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魔導書と歩む異世界ライフ  作者: ムラマサ
ファウード騒乱編
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謝罪

 「この度はわたくしたちの不始末により、多大なる迷惑をおかけしてしまいまして」

 「ほんっっっとうにすまない! まじで悪かった。」


 ・・・・・なにこの状況。

 気が付いたら目の前で知らない男女が土下座していて、いきなり謝罪してきた。

 どう反応すればいいんだ。謝られている理由も相手の素性もわからない。

 困ったな。

 

 「こらこら二人とも。謝罪したい気持ちはわかるがこの子が状況についていけておらんぞ。まずは落ち着いて自己紹介するのが先じゃろう」


 いつのまにか俺の隣に老人が立っていた。

 老人は過ごしてきた年月の長さを感じさせるしわの多い顔に、とてもやさしそうな笑顔を浮かべていた。

 白いひげに白髪のその老人は西洋風の顔つきをしているのに身にまとっているのは和服だ。


 「申しわけありません。メルティオール様」

 「そうっすね。その通りです。ちょっと慌てすぎましたね」


 老人に窘められて冷静さを取り戻したのか、謝罪してきた二人がゆっくりとその場に立ち上がった。


 綺麗なブロンドの長い髪にまるで作られたかのように整った美しい顔。

 モデルのような理想的な体形。その魅力的な体を引き立てる露出の激しい服装。

 西洋の女神を連想させる美しい女性と。


 バンドマンのようなロックな服装に顔にはサングラス。

 指にはいくつもの指輪がはめられており、右耳にはピアスが3つもついている。

 身長は高いが細身の体をしている、とてもチャラそうな恰好の男性。

 とても接点のなさそうな両極端な見た目をした男女がそこにいた。


 「まずはわたくしから。わたくしは地球とは違う世界を管理しております。女神アルテイシアといいます。どうか以後お見知りおきを」

 「俺はお前のいた地球の管理神、メイギスだ。よろしくな」

 「はあ。よろしくお願いします」


 2人の自己紹介に対して俺は気のない返事しか返せなかった。

 世界の管理? 違う世界? 管理神?

 初めて聞く単語の数々に俺の頭はついていけそうにない。


 「あっちなみにワシは主神メルティオールという。よろしくのう」


 隣の老人まで神を名乗りだしてきた。

 だれか頭のいい人を呼んできてください。俺にはついていけません。


 「そういえば君の名前はなんだったかのう?」


 突然隣のおじいちゃんに名前を聞かれた。

 そういえば自分の自己紹介をまだしてなかったな。


 「名前ですか? 天上蒼真といいます」

 「では蒼真君。意識はハッキリしとるか? 視界はボヤついたりしとらんか?」

 「え? はい大丈夫です。あの、それより、本当に神様なんですか?」

 「おう! まじまじ。本物の神様だよ。まあ俺は時代によって呼ばれ方も変わってるがな。日本だとヤマタノオロチを倒したスサノオノミコトって言えばわかりやすいか? あれのモデル俺なんだよ」


 俺の質問にメイギスと名乗った男が返答してくれた。

 というかいきなり話の規模がでかすぎる。


 「急のことで理解に苦しむこととは思いますがどうかまずは私たちの話を聞いてもらえませんか?」

 「立ち話もなんじゃし、ほれ、そこで話すとしよう」


 おじいちゃんが案内してくれた先には8畳ほどの畳が敷かれた場所があり、畳の上にはちゃぶ台と人数分の座布団が置いてあった。


 というか今気づいたけどここはどこだ?

 俺は今、上も下も右も左も真っ白な空間にいる。自分が立っている場所すら床なのかわからない。

 目に見えない透明なガラス板の上を歩いているようだ。

 俺は3人に促されるがまま座布団に座った。


 「ほれ、お茶じゃよ」

 「あ、ありがとうございます」

 「ほれ。2人の分も」

 「ありがとうございます。メルティオール様」

 「サンキュっす。いやー、座布団に座んのなんて久しぶりっすわ」

 「元々はおぬしの管理世界の文化じゃろうが」

 「今は西洋の文化が浸透してきてますからね」


 おじいちゃんがどこからか出してきたお茶はなかなかおいしかった。

 ってそれどころじゃない。この状況の説明をしてもらわないと。


 「ではまずはわたくしから説明させていただきます。まず初めに説明しておきたいのですが、この世にはいくつもの世界が存在します。蒼真殿の住んでいたメイギス殿が管理なさっている地球もその一つ。そしてわたくしの管理している世界もその一つ。事の発端はわたくしの管理している世界で起きました。わたくしの管理している世界には蒼真殿が遭遇したミノタウロスのようなモンスターなどが生息しています」


 「蒼真にわかりやすく言うならファンタジーの世界だよ。ゲームとかで出てくるモンスターや魔法が実在する世界がアルテイシアの管理する世界なんだよ」

 「異なる様々な世界は神が関与しない限り基本的に行き来することはできません。しかし例外はあります。今回はその例外が起きてしまったのです」


 「俺たち神が穴ってよんでる現象だ。日本では神隠しって言った方がわかりやすいか」

 「あな?」

 「突然空間に文字通り黒い穴が開くのです。滅多に起きない現象なのですが今回この穴が私の管理世界に出来てしまったのです。情けない話ですが、私は穴が発生していることに気づくのに遅れてしまいました。今回発生した穴はミノタウロスの縄張りの中に発生してしまい、私が気づいた時には一頭のミノタウロスが穴に落ちてしまった後でした。私は急いで穴を塞ぎミノタウロスの移動先を突き止めました」


 「もうわかってるとは思うがその移動先が地球。もっと言えばおまえさんがいた山の頂上だったんだ。俺はアルテイシアから連絡を受けるまでミノタウロスの存在に気づかなくってなあ。本当に申し訳ない。地球は今メルティオール様が作った結界に覆われているからこんな事態は起こらないだろうと油断してたんだよ」


 「お菓子食うか? どら焼きもあるぞ」

 「いただきます」

 

 メルティオール様がこれまたどこから出したのかわからないが、ちゃぶ台の上にお菓子を置いてくれた。

 さっそくどら焼きを一ついただく。

 

 「メルティオール様、話の腰を折らないでくださいよ。とにかく、その結界に頼って怠けていたせいで対処に遅れてしまったんだ」

 「ふぁんで地球はけっふぁいにおおわれてるんでふは?」

 (なんで地球は結界に覆われてるんですか?)


 「口にものを入れたまま喋るなよ。えーとわかりやすく言えば地球では穴が大量に発生したからだ。それも出口の穴がな。日本でも昔妖怪がいたって言われてんだろ? あれのモデルは穴を通って他世界から来た異形の生物なんだよ。西洋のドラゴンとか吸血姫とかも。ヤマタノオロチもその一体で、俺が人間に化けて弱らせて元の世界に送り返したんだよ。だからスサノオノミコトなんで実在しねえの。なんかアマテラスとか言うねーちゃんがいるとか伝承があるけど俺にねーちゃんなんかいねえし」

 「日本の歴史家が卒倒しそうな話ですね」


 本当なら俺が今まで聞いてきた日本神話は元になった伝承の存在すらあやしくなるな。

 うん。聞かなかったことにしよう。

 

 「ちなみに日本に穴がたくさん発生したのはだな」

 「メイギス殿? そろそろ本題に入りたいのですが?」

 「おっとすまん。続けてくれ」

 

「少し話がそれてしまいましたね。ミノタウロスのことをメイギス殿に伝えたわたくしはメイギス殿と2人がかりでミノタウロスの居場所を探しました。しかし、わたくしたちがミノタウロスの居場所を突き止めたのは蒼真殿がミノタウロスと崖に落下した後でした」


 「お前さんがミノタウロスを倒してくれてなけりゃあもっと被害が広がるところだった。見つけてから対処するまでにも時間がかかるからよ。あ、ちなみにミノタウロスに殺された奴らはお前さん以外地球で新しい命に転生済みだ。金持ちの家の子とか希望する動物とか、出来るだけ要望を叶えて転生してもらった」

 「そうですか。みんな生まれ変われたんですね」

 「本来なら生まれ変わる必要はなかったんだがな。悪いことをしたよ本当。でだ、ミノタウロスが出現した説明は以上だ。次はお前さんの現状の説明だ」


 俺の現状? 2個目のどら焼き食べてるところだけど?


 「まず結論から言いまして、蒼真殿を日本に返すことはできません」

 「というか地球そのものに帰れない」

 「ぶふぉっ!」


 神々の突然のカミングアウトに思わず俺は食べていたどら焼きを吹いてしまった。


 「マジで?」

 

 




 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界転生ものとして読むと、転生までの導入が長すぎる気がします。 「そもそもミノタウロスと戦うのは転生後でも良かったのでは?」とか、「登山部の女の子どこ行った?」と思ってしまう。 ただミノ…
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