダンジョンに突っ込むという無謀を行う者がちょくちょく現れるそうだ。

 そして、そんな無謀を行った者の大半はダンジョンから生きて帰ってこない。

 というのをおっちゃんが説明してくれた。


 「あんちゃんみたいにちゃんと修行してきてるような奴になら俺だって武器を作るのは構わねんだぜ? ガーディアンになるような若い連中には変な奴も多いからな。昨日も、革鎧と鉄剣を真っ黒に染めてくれって言う変な小僧が来てよ。まあ染めるだけなら問題ねえかと思って染めてやったけどよ」


 話が脱線してしまったが、おっちゃんも納得してくれたみたいなので話を本題に戻した。


 「格闘用ってことはつまりナックルダスター系の武器か」

 「ナックルダスター?」


 なにそれかっこいい!

 系ってことは武器のジャンルか何かだろうか?


 「ナックルダスターってのは拳にはめて打撃力を強化する武器の総称だよ」


 詳しく聞いてみると、地球で言うところのメリケンサックなどがこのナックルダスターに含まれるようだ。もちろん、ガントレットのように腕全体を覆うタイプの格闘用武器などもこのナックルダスターに含まれる。


 「予算はどのくらいだ? ナックルダスター系は素材とデザインで性能に差が出やすいからな。金があるなら鉄より少し硬い鋼を使うか?」

 「いえ。今日は下見に来ただけで、どのくらいの値段になるか確認しておきたくて」


 おっちゃんは店の奥から値段の参考にといくつか資料を持ってきてくれた。

 鉱石ごとの値段の違いなどが書かれた一覧表や、ナックルダスター系の武器が掲載されている武器のカタログなどを見ながら、何の素材にするか、デザインはどうするかでおっちゃんと結構盛り上がった。


 見せてもらったカタログには先端に突起物がついているナックルなどもあった。

 へー、こういうバージョンもあるのか。

 おっちゃんの話では、先端の突起で相手を刺す分殺傷能力は上がるが、打撃力は低下するとのこと。あと敵が血だらけになるので結構グロい戦闘になってしまうことが多いそうだ。

 元々は拷問用に開発されたものらしい。うん、これは候補から外そう。

 グロいのは嫌だし、何より俺がツヴェイト師匠から学んだ格闘術は打撃重視だからな。


 その後もおっちゃんと武器の話で盛り上がったが、最終的には金という壁が立ちはだかったので、素材は無難に鉄。デザインは一般的なガントレットに近いものにしてみた。

 値段は銀貨7~8枚とのこと。武器屋で売っている一般的な鉄剣の値段は大体銀貨5枚ほどなので、そこまで高い値段ではない。


 「あんちゃん、ダンジョン行くんだろ? このぐらいの金額ならダンジョンの1階から4階をしばらく周回していれば貯まるぜ。もっと早く金を貯めたいなら5階のフロアマスターを倒して6階から9階にいるモンスターを倒しな」


 最後におっちゃんからアドバイスを貰い、金が溜まったらまた来ると約束して店を出た。

 今後も新しい武器を手に入れるたびにオーダーメイドしないといけないのかな?

 自分の命を守るという意味でも、そして経済的な意味でも、武器の重要性を改めて理解したよ。

 おっちゃんと話している内に結構時間が経っていたようで、店を出るともう夕方になっていた。


 ガーディアンギルドの近くにある金のない新人ガーディアン向けの安宿を一部屋取った後、特にやることもなく暇だったのでガーディアンギルドの2階にある資料室でダンジョンに関する資料をいくつか読んで時間を過ごした。


 明日はいよいよダンジョンアタックだ。

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