新たな仲間兼奴隷 リザ
二ドル伯爵に促されて二フレさんが扉を開けると。
やたらと腰をくねくねさせて、「アナタノドレイケンメイド二ナリマス」と、謎の呪文を唱えながらメイドの恰好をしたリザが部屋に入って来た。
とりあえずその取ってつけたような作り笑顔をやめてもらえないだろうか?
そんな俺の思いは一切届かず、満面の作り笑顔でまな板を連想させる起伏の無い胸を強調する謎のポーズをとるリザ。
こいつ、少し見ない内に人格がさらに歪んだか?
俺が何かリアクションするのを待っているのか、リザは謎のポーズをとったまま固まっている。
だからそんな女性らしさの欠片もない胸を強調されても俺はちっとも嬉しくない。
まったく。金貨の山が運ばれてくるかと思って期待していたのに、山どころか丘ほどの起伏もない貧相な体の女性が入って来るとは。
隣にいる二フレさんを見習え。お前みたいに胸を強調しなくても自然と胸に視線が移動してしまうような立派なものをお持ちだぞ。
俺は目の前にいるリザと、少し離れた所にいる二フレさんを見比べて結論を述べた。
「・・・・・・・・チェンジで」
「てめえ! 今どこ見て言ったゴラァ!」
「せめてあと2サイズアップしてから出直して来い!」
「私はこれからが成長期なんだよ!」
「そう言う奴は大抵もう伸びしろがないんだよ!」
「今に見てろ! いつかナイスバディになって見返してやるからな!」
「ああ、分かった。来世のお前に期待する!」
「今世の私に期待しろ!!」
俺とリザの口論は5分ほど続き、殴り合いの喧嘩になりかけた所で二ドル伯爵が止めに入ってくれた。
「で? なんでリザがメイドに仮装して俺の奴隷になるとか言い出してきたんですか?」
「仮装じゃねえ! 私の本職はメイドだ!」
あ~、そう言えばリザはカスカロフの屋敷にいた時はメイドしてたんだったな。
リザがまた暴れ出しそうになってきた所で、ようやく二ドル伯爵が説明を始めてくれた。
「単刀直入に言うとね、ソーマ君にリザ君のご主人様になってもらいたいんだよ」
「他を当たってください」
「おい! 真顔で即答するな! 流石に傷つくぞ!」
「他に頼れる当てがないんだよ。ソーマ君になら安心してリザ君を任せられるんだけどねえ」
「そもそも何でそんな話になったんですか?」
「実はね」
二ドル伯爵の説明では、俺が入院している間にカスカロフに協力して今まで甘い蜜を吸っていた連中を芋づる式にどんどん逮捕していったらしい。
そこまでは良かったのだが、今までカスカロフのせいで辛い目にあってきた被害者たちが、カスカロフに協力していた連中を厳罰にしろと騒ぎ出したそうだ。
「ソーマ君も見ただろう? 屋敷の前に集まって抗議している人たちを。あれ皆カスカロフ元子爵の被害者たちでね。連日あんな調子で屋敷の前で騒いでいるんだよ。おかげでこっちは胃に穴が開きそうさ」
なるほど。カスカロフが逮捕されたことで、今までため込んでいた不満が爆発したわけだ。
けど逮捕された人たちの中にはカスカロフに弱みを握られて従っていた人や、大した悪事をしていない人もいるから、逮捕した一人一人の罪状をしっかりと把握して適切な罰を与えなければならない。
主犯のカスカロフは勿論厳罰だが、その他の主犯格も軒並み厳罰に処されることは既に決定しているそうだ。問題なのはその主犯格の中にリザも含まれていることだ。
なにせカスカロフの表には出せない裏の金を管理していたのがリザなのだ。そりゃあ主犯格の仲間入りをしても仕方ない。
「しかし、リザ君の協力のおかげで今回の逮捕が上手くったのも事実。私個人としてはリザ君への罰はある程度軽いものにしようと思っていたんだけどね。でも、それじゃあ今まで被害にあっていた人たちが納得できないからねえ」
「それでリザを俺の奴隷にしようと?」
「名案だと思わないかい? 被害者たちにはリザ君は奴隷落ちしたと伝えれば怒りも収まるだろう。でも実際は奴隷にはなったものの、奴隷商に売られたわけではなくソーマ君の奴隷になっただけだからリザ君が酷い目にあうことはない」
「でも王国で奴隷は禁止されているはずでは?」
このエクス・クウォード王国では基本的に奴隷は禁止されている。重罪を犯した者に奴隷紋を刻み帝国の奴隷商に渡すという刑罰は存在するが、奴隷の所持は禁止されている。
「問題ないよ。伯爵位以上の爵位を持つ貴族には奴隷所持許可証を発行できる権限があるからね。私がソーマ君に王国内においてリザ君と言う奴隷を所持することを許可したという許可証を発行するから、その許可証を持っていれば王国内でも堂々と奴隷を連れて歩けるんだよ」
そんなものがあったのか。知らなかった。
元々は帝国からくる奴隷商のために作られた制度らしいのだが、別に奴隷商にしか許可証を発行してはいけないという決まりはないそうだ。
これで俺が奴隷を持っても何の罪にも問われないことになる。となると、残る問題はリザの気持ちと俺がリザを受け入れるかどうかだ。
「リザはそれで納得してるのか?」
「普通に罰を受けた場合、処刑されるか炭鉱送りにされるか本当に奴隷商に売られるかしか道がないからな。だったらお前の奴隷になった方がましだ」
「ソーマ君にとっても悪い話ではないはずだよ? リザ君は長年子爵家に仕えてきたメイドだから身の回りの世話は全部こなせるし、火属性の魔法も中級まで使えるから戦闘も出来る。リザ君ほどのメイドは上級貴族でも欲しがるレベルだよ」
そうは言われてもな。
正直、リザが仲間に加わるとかなら普通に受け入れてもいいが、奴隷となると話は別だ。大体奴隷と何てどう接すればいいんだ?
リザを奴隷として受け入れるかどうか俺が悩んでいると、二ドル伯爵が背中を押してくれた。
「そう深く考える必要はないよ。奴隷をどう扱うかはその奴隷の主人次第。つまりソーマ君がリザ君を奴隷ではなく仲間として扱うなら、誰もそのことに文句なんて言えないのさ。勿論その逆も然りだけど、ソーマ君ならそんなことはしないと私は信じているよ」
身分としては奴隷だが、仲間として扱うか。そう考えればリザを受け入れてもいいかもしれない。
というか、初めからリザを受け入れるという選択肢しかないんだよな。俺が断ればリザは厳罰に処されることになるんだから。
「分かりました。俺がリザの主人になります」
「そう言ってくれるのを待っていたよ」
「これからお世話になりますね。ご主人様」
主人になると言った途端急に声色を変えてくるリザ。調子よくコロコロと態度を変えやがって。
・・・・・たまになら酷い命令をするのもいいかもしれない。
その後、二ドル伯爵がリザと奴隷契約したときに使用した部屋へと移動し、リザの背中の奴隷紋に新たに俺に血を垂らした。
これで正式に俺がリザの新しいご主人様になったことになる。ちなみに、リザに刻まれた奴隷紋は契約期間が無期限に設定されているものの、拘束力はそこまで強くない。
俺が強く命令すれば拒むことが出来ないが、軽い命令などならある程度拒否することも出来る、奴隷紋の中でもかなり緩いものらしい。
無事契約を済ませた後、二ドル伯爵が俺に話しかけてきた。
「これで何とか一件落着だね。リザ君のメイドとしての能力は本当に高いから、ソーマ君もこれからは色々と楽になると思うよ」
「リザに本当にメイドなんてこなせるんですか?」
「これから一緒に過ごすことになるんだから、十分リザ君の有能さが分かるはずだよ」
まあ、リザのメイドとしての能力は置いといて。火属性の魔法が使えるのは事実だし、戦力にはなるはずだ。
・・・・・メイド服を着た貧乳の魔法使いか。
あ、いいこと思いついた。
「リザ」
「何ですかご主人様?」
「お前にピッタリな二つ名を思いついた」
「二つ名? 私にピッタリなかっこかわいい二つ名ですか?」
「おう! お前にピッタリな二つ名だ」
「ぜひ聞かせてください!」
「空虚な胸と書いて虚胸の魔法使いだ」
「喧嘩売ってんのかてめえええ!」
こうして俺の仲間に新たに虚胸の魔法使いが加わった。
しばらく投稿を休んでしまってすみませんでした。失踪はしてませんよ!




