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魔導書と歩む異世界ライフ  作者: ムラマサ
ファウード騒乱編
16/78

元貴族・キャロスティ

 ガーディアンギルドに登録してから数日が過ぎた。

 無事ガーディアンギルドに入った俺は、最下位のランクからスタートした。

 ガーディアンにはランクがあり、上からS<A<B<C<D<Eとなっている。

 入ったばかりの俺は当然Eランクだ。


 Eランクは、街の雑用の仕事が基本になる。

 この数日で受けたクエストは、荷物運びや掃除、依頼主の仕事の手伝いなどだ。

 今日も特に予定はないので、ガーディアンギルドで適当なクエストを受けようと思っている。


 「俺があの時オーガの気を引き付けてたから倒せたんだろうが!」

 「お前が突進したから、弓を射ることが出来なかったんだよ!」

 「「やんのかてめえ!」」


 今日もギルドは平常運転だ。

 このやかましさにも慣れてきた。

 俺が登録をしたあの日、騒ぎを起こしたミランダさんは、罰としてギルドマスターのアルネロさんに数日間の謹慎処分を言い渡されたらしい。

 処分を受ける前に、ミランダさんからはちゃんと謝罪もしてもらえたので今は恨んではいない。


 騒がしいギルドの中を通り過ぎ、俺はクエストが貼ってあるクエストボードにEランク向けのクエストがないか探していたのだが、なかなか見つからない。

 すると、最近よくお世話になっている人に後ろから話しかけられた。

 

 「ようソーマ。今日はEランク向けのクエストはまだねえぞ。さっき見たからな」


 俺がギルドに登録した日、最初の乱闘を沈めてくれたドワーフの戦士ガンズさんが、自慢の髭を撫でながら、暇なら飲みに付き合えと誘ってきた。

 

 このガンズさんはギルドの古株で、年齢は200歳を超えているらしい。

 ドワーフの平均寿命は300歳らしく、ガンズさんはドワーフの中でも結構高齢だ。

 このギルドには80年ほど前から通っているらしい。

 お金の蓄えは十分あるので、クエストはたまにしか受けないそうなのだが、酒を飲むためにほぼ毎日ギルドに足を運んでいるそうだ。


 今更だが、ギルドではガーディアンが疲れを癒すために、飲食物の販売も行われている。

 実際は、酒好きが多いガーディアンに、お金を落としてもらうために始めたことらしい。

 

 俺はガンズさんに、ガーディアンとしての心得や、モンスターの生態など、役立つ情報を色々教えてもらっている。

 ガンズさんはどんどん酒を胃袋に流し込みながら、上機嫌に話を続けてくれた。


 「あら? 翁ではございませんか。今日もお元気そうでなによりですわ」


 ガンズさんが30杯目のビールのジョッキを空にした頃、一人の女性がガンズさんに話しかけてきた。


 「おう。キャロスティ。たまにはお前も飲めよ」

 「遠慮しておきますわ。翁と一緒では飲みつぶれてしまいますから」

 

 キャロスティと呼ばれた女性は、俺とガンズさんが飲んでいた3人がけのテーブルの、余っていた最後の椅子に座ってきた。


 「あなたがソーマさんですね。翁からよく話を聞きますわ、期待の新人だと。翁が人を誉めることはあまりありませんから、あなたのことが気になってましたの。お会いできて光栄ですわ」


 とても丁寧な言葉使いだが、その見た目は、一度見たら忘れられないほど印象的だ。

 金髪縦ロールと言う派手な髪形に、小顔で可愛らしい童顔。

 フリルの付いた、ドレスのような赤い服を着ており、身長はやや低めだが、身長と比例して、胸の方はドレスをこれでもかと盛り上げている。

 

 動作の一つ一つが上品で、洗練されているのがわかる。

 まさに貴族のお嬢様と言った雰囲気を醸し出している。

 このギルドにはものすごく不釣り合いだ。


 「お前らは合うのは初めてか? ソーマ、こいつはキャロスティ。お前より半年ほど先にガーディアンになったやつで、お前と同じ魔法使いだ。」

 「キャロスティと申します。元貴族ですが、今は家名を持たない平民ですわ。同じガーディアンとして気軽に接してくださいませ」

 「どうも。ソーマです」


 この世界に来てから、こんなに丁寧に挨拶する人に会うのは初めてだ。

 俺の予想通り貴族だったみたいだが、家名を名乗れないと言っているから、おそらく没落した貴族の娘なのだろう。


 「ガンズさんとキャロスティさんは仲がいいんですね」

 「キャロスティで構いませんわ。その代わりにわたくしもあなたのことをソーマと呼ばせてもらってもよろしいかしら?」

 「もちろん。構わないよ」

 「ありがとうございます。翁には、わたくしがガーディアンに入ったばかりのころからお世話になっておりますの。わたくしの恩人ですわ」

 「よせよ。ただの年寄りのお節介だ」

 「そのお節介に助けられたからこそ、わたくしは今もガーディアンを続けられていますわ」

 「俺もガンズさんには色々とお世話になってますよ」


 その後、キャロスティも加えた3人で雑談を続けた。

 しばらくしてから、クエストボードを見に行ったがEランクのクエストはまだ張ってないようだ。

 今日はクエストを受けるのは無理かな。


 「クエストを探しているのなら、これなどいかがかしら?」


 後ろから近付いてきたキャロスティが1枚の依頼書を見せて来た。

 依頼書にはこう書かれていた。


 ニードルビーのハチミツの回収 ランク:D

 報酬:銀貨10枚


 Dランクモンスター、ニードルビーの巣からハチミツを回収してもらいたい。

 ニードルビーのハチミツを使った料理を店で提供しているのだか、在庫が切れかかっているので補充したい。


 Dランクモンスターニードルビー、まだ戦ったことのないモンスターだ。

 確か、お尻の棘を連続して飛ばしてくる30㎝ほどの大きさの蜂型モンスターだ。


 モンスターには、ガーディアンギルドが定めたランクがある。

 そのモンスターの脅威度や凶暴性などから、ギルドがランク付けをするのだ。

 Dランクとなると、今の俺のランクより1個上だな。


 「俺のランクはEなんだけど、このクエスト受けられるの?」

 「問題ありませんわ。Dランクのわたくしと臨時でパーティを組めば、ソーマでもCランクのクエストを受けられますのよ」

 「自分よりランクの高い人と組むと、上のランクのクエストを受けられるのか。知らなかった」

 「受けられるのは1個上までですけどね。わたくしこのクエストが気になっていたのですが、わたくし1人では手に余ると思って受けるのを諦めておりましたの。でも、ソーマと一緒なら心強いですわ」


 ガーディアンは気の合うメンバーとチームを組むことがある。それをパーティと言う。

 俺はまだパーティを組んだことはまだないが、大抵のガーディアンはDランクぐらいからパーティを組みだす。互いの弱点をカバーし合い、より生存率を上げるのはガーディアンには当たり前のことでもある。

 

 また、クエストを達成するまでの間だけパーティを組むことを臨時パーティと言う。メンバーの変動が少ない固定のパーティを組むまで、複数のパーティやソロのガーディアンと臨時パーティを組むのは珍しいことではない。

 

 パーティに慣れるためにも、ここでキャロスティと臨時パーティを組むのも悪くないかも。

 報酬も、2人で分けたら1人辺り銀貨5枚になるし。

 Eランクのクエストは良くても銀貨3枚ぐらいの報酬しか出ないからな。


 「そうだな。どうせ暇だし。一緒にこのクエスト受けようか?」

 「まあ! 引き受けて下さるの? うれしいですわ。わたくしパーティを組むのは初めてですの。よろしくお願いしますわ、ソーマ」


 お互い初めてのパーティだったみたいだ。

 取り合えず、依頼書を受付にいたミーティさんの所まで持って行って、無事クエストを受注した。

 ミーティさんはまだこの間のことを引きずっているようで、顔を合わせるたびに謝罪してくる。

 俺はもう気にしてないし、いい加減吹っ切ってもらいたいんだけとね。

 俺たちはギルドを出る前に、一緒にクエストに行くことを、ガンズさんに報告しておくことにした。


 「ガンズさん。キャロスティと臨時でパーティを組みました。これからクエストに言ってきます」

 「そうか。まあ頑張ってこいや」

 「はい。頑張りますわ。翁もお酒はほどほどになさいましてね?」

 

 俺とキャロスティは早速ニードルビーが出没するファウードから北北西にある、ガデル湖に向かった。


 -----


 蒼真とキャロスティがギルドを出た後、1人になったガンズさんに数人のガーディアンが近寄ってきた。

 

 「ガンズさん。あの2人パーティ組んだのかい?」

 「ああ。これから一緒にガデル湖まで行くそうだ」

 「クックック。ガンズさんも人が悪いな。どうせキャロスティの2つ名をソーマの奴に教えてないんだろう?」

 「いいんだよ。ソーマぐらいの年の奴には色々体験させてやった方があいつのためになんだよ」

 「きっとボロボロになって帰ってくるぜ」

 「ああ、だろうな」

 「まあ、新人同士いい経験にはなるだろうよ」


 その場に集まっていたメンバーは、全員いたずらを仕掛けた子供のような顔をして、酒飲みを続けた。


 

 

 


 

 

 

 

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