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魔導書と歩む異世界ライフ  作者: ムラマサ
ファウード騒乱編
6/78

幕間劇 今後の不安

 「行ったか」

 「彼はこれから苦労するでしょうね。文字通り環境が大きく変わりますから」

 「大丈夫なんじゃねえの? お菓子全部持っていくぐらい図太いやつだからな」


 蒼真が消えたあと、主神メルティオールの管理する空間にはまだ3人の神が残っていた。


 どら焼きを蒼真からもらえなかったメイギスは若干落ち込んでいたが、アルテイシアとメルティオールの顔は蒼真のいた時よりも真剣なものになっていた。


 「さて、わかっておるな? 二人とも」

 「はい。今回の件、いくつか不審な点があります」

 「うむ」

 「まず、最初に出現した穴の存在にわたくしが気づくのに時間がかかってしまったこと」

 「次にメルティオール様の結界をミノタウロスが通れたこと」


 「うむ。そうじゃ。滅多にない現象とは言え穴自体は昔からあった現象じゃ。当然穴が発生したときの対処方は各世界を管理している管理神ごとに確立しておる。そうじゃのう?」

 「はい。わたくしの場合は穴が発生がした場合は配下の精霊たちから連絡が来る手はずになっています。各大陸にいる大精霊が配下の精霊を各地に常駐させてその場所の管理と異変が起きた時の報告を義務づけています」


 「今回穴が開いた場所を担当している精霊から報告がなかったから対処が遅れたのか?」

 「いえ、その精霊の話では突然穴の反応が出たらしくて」

 「ん? 元々穴は前触れなく突然起きる現象だろ?」

 「そうなのですが。先ほど来た調査結果の報告ではその精霊の子が穴の存在に気づいたのは穴が発生した10分後だったらしいのです。それもミノタウロスが穴に落ちた直後に穴の発生に気づいたらしいです。さらに現場にはミノタウロスを無理やり穴に落とした形跡もあったとのことです」


 「うーむ。何者かがミノタウロスが穴に落ちるまで穴の発生を隠蔽しておったのか」

 「まあ人為的なものだろうとは思っていたけどさ」

 「む? メイギスは犯人に心当たりがあるのか?」

 「いえ。犯人はわかりませんが、今回ミノタウロスはメルティオール様の結界の僅かな隙間を狙ったかのように通って地球に来ていたことがこっちの調査で判明したんですよ。もし偶然だとしたらとんでもなく低い確率ですよ。誰かが狙ってやったとしか思えません」


 「しかしメイギス殿。穴の制御など神でもいまだ出来てませんよ?」

 「けど明らかに何者かが関与した形跡がはっきり残ってるだろう?」

 「それじゃよ。わしが一番腑に落ちないのは。犯人の意図が読めん」

 「犯人の意図、ですか?」

 「もしわしが犯人じゃったら途中で穴の隠蔽を解かずにギリギリまで穴が発生したことを隠して神の対応をもっと遅らせる。ミノタウロスを穴に落とした痕跡も消しておくのう。もしくは今回発生した穴は自然に発生したものだと思わせるように細工をする」


 「んー、たしかに。神でも出来ない穴の制御というすごいことをしている割には爪が甘いような印象をうけますね」

 「爪が甘いのではなくわざと痕跡を残したのでは?」

 「どういうことじゃ? アルテイシア」

 「穴の制御という神でも出来ないことをなせる何者かがいることをわたくしたち神々に伝えるためにわざと痕跡を残したのでは?」

 「つまり今回の件は俺たち神に対する宣戦布告ってことか?」

 「それなら痕跡が残っておるのにも筋は通るの」

 「相当の自信家か、わたくしたち神に恨みでもあるのかも知れませんね。あくまで予想でしかありませんが」

 「犯人はわしら神を標的にしておる可能性もあるか」

 「一番やばいのは犯人がどの程度穴の制御が出来るのかですよ。もし自由自在に可能ならアルテイシアの世界からモンスターが地球に大量に送られる可能性すらある」

 「さすがに自由自在というのは考えづらいかと。相当な準備などを揃えなければそうそう出来るものではないと思うのですが」

 「メイギスの不安はもっともじゃが、アルテイシアの言う通りすぐにまた似たようなことが起こることはあるまい。わしらも当然警戒するに決まっておるのじゃからのう。しばらくはおとなしくしておると思うぞ」

 「だといいんすけどねえ」


 「現状ではどうしても情報が不足しすぎていて確かなことは言えませんね」

 「警戒しておくしかないのう。ほかの管理神にも警戒を呼び掛けておこう」

 「そうですね。それが無難でしょう」

 「管理体制の見直しと警戒の強化。あー忙しくなるな」


 「では話し合いは以上ということで」

 「そうじゃのう。2人ともそろそろ自分の世界に戻った方がいいのう。じゃがその前に聞きたいことがあるのじゃ。メイギス」

 「なんですか?」

 「蒼真君の手前何も質問せんでいたがその恰好はなんじゃ? 随分奇抜じゃのう」

 「わたくしも気になってました。随分と派手な格好ですね」

 「俺今バンドやってんすよ。知ってます? バンド」

 「知ってはおるが。お主がか? 管理神の仕事はどうしておるのじゃ?」

 「俺の世界は平和で仕事が少ないんで暇なんですよ」

 「それでバンド活動を? それでいいのですか?」

 「自分の管理している世界の人間をより深く理解しようってことだよ。最近俺のいるグループも有名になってきて今度テレビに出るんですよ。よかったら見てください」

 「神がテレビ出演か。めまいがしてきたのう」

 「わたくしも少々頭痛が」

 「2人とも大げさだなあ。神だって趣味の一つや二つ持たないとやってられませんって。じゃ! これからラジオ放送があるんで失礼します」

 「ラジオにも出とるのか」


 メイギスは自分の行動に特に疑問も葛藤も抱いた様子もなく颯爽と自分の管理世界に帰っていった。


 「あ奴は自分の管理しておる世界の人間に影響受けすぎじゃろう」

 「いざという時は頼りになる方なのですが、あのような姿を見てしまうと不安になってきますね」


 世界の今後より同僚の今後の方が心配な2人であった。











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― 新着の感想 ―
[良い点] 世界と世界の間に結界があることや、時々穴が空くみたいな設定は面白いですね。 漫画「幽遊白書」を思い出してニヤニヤしてしまいました。 作者さんがどれだけの作品からインスピレーションを受けてい…
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