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魔導書と歩む異世界ライフ  作者: ムラマサ
ファウード騒乱編
13/78

弟子

 「じゃあ、この水晶に触れてみて。それで君の適性がわかるから」


 いよいよか。

 適性なしの結果が待ってる気しかしないけど、水晶を食い入るように見ているリンカちゃんの手前、やっぱなしなんて言えないよな。

 よし! 覚悟を決めたぞ! いざ!


 俺はゆっくりと水晶に手を触れた。

 すると、水晶の中に煙のようなものが出てきて、様々な色に変化してから消えた。

 なんか、思っていたより特に激しい変化とかはなかったな。


 「あら? これは」


 クーティさんの予想通りのこの反応。

 やっぱり適性なしか。


 「すごいです! ソーマさん! 煙が何色にも変化しましたよ!」

 「うーん。これはすごいわね。火に土に雷と固有魔法の反応が出た。4つも適性がある人はなかなかいないわよ? 普通は2つぐらいだもの」

 「え? 適性あったんですか?」

 「あったわよ。見てなかったの? 水晶の中の煙の色の変化でその人の魔法適性がわかるの。君は4色に変化した。それぞれの色が表す属性は火、土、雷、固有よ」

 「ソーマさんも固有魔法の適性があったんですね。私とお揃いですね!」


 えーっと。なんで適性があったんだ?

 俺が魔法を使えるのは魔導書のおかげだよな? 魔法の存在しない地球生まれの俺に魔法の適性があるのか?

 わからん。


 (ピンポンパンポーン。こちらメイギス。こちらメイギス。蒼真、聞こえてるか?)

 「うおわ!」

 「ど、どうしたの急に?」

 「どうかしましかた? ソーマさん」

 「あ、いえ何でもないです。ちょっとトイレに行ってもいいですかね」

 「ええ。トイレはあっちよ。・・・本当に大丈夫?」

 「大丈夫です。じゃ!」


 突然俺の脳内に最近聞いたばかりの声が響いた。

 つい大声を出してしまったが、トイレでなんとか誤魔化した。・・・誤魔化せたよな?

 俺は飛び込むようにトイレに入った。


 (おーい? 聞こえてるかー?)

 (聞こえてますよ! 急になんなんですか! びっくりした)

 (いやー、アルテイシアの所に遊びに行ったら、お前が自分に魔法の適性があることに疑問を抱いてるみたいだから教えてやろうと思って)

 (教えてもらえるんですか? と言うかこんな風に連絡とか取っていいんですか?)

 (細かいこと言うなよ。お前が異世界にいる時点で色々と例外なんだからよ)

 (この男性が天上蒼真君ですか。色々と苦労をなさっているようで、同情します)


 あれ?メイギス様のほかに、聞き覚えのない男性の声も頭に響いてくるぞ?


 (おい、ノワール。入ってくるなよ)

 (いいじゃないですか。人間と気軽に話せる機会など、滅多にないのですし)

 (あのー、どちら様ですか?)

 (初めまして。私はメイギス先輩と同じ、異世界の管理神・ノワールと申します。蒼真君はメイギス先輩に振り回されて苦労しているようで)

 (なんだと! ノワール!)

 (分かりますか!)

 (おい! 蒼真!)

 (私も先輩にはよく振り回されているので気持ちはよく分かりますよ。この間もバンドのメンバーが一人抜けたから代わりに私に入れと無茶を言ってきまして。私は先輩ほど暇じゃないのに)

 (でも最終的には入ったじゃねえか! 練習にも週一で出るって約束だろ)

 (もちろん。約束は守りますが、先輩に強引に入れられたことに変わりはありませんよ?)

 (そ、それはそうと蒼真の疑問に答えてやらねえとな)

 (バンドに入る代わりに、新しいドラムを買う約束は守ってもらいますからね?)

 (わ、わかってるよ。貯金を崩してなんとか買うからよ。今は蒼真の相手が先だ。な?)

 (言質は取りましたよ? 先輩)

 (あんな約束するんじゃなかった)

 (それで蒼真君の疑問でしたね?)

 (あ、話終わりました?)

 (待たせてすまなかったな。地球生まれのお前が魔法の適性を持っているのは、ずばり!)

 (ずばり?)

 (最初、地球にも魔力を作ろうとしたんだけど、うっかり作るの忘れて魔力のない世界になっちまったんだよな。魔力を作るつもりだったから、人間の進化元の生物には魔力を操作する体内器官があったんだが、魔法を使わない生活が長かったから進化しながら、魔力を操作する体内器官が無くなっていったんだ。必要のない器官だから。でも適性だけは残った。適性は別に体の構成には影響ないしな。)

 (しょうもない理由ですね)

 (うるせえ! ノワール)

 (じゃあ俺に適正が沢山あるのは?)

 (お前が元々持ってたものだ)

 (俺、魔法使いの才能があったんですね。異世界に行かなきゃわからない才能だったな)

 (ちなみに、お前が持ってる魔導書で覚えられる魔法はお前に適正のある魔法だけだ。メルティオール様はお前に魔法の適性があるのを見抜いてたから、魔導書をお前に渡したんだ)

 (そうだったんですね)

 (これで疑問は解決したな?)

 (はい。ありがとうございます)

 (じゃ! これで通信終了ってことで)

 (先輩、具体的にはいつぐらいに新しいドラムを買ってもらえるんですか?)

 (うるせえ!)


 ここまでで、神様との通信は終了した。


 -----


 「あ、出てきた」

 「トイレ長かったわね。駆け込んで行ったけど、そんなにお腹の調子が悪かったの?」

 「ま、まあちょっと」


 神様たちとの通信が終わった後、トイレから出た俺をクーティさんとリンカちゃんが待っていてくれた。

 実際には何もしてないんだけど、結構恥ずかしいな。


 「それでね? ソーマ君。待ってる間にリンカちゃんと話してたんだけど、あなた私の弟子にならない?」

 「え! 弟子ですか?」

 「こんなに適性のある子は滅多にいないのよ? あなたには才能があるわ。よければ私が指導してあげる」


 うーん。

 クーティさんの気持ちはありがたいが、俺は魔法に関しては、モンスターを倒してMDを稼げば、練習とかしなくても魔法を覚えられるんだよな。

 でも魔法に関する知識を身に着けるのは悪いことじゃないよな。さっき受けた講座でも、知らないことばかりだったし。

 うん。せっかくの申し出だ。ありがたくお世話になろう。

 

 「俺でよければ、よろしくお願いします」

 「うん。こちらこそよろしくね」

 「わーい! ソーマさんも今日からクーティさんのお弟子さんですね。私の弟弟子です」

 「おとうとでし? リンカちゃんもクーティさんの弟子なの?」

 「この子も、火と水と固有魔法の適性を持ってるからね。私が指導してるの」


 そうだった。

 何気にリンカちゃんも魔法の才能が高いんだった。

 これでリンカちゃんと一緒にいる時間が伸びるな。

 ドクさんに殺されないよう、より一層の注意が必要だ。


 本格的な指導はまた後日にすることになって、今日はもう家に帰ることになった。

 家に帰った後、俺は風呂のお湯を沸かして、リンカちゃんは夕飯を作ってくれた。

 食事のあと、ドクさんに今日の俺の魔法適性の話とクーティさんの弟子になったことを報告しておいた。


 「お前に魔法の才能ねえ」

 「本当なんだよ? すごかったんだよ。あんなに煙がカラフルなの初めて見たもん」

 「まあそれは別に構わねえが。クーティの弟子になったんなら、店の手伝いはどうすんだよ?」

 「あ! 忘れてましたね」

 「仕方ねえな。講義の日は手伝いは休みにするか。才能があるのに手伝いを優先させるのはもったいねえからな」

 「すみません」

 「まあ、講義がんばれよ」


 ドクさんのご厚意で、講義のある日は仕事の手伝いは休みにしてもらえた。

 明日は仕事の手伝い、がんばらないとな


 -----


 次の日

 朝早くからドクさんにたたき起こされた俺は、お店の掃除をしていた。

 なにもこんなに朝早くから掃除しなくてもいいと思うんだけどな。

 ちなみにドクさんは、もう地下の工房で薬を作ってる。

 働き者だなあ。


 掃除が終わると、リンカちゃんが朝食に呼びに来た。

 3人で食事をすませると、すぐにお店を開いた。

 地球では大抵のお店は10時くらいに開店するが、ドクさんは朝の7時にはお店を開いてるらしい。

 店番をリンカちゃんに任せて、俺はドクさんに連れられて地下の工房に入った。

 

 「おめえには、薬の調合を手伝ってもらう。まあ俺の指示通りに動けばいい」

 「はい。よろしくお願いします」

 「まあ、そんな硬くなるな。別に難しいことは言わねえからよ」


 それからドクさんの指示通りに作業をこなした。

 と言っても、俺はドクさんに言われた薬草や木の実を運ぶだけの簡単な仕事だったけど。

 ただ突っ立っていても暇なので、指示のないときはドクさんの作業している姿を見ていた。


 流れるような動きで、様々な材料を調合していくドクさんは、まさにプロって感じだった。

 ドクさんの作業している姿を見ていると、俺の中にある考えが浮かんできた。


 午後になり、昼食を食べた後は、薬や材料の在庫確認を行った。

 リンカちゃんはまた店番。ドクさんは午前に続き工房で薬を作っている。

 昨日俺とリンカちゃんが出かけたから、ずっと店番をしていて薬を作れなかったので、ちょっと忙しいらしい。

 在庫確認も結構大変だったけどね。

 

 夕方になり、その日の営業は終了した。

 あまり客の姿を見た覚えがないのだが、経営は大丈夫なのだろうか?

 ドクさんに聞いてみると、店まで直接薬を買いに来る客はそんなに多くないらしい。

 ファウードの診療所などに薬を卸すのが一番の収入とのこと。

 経営は心配ないと怒られた。


 夕飯を食べた後、ドクさんは明日診療所に届ける薬の最終チェックをするために、地下の工房に下りて行った。

 俺は今日1日考えていたことをドクさんに伝えるべく、ドクさんの後を追って工房に入った。

 

 「ん? なんか用か」

 「ドクさんにお願いがありまして」

 「泊めてやってるのにまだ要望があんのか? 全く。言うだけ言ってみろ」

 「俺を弟子にしてもらえませんか?」

 「ああ?」


 俺の告白にドクさんは少し驚いていた。

 今日1日ドクさんの働きぶりを見て、そして俺が今後街を出て旅をしたいと思っていることも含めて,

色々考えた末に、ぜひ俺にも調合の基礎を叩き込んでほしいと思ったのだ。


 旅先では何があるか分からない。

 いざという時に、薬の知識があれば、生存確率は上がるだろう。そう思ったのだ。

 俺は自分の考えをドクさんに正直に話した。


 「はあー。記憶喪失のくせに旅に出たいとか。分かってんのか? お前が思っているほど甘いもんじゃねえぞ?」

 「それでも、世界を旅してみたいんです」


 俺の話を聞いたドクさんは、うつむいて、考えだした。

 少しして、考えがまとまったドクさんが顔を上げて、俺の顔を真剣に見ながら口を開いた。


 「・・・・・俺にもそういう時期はあった。つらい思いもしたが、そういうのを全部引っくるめて、今の俺がいる。旅をしていたころは毎日が新鮮だった。お前にも、俺と同じように様々な経験が必要かもな。・・・・分かった。基礎ぐらいなら俺が叩き込んでやる」

 「ドクさん! ありがとうございます」

 「ただし! 途中で逃げだすことは許さねえからな! 覚悟しろよ。俺の初弟子になるんだからよ」

 「はい!」


 今日、俺は2人の師匠と出会った。

 この出会いで得るものは大きいはずだ。

 俺はこの街での1日1日を大切にして、今後に生かしていくことを決意した。

 


 

 

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