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魔導書と歩む異世界ライフ  作者: ムラマサ
ダンジョン攻略編
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奮闘! キャロスティ

 「あなたたちの悪行もこれまでですわ! 大人しくお縄に着きなさい!」


 村人たちの安全を確保し、奇襲をかけることで盗賊たちの数を大幅に削ることに成功したキャロスティは、盗賊たちの前に姿を現し、投降を呼びかけた。

 しかし、奇襲を仕掛けてきたのが女1人だとわかった盗賊たちは降伏するどころか安堵していた。


 不意さえ突かれなければ、小娘一人ぐらいどうということはない。盗賊たちはそう考えた。

 キャロスティが姿を見せたことで盗賊たちの不安や恐怖は解消される結果となってしまった。


 「なんだよ。相手は女1人かよ」

 「ビビらせやがって」

 「誰が大人しく投降なんかするかよ」


 ナイフを手に取り、戦闘態勢を整える盗賊たち。

 一斉にキャロスティに襲い掛かろうとしたとき、盗賊団の頭が待ったをかけた。


 「待てお前ら。その女の相手は俺がする」

 「頭が、ですか?」

 「手下を大勢やられたんだ。頭として俺がけじめをつけさせてもらう。構わねえかい、先生?」

 「好きにしろ。ただし、余り時間をかけるなよ。これ以上のトラブルはごめんだからな」

 「へへ。了解了解」


 頭は背中に担いでいたバスターソードを抜き、その切っ先をキャロスティに向けた。


 「念のために聞いておくぜ? あの氷の壁の魔法を解除して、大人しく俺たちに捕まるなら命だけは保障してやる。まあ、体の方は保証しないがな」

 「盗賊と言うのは誰もかれも同じことしか言えませんの? そんなにわたくしが欲しければ力づくで奪って見せなさい!」

 「じゃあそうさせてもらうぜ! ショックバースト!」


 盗賊団の頭は両手でバスターソードを構え、上段からバスターソードを振り下ろした。

 キャロスティ目掛けてバスターソードから衝撃波が放たれ、キャロスティはとっさに地面を転がって衝撃波を避けた。


 衝撃波を回避したキャロスティが立ちがあると、すぐそばまで頭が迫ってきていた。

 頭は、自身が放った衝撃波の後を追うように移動し、キャロスティとの距離を詰めていたのだ。

 きちんとした訓練などは積んでいないものの、盗賊として人やモンスターと数多くの戦闘を行い、実戦で磨いた頭の戦闘センスは侮れない。


 「おらあ!」

 「きゃああ!」


 振り下ろされたバスターソードを辛うじて交わしたキャロスティだったが、姿勢を崩してその場で尻餅をついてしまった。


 「さっきまでの威勢はどうした? その程度か?」

 「く!」


 挑発的な表情でキャロスティを見下ろす頭。

 キャロスティはそんな頭を睨みつけ、至近距離から魔法を放った。


 「アクアボール!」

 「おっとお!」


 杖から放たれた水球を、頭はバスターソードの剣脊で受け止めた。

 その隙にキャロスティは後ろに下がり、頭と距離を取った。


 「おいおい。そんなに逃げるなよ。そんなに嫌がられると傷ついちまうぜ」

 「おだまりなさい!」


 頭の強さはキャロスティの予想以上だった。

 キャロスティの持つ杖では、頭の持つバスターソードの攻撃を受け止めることができない。下手に受け止めれば一撃で杖を折られてしまう。

 そのため、連続で攻撃されると回避に専念するしかなく、反撃する暇もない。


 魔法使いとの戦い方を熟知している頭は、常にキャロスティに接近し続け、魔法を発動するスキを与えない。

 頭の攻撃を回避し、どうにか距離を取ろうとするが、頭はすぐにその距離を詰めて来る。


 接近戦を主体としている者が魔法使いと戦う時の鉄板の戦闘方法だ。

 体力の消耗は頭の方が多いが、元々バスターソードを振り回せるほどの筋力と体力を持つ頭は、この程度で息切れなど起こすはずもなく、逆にキャロスティの方が急激に体力を消耗していっていた。


 「おらおらおらおら! どうしたあ! 反撃して来いやあ!」

 「くう!」


 重いバスターソードを軽々と扱い、果敢に攻めて来る頭の攻撃をギリギリで回避し続けるキャロスティ。

 しかし、もう体力はほとんど残されていない。


 (悔しいですがこの男、強いですわ。魔法使いとは相性が最悪ですの。どうにかしてこの状況を脱しませんと)


 回避に専念しながらも、必死に思考を巡らせるキャロスティ。

 その時、体力の限界から一瞬足の力が抜けてしまった。

 頭はその一瞬の隙を逃すことなく、キャロスティの腹を蹴り飛ばした。


 「きゃあああああ!」


 頭の蹴りはキャロスティの腹へ食い込み、キャロスティは後方へ吹き飛ばされた。


 「あぐ、かはあ!」


 何とか立ち上がったものの、蹴りによるダメージが大きく、足はふらつき、意識がはっきりとしない。


 「終わりだ!」


 チャンスと見た頭は、勝負をつけようとキャロスティへと走り出した。

 自身に迫ってくる頭の姿を見ながら、キャロスティの頭に死がよぎった。


 (こんな、こんなところで死ぬわけにはいきませんわ。わたくしは、わたくしは!)


 「わたくしは、こんなところで死ぬような弱い女ではなくってよ!」

 「ほざけ! てめえは終わりだよ!」


 キャロスティは右手に持つ杖を、頭目掛けて投げつけた。

 しかし、頭はバスターソードを横なぎに振り、杖を難なく弾いた。


 「は! それが最後の攻撃か? 情けねえ。やっぱりてめえはここで終わりだよ!」

 「それはあなたの方ですわ!」


 キャロスティは、杖を弾いたことで無防備になっている頭へと一気に迫ると、ドレスのポケットから指輪を取り出し、頭の顔を両手で挟み込んだ。


 「何のつもりだ!? 俺の顔を押しつぶそうってか? その細い腕で?」

 「いいえ。押しつぶすのではなく、焼きつぶしますの」

 「は? 何を言って」

 「ファイヤー!」

 「があああああああああああああ!!!!!!」


 キャロスティが取り出した指輪は、苦手としている火属性魔法の練習用にと、ファウードを出る前に購入していたものだった。

 火属性と相性のいい赤い魔石がはめ込まれた指輪は、強力な魔法は発動できないものの、初級魔法であるファイヤー程度の魔法なら問題なく発動できる。


 以前、ファウードのガーディアンギルドで蒼真と飲んでいた時、蒼真がファイヤーの魔法でゴブリンを倒した話を聞いていたキャロスティは、その話を真似てみたのだ。


 (ソーマに感謝ですわね。素手で敵に突っ込み、ファイヤーで敵を焼くなんて発想。わたくしにはできませんもの。それに)


 「いつもわたくしの前で勇敢にモンスターに挑むソーマを見てきたからこそ、この作戦を実行する勇気が沸きましたわ。ですが、もう2度と、やりたくは、ありま、せん、わ」


 そう言ってキャロスティは力尽き、その場に倒れた。

 元々、村人全員を囲うほどの大きさのアイスフォールを発動し、その後アイスフォールと同じ中級魔法のハイドロキャノンを発動した時点で、キャロスティにはあまり魔力は残っていなかった。

 そこに加え、頭との戦いで体力を大きく失ったため、限界に達したのだ。

 

 キャロスティに顔を焼かれた頭は、武器を落とし、両手で自身の顔を覆いながら地面を転げまわっていた。

 そんな頭を心配して、手下たちが周りに寄って来た。


 「頭! 大丈夫ですかい!?」

 「しっかししてください! 頭!!」

 「うがあああ! 俺の、俺の顔があああああああ!!! あのアマアアアアア!!」


 地面を激しく転げまわっている頭に、どう対処すればいいのか分からず動揺する手下たち。

 それを少し離れた場所から観察していた赤ローブの男は、冷静に今後の行動を考えていた。


 (残っている盗賊の数は10人以下。頭は顔を焼かれてもう役に立たん。あの小娘は気絶したようだが、こんな状況でアイスフォールが解除されたら)


 赤ローブの懸念通り、キャロスティが気を失ったことで氷の壁が解除され、中から少し寒そうにしている大勢の村人たちが出てきた。


 突然氷の壁に覆われたり、それが今度は突然解除されたりと、目まぐるしい状況の変化に追いつけず、村人たちは混乱していた。


 しかし氷の壁が解除された後、大きく数を減らしている盗賊たちと、顔を覆って地面を転げまわる頭の姿を見た村人たちは、今がチャンスだと確信した。


 「よ、よく状況がわかんねえが、今なら盗賊どもをやれんじゃねえか?」

 「そ、そうだ! 今がチャンスだ! 行くぞみんな!」

 「「おおおおおおおおお!!!!!」」


 盗賊たちを倒そうと、村の男たちが一斉に盗賊たち目掛けて走り出した。


 「うわああ! 来んじゃねえええ!」

 「落ち着け! 俺たちにはまだ先生がいる!」

 「そうだ! 先生! 助けてください、先生!」


 盗賊たちは赤ローブに助けを求めたが、すでに赤ローブの姿は広間のどこにもなかった。

 状況を冷静に判断した赤ローブは、あっさりと盗賊たちを見限り、自分だけ逃げだしたのだ。


 「くそおおおお! あの野郎、自分だけ逃げやがったなあ!」

 「来るな! 村人ども! 来んじゃねええ!」

 「悪かった! 俺たちが悪かったから許してくれええ!」


 盗賊たちは村人たちに一人残らず取り押さえられ、縄で拘束された。

 その後、気絶したキャロスティを発見した村人たちは、自分たちを助けてくれたのはこの少女に違いないと、キャロスティを村長の家まで運び、目が覚めるまで手厚く看病してくれた。

 

 -----


 1人逃げ出した赤ローブは、村が一望できる丘の上まで来ていた。

 ローブのフードを脱いだ赤ローブは、忌々しく村を睨みつけながら、今後の事に頭を悩ませていた。


 「これで盗賊どもは全滅。人さらいの罪を押し付けるダミーがなくなってしまった。カスカロフ様になんとご報告したものか」


 盗賊たちを利用し、人さらいに協力させた上で、もしもの時はすべての罪を盗賊たちに押し付ける。

 それが赤ローブの考えていた計画だった。

 しかし、盗賊たちが全滅したことでトカゲの尻尾切りに丁度いい人材がいなくなってしまった。


 今後、どうやって人さらいを続けるか、また、今回のことを自分の雇い主にどう伝えたものか、赤ローブの男は頭を悩ませていた。


 その時


 「やっと着いたああ! 頂上だああああ!」

 「ん?」


 今後のことを考えるのに集中していた赤ローブの男は、下から坂道を登ってくる蒼真に気づいていなかった。

 突然現れた謎の男を赤ローブは観察した。


 防御力の弱い革製の鎧を身に着け、武器の類は持っておらず、なぜか馬車を引いている。

 馬を買う余裕もない若い商人だと赤ローブは判断した。

 

 「あ、どうも。旅の方ですか? さっき村人らしい人たちが慌てた様子で走っていったんですけど、何かご存じありませんか?」


 何も知らない蒼真は、今自分が話しかけている人物こそが村の襲撃を企てた男だと知らずに気軽に赤ローブに近づいた。


 (しまったな。油断して居たからもしかしたら顔を見られたかもしれん。まあいいか。商人の1人ぐらい殺すのは容易い)


 蒼真に顔を見られたかもしれないと思った赤ローブは、さっさと蒼真を殺してこの場を去ることにした。


 「ああ。俺もさっき慌てた様子の村人を見て心配して来てみたんだ」

 「そうなんですか。あ、下に見えるのが村ですか? 中央の広場みたいな所から煙が上がってますね」


 赤ローブに背中を見せ、丘の下の村を覗く蒼真。

 赤ローブの男は今がチャンスと、懐に隠していたナイフで蒼真の背中を刺そうとした。


 「兄ちゃん! 危ない!」

 「え?」


 赤ローブが後ろから蒼真を刺そうとしている所を、馬車から目撃した御者のおじさんが、大声を上げて蒼真に危険を知らせた。

 その声を聴いて後ろを振り向いた蒼真が、自分のことを刺そうとしている赤ローブに気づいた。


 「ち! もう一人いたのか。だかもう遅い! この距離、商人の小僧にはもう避けれまい!」

 「商人? 何言ってんだ、あんた?」


 蒼真は赤ローブのナイフを余裕で回避して、赤ローブの腹に膝蹴りを決めた。


 「うぼお!」

 「俺は商人じゃなくてガーディアンだよ」


 蒼真やキャロスティのように接近戦の訓練などしたことがなく、魔法の訓練しか積んでこなかった赤ローブの攻撃を避けることなど、蒼真には造作もないことだった。

 蒼真の見事なカウンターによってあっさりと気を失う赤ローブ。


 「何だったんだこいつ?」

 「兄ちゃん大丈夫かい?」

 「ああ。大丈夫大丈夫。この程度どうってことないよ。それより教えてくれてありがとね、おじさん。助かったよ」

 

 その後、蒼真は馬車に積んであった縄で赤ローブを拘束し、再び馬車を引いて村へと向かって行った。


 

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