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魔導書と歩む異世界ライフ  作者: ムラマサ
ファウード騒乱編
35/78

戦う男たち

 この世界で一番数多く生息している生物、モンスター

 体の大半が魔力で構成されているモンスターは、特定の条件を満たすことで進化と言う現象を起こす。

 進化をするための条件は様々で、詳しく特定することは出来ない。


 同じ種族でも、個体ごとに千差万別に違いが出るのが進化なのだ。

 どんな姿を求めるか、どんな力を求めるか、進化する瞬間に求めたものがモンスターの進化先に強く影響するのだ。


 たとえば、ゴブリン。

 モンスターの中でも力が弱い分、こん棒などの武器を使ったり、複数のグループに分かれて狩りをするなど、モンスターの中では少し賢い部類に入るゴブリンは、進化後の姿が特に千差万別になりやすいモンスターだ。


 人間を観察したゴブリンは、武器の扱いに特化した進化をしやすい。

 例えば、人間の持つ剣に興味を持ったゴブリンはソードゴブリンに進化しやすい。

 弓に興味を持ったゴブリンはアーチャーゴブリンに進化しやすい。

 単純に力を求めるゴブリンはホブゴブリンに進化しやすい。


 過去にはドラゴンの生息地の近くにあったゴブリンの集落に、ドラゴンのような翼や爪の生えたドラゴンゴブリンが発見されたこともあった。 残念ながら、空は飛べなかったらしいが。

 いくらドラゴンに憧れても、翼の生えていないゴブリンに空を飛ぶ感覚がわかるはずがないので、空を飛べない見せかけの翼しか生やすことはできなかったようだ。


 このように、一度進化したモンスターは元のモンスターとはかけ離れた存在へと変化する。

 特に、ゴブリンのように知恵のあるモンスターは、人間のように様々なことを考えるため、特に変化が激しい。


 では、人間の言葉を理解できるほどの知能のあるモンスターが、敵に追い込まれている時に進化したらどうなるか?

 おそらく、自分を追い込んだ敵に対して有効的な進化を果たすことだろう。


 -----


 進化を遂げたスピリットイーターは、妖艶な美女へと姿を変えていた。

 より人間に近い見た目に進化したスピリットイーターは、衣服の類は身に着けておらず、その綺麗な体を惜しげもなく披露している。


 ただし、その体には生殖器にあたる器官は付いてなかった。

 大きく膨らんだ2つの胸にも、細長い足の間の股間部分にも、つるつるで何もついていなかった。

 非常に残念だ。見た目が人間よりでも、モンスターだから生殖器がいらないのか、はたまた生殖についての知識がなかったため再現できなかったのか。永遠の謎だな。


 敵が進化したこんな状況でも、ついついその体に視線が向いてしまうのは男なら当然だろう。

 周りの男どももみんな視線が釘付けになっている。

 俺もこの素晴らしい光景を生涯忘れることはないだろう。

 いいものを見せてもらった。大事な部分が付いてないのが残念だが。


 「いつまで見てるんですの! この変態!」

 「へぶ!?」


 いつの間にか俺に隣にキャロスティが来ていた。

 進化したスピリットイーターをガン見していた俺の顔に、キャロスティのビンタがさく裂した。

 なんで俺だけ叩くんだよ、キャロスティ?


 「違うんだよキャロスティ! これは男ならだれでも見入ってしまうというか。あ、いや、違くて。そう、敵を観察してたんだよ!」

 「あんな嘗め回すような目で敵を観察しますの?」


 俺そんな目してた?

 やばい。キャロスティの俺を見る目からどんどん光が消えて行っている。

 よし! 全力で誤魔化そう!


 俺は進化したスピリットイーターを指さして、宣言した。


 「ふん! ちょっと進化してグラマラスになったぐらいで俺たちに勝てると思うなよな! お前なんかすぐに燃やして灰にしてやるぜ!・・・・・灰にするのはちょっともったいないな」

 「何か仰いました?」

 「何でもありません!」


 だってあんな魅力的な体を灰にするのは、男ならだれだって少しはためらうって!

 わかって! 男心をわかってくれ! キャロスティ!


 「さっさと攻撃なさい」

 「サーイエッサー!! サーペントフレイム!」


 だめだ。今のキャロスティには逆らえない。

 あの冷たい目で見られると無条件に従ってしまう。


 俺が条件反射的に放ったサーペントフレイムは一直線に進化したスピリットイーターに向かって飛んで行った。

 が、さっきまでスピリットイーターを包んでいた茨がサーペントフレイムを打ち消してしまった。

 進化する前なら間違いなく燃えていたのに、サーペントフレイムを打ち消した茨には焦げ跡1つついていない。


 「やっぱり火属性の魔法に対する高い抵抗力を、進化することで会得したみたいだな」


 俺の魔法が効いていないのを見て、アルネロさんがそう呟いた。

 あの人、冷静に状況を分析しているふりをしているけど、さっきまでスピリットイーターの体を思いっきり凝視していたからね?


 「厄介な進化をしたみたいだな。作戦をどう練るか」


 ガンズさんも、スピリットイーターの進化にどう対処すべきか考えているようだ。

 スピリットイーターの体をジロジロ見てるだけにしか見えないが、きっと俺の勘違いだろう。

 よし! 俺も作戦を考えるとしよう。


 「ここは俺がスピリットイーターの動きを封じるから、そのすきにみんなで一斉に攻撃をしかけるってのはどうだ?」


 我ながらいいアイディアだと思う。

 しかし、俺の作戦を聞いてあちこちから苦情が飛んできた。


 「おいソーマ! それ、お前がスピリットイーターの体に抱き着きたいだけだろうが!」

 「失礼な! 自分の身を犠牲にしてでも頑張ろうという俺の気持ちが理解できないのか!」

 「ソーマ殿! そのような危険な役目を兄弟子殿にやらせるわけにはいきません! ここはこの護衛隊隊長ベガスにお任せください!」

 「いやいやいや! ここは元Sランクのわしに任せておけ!」

 「いや! ここはギルドマスターの俺がやるべきだ!」

 「言い出しっぺの俺がやりますよ!」


 己の身を犠牲にしてでも勝利に貢献したいという熱い思いの男たちが互いに自分こそが犠牲になると言い合って、戦場は一気に騒がしくなってしまった。


 「いいか! 俺がスピリットイーターの体に前から抱き着いてあの豊満な胸を堪能、じゃなくて、拘束するから、みんなはそのすきに俺に構わず攻撃してくれ!」

 「今本音が出ただろう、ソーマ!? だめだだめだ! そんな不純な気持ちじゃあこの大役は勤められん! 俺が胸を堪能、もとい、拘束する!」

 「いや俺が胸を拘束する!」

 「胸だけ拘束してどうすんだよ!」


 男たちの熱き犠牲心(?)が燃え上がる中、俺たちの足元から突然茨が大量に飛び出してきた。


 「「ぎゃああああああ!!」」


 だれが犠牲になるかで揉めていた俺たちは全員茨で吹き飛ばされた。

 ちなみに、キャロスティ含むガーディアンの女性メンバーと、護衛隊の女性陣、あとシャンティは事前に後方に避難していたようで全員無傷だ。

 

 気づいてたんなら教えてくれよ。


 「揃いも揃って何をしておりますの? そもそも抱き着いたところで最初の6人のように串刺しにされるだけでしょうに」

 「そうだった!」


 抱き着いても拘束する前に串刺しにされるだけだ。ダメじゃんこの作戦!

 落ち込む男性陣に対して、女性陣の視線が痛い!

 やめて! そんな目で俺を見ないで!


 「よ、よーし。改めて作戦を練り直そう」


 持ち直したアルネロさんが場の空気を良くしようと作戦の練り直しを提案した。

 でも、どうやって倒したものか。守りが硬すぎるんだよね。

 こうしてる間も、地面から次々と茨が飛び出して行っている。


 スピリットイーターの周りは茨で取り囲まれてしまった。

 これじゃ近づくこともできないな。

 すると、アルネロさんが作戦を思いついたようだ。


 「どんなに耐性を高めたところで、弱点を完全に克服するのは容易じゃない。ソーマの魔法よりも強力な火魔法をぶち込めば効くはすだ」

 「でも俺より強力な火魔法を使える人なんてこの場にいますか?」


 援軍に来てくれた陽動組のガーディアンに魔法使いは1人もいないみたいだし、護衛隊の人たちに魔法を使える人はいない。

 ヘイスさんは俺と同じく中級までの火魔法しか使えないみたいだし。

 俺が頭を悩ませていると、アルネロさんが自分を指さした。


 「俺がいるだろう?」

 「え!? アルネロさん、魔法が使えたんですか!?」

 「火属性にだけ適性があんだよ。火魔法なら上級までマスターしている。俺が高火力の魔法であいつを燃やす! お前らは俺に道を作れ!」


 アルネロさんが魔法を使えたとは。知らなかったな。

 ガンズさんの攻撃も防がれたことだし、アルネロさんの火魔法にかけるしかもう手はないか。

 魔法の発動準備に入ったアルネロさんにスピリットイーターまでの道を作る。

 簡単なことではないが、やるしかない。


 「行くぞ! わしに続け!」

 

 ガンズさんが先頭を走って、俺たちは最後の突撃を開始した。

 

 

 



 


 

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