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魔導書と歩む異世界ライフ  作者: ムラマサ
ファウード騒乱編
10/78

服職人・ダリア

 森を出るために歩き出して、3時間が経過。

 ドクさんの話ではもうすぐ森から出られるとのこと。

 ちなみにここまでにゴブリンとは6回遭遇した。一時間に2回のペースだ。


 ドクさんの話では、以前は10日に1回ぐらいのペースでしかゴブリンとは遭遇しなかったらしい。

 明らかに異常事態だ。


 「街に戻ったら衛兵に報告しておくか。調査ぐらいはしといた方がいいだろう」

 「以前よりかなり数が増えているんですよね? もっと急いで対処した方がいいんじゃないですか?」

 「元々ゴブリンは突然数を増やすことがあるんだよ。で、気づいたらまた数が元に戻ってる。ってのがたまにある。あいつら性欲旺盛だからな。それに所詮ゴブリンだ。いくらでも対処の仕様はある」

 「そんなもんなんですか。もっと大事かと思ってました」

 「たかがゴブリンだろうが。現に俺は剣じゃなくて、じゃまな蔦とかを切る用に持ってきていた鉈でゴブリン倒してるだろ。お前だって素手で何匹か仕留めただろうが」


 どうやら、ゴブリンはこの世界のモンスターじゃ、ワースト1位を争うぐらい弱いモンスターらしいな。

 俺も、ドクさんの陰に隠れて何匹か仕留めたが、見た目の割にちょっと力が強い程度の脅威しか感じてない。

 まあMDは少し溜まったけどさ。

 2個目の魔法が出るのが楽しみだ。


 「ようやく森の終わりが見えたぜ」

 「おー、本当だ。やっと出られる」


 この世界に来て2日目にしてようやく森以外の地形が見えた。

 少し歩いて森から出ると、草原に着いた。

 森とは打って変わって見晴らしがいい。視界を遮るものが少ない。

 ずっと森の中にいたからすごい開放感を感じる。


 「街はあっちだ」


 ドクさんを先頭に今度は草原を歩く。

 森よりはだいぶ歩きやすい。

 途中、俺たち以外に歩いている人や馬車で移動している人、馬に乗っている人もいた。

 どこの世界も移動手段は似たようなものみたいだな。


 「そういえば今向かっている街の名前ってなんですか?」

 「そう言えば言ってなかったな。第二指定都市・通商ファウードだ」

 「第二指定都市?」


 聞いたことのない言葉だ。

 俺が首をかしげていると、リンカちゃんが答えを教えてくれた。

 

 「この国で二番目に栄えている都市って王様に認められているってことだよ。通商っていうのは商人が大勢通ることからついたの」 

 「ファウードから先には王都ジンを含めて大都市が3つあるから、商人も含めて人が大勢ファウードに立ち寄るんだ」


 へー、賑やかそうな街だな。

 今から楽しみになってきた。

 そう言えば、ドクさんが王都と言ったが、俺はこの国の名前も知らなかった。

 

 「そういえば俺、まだこの国の名前知らなかった」

 「もっと早く気づけよ。いいか? この国の名前はエクス・クウォード王国だ。初代国王エクス様と、国が出来る前に、この辺り一帯を支配していた聖獣クウォードから取って付けた名だ」

 「聖獣!? そんなのもいるんですか。その聖獣はまだこの国にいるんですか?」

 「いや? 国が出来た時にエクス様に土地を譲ってどっかに行ったらしいぞ? その後の目撃例はないって話だ」

 「そうなんですか」


 せっかく異世界に来たのだから、一度ぐらい聖獣を拝んでみたいな。

 この世界での生活に慣れてきたら、旅にでも出るか。

 異世界を旅するなんて、ロマンがあっていいよね。


 -----


 それからしばらく3人で街に向かって歩いた。

 時々馬車に追い抜かれたりするが、歩いているのは俺たち3人だけだ。


 ただ、すれ違う瞬間に馬車に乗っている人から視線を感じる。

 やっぱりこの服は目立っちゃうかな?

 でも服はこの1着しかないしな。

 街に着いたらドクさんに服を貸してもらおうかな。サイズ合わないだろうけど。

 

 たまにはのんびりと草原を歩くのも悪くないね。

 元々自然に囲まれてのんびりとするのが好きだから、山登りが趣味になったんだし、暇なときに草原を散歩でもしてみようかな?


 俺が草原の魅力に魅せられていると、俺たちを追い越した3台の馬車が前方で急に止まった。

 不審に思っていると先頭の馬車から誰か降りてきた。

 一人だけ馬車から降りてきた人物は、こっちに向かって手を振りながら近づいてくる。


 「あー! やっぱりドクじゃなーい」

 「ダリアか。珍しいな。町の外で会うなんて」

 「今仕入れから戻ってきたとこなのよ。あなたの方はまた森に行ってたの?」

 「ああ。今回はちょっと長引いちまったがな」

 「ふーん」


 ドクさんと親しそうに話している女性はあちこちに切れ目、スリットっていうのか? が入っている変わった服を着ていた。


 服の切れ目から素肌が見えてとても色っぽい。腰のラインや、足の細さがわかるように絶妙な配置で切れ目が入っていて、この人のボディラインがわかる。ボン・キュ・ボンのナイスバディだ。


 どうやらダリアさんはファウードで服屋を営んでいるらしい。

 今はよその街で仕入れた服や生地を持ってファウードに帰るところだったようだ。


 「ねえドク? この子は?」

 「森で拾ったんだ」


 拾ったって。

 俺はペットか。

 ダリアさんはなぜか俺のことをやたら見てくる。

 品定めでもしているように、俺の体全体を見渡してくる。


 「ねえ君ー。お名前はー?」

 「蒼真です」


 俺が自己紹介をすると、ダリアさんは一瞬で距離を詰めて俺の腕に抱き着いてきた。


 「え! ちょっと」

 「滑らかな生地ねー。でも頑丈そう。デザインも斬新ねー。動きやすさを重視した感じかしらー。いいわー。とってもいい。新しいデザインが浮かんできそう」


 ダリアさんが見ていたのは俺じゃなくて俺の服だったみたいだ。ちょっと残念。

 腕に抱き着きながらうっとりとした表情で俺の服を観察しているダリアさん。


 俺の腕に柔らかい感触が! 大きいとは思っていたがここまでデカいとは。

 俺は引きはがすのをやめて、ダリアさんが満足するまでこの状態を維持することにした。

 至福のひと時だ。

 

 「ダリアさん! ソーマさんが困ってますから離れてください!」

 「あら、ごめんなさいね? 珍しいものだからつい、ね」


 ああ! リンカちゃんの優しさが俺の幸せを奪っていく。

 ダリアさんを引きはがしたリンカちゃんは、俺とダリアさんの間に手を広げて立ちふさがった。

 それでもダリアさんは、間にリンカちゃんを挟んだまま俺に話しかけてきた。


 「ねえソーマ君? その服どこで買ったの?」


 やっぱり来たか。この質問。

 さてどう誤魔化そうか。

 ここはやっぱり覚えてません、で行こう。


 「実は」

 「二ホンの倒産用貧店で買ったそうです」

 

 リンカちゃーん!!

 そう言えばリンカちゃんにはどこで服を買ったか間違えて教えてたんだっけ。

 にしても倒産用貧店って、ひどい間違いだな。どこに需要があるんだ?


 「二ホン? 聞いたことないわね?」

 「すごく遠い国だそうです」

 「私も一着ほしいのだけど?」

 

 ダリアさんはまだあきらめるつもりがないようだ。

 でも俺だってもう手に入れるのは無理だしな。


 「これ以外の服は、俺にももう手に入れられないですね」

 「そう残念ね」


 ダリアさんがあきらめかけたその時、ドクさんから意外な提案が出た。


 「じゃあソーマが着ている服をダリアが買いとりゃあいいじゃねえか」

 「それよ! ドク冴えてるじゃない」

 「俺何も着るものが無くなるじゃないですか!」

 「ダリアの馬車に積んである服を代わりに貰えばいいじゃねえか。どうせその服は目立つから早めに着替えといた方がいいと思ってたんだ」

 「そうね。馬車に積んである服なら何でも好きなものを一着あげるわ。それに金貨10枚も付けるわよ」

 「太っ腹じゃねえか、ダリア」

 「それだけの価値がある服なのよ」

 「俺にはわからんね」


 うーん。どうしようか?

 俺は悩んだ末に、結局服を売ることにした。

 俺はダリアさんに言われるがまま、馬車に積んであった服の中から黒の上下セットの服を貰った。

 ついでに金貨10枚のうちの3枚を使って替えの服なども買っておいた。


 「まいどありー。服が欲しいときは私の店に来てね」

 「ついでにお前の馬車で街まで運んでくれよ」

 「あら? 別にいいわよ」


 ダリアさんのご厚意で街まで馬車で運んでもらえることになった。

 道中、馬車の中でダリアさんに森であった話をした。


 「へー、ゴブリンの大繁殖ね。まあたまにあるわよね。それより良かったわねリンカちゃん。困ったときにナイト様が来てくれて」

 「そうなんです。ソーマさんかっこよかったです」


 ありがとうリンカちゃん。

 でもそれ以上俺を誉めないでね?

 君の隣のお父さんが鬼の形相で俺を睨んでいるから。

 

 そう言えば、昨日のことで思い出したがリンカちゃんは昨日魔法を使っていたが、魔法触媒を持っているんだろうか?


 「昨日リンカちゃん魔法使ってたけど、魔法触媒を持ってるの?」

 「うん!」


 リンカちゃんは服の中からネックレスを取り出した。

 俺の指輪より少しだけ大きい赤い魔石が付いてる以外は特に装飾もない質素なネックレスだ。


 「これ、お母さんがお守りにって、買ってくれたの。この大きさでも初級魔法ぐらいなら使えるんだよ」

 「そうなんだ。赤色なのは火属性に関係あるの?」

 「赤色は火属性と相性がいいんだよ」

 「結構常識だと思うんだけど。ソーマ君本当に記憶喪失なのね」


 魔石の色が属性との相性に関係するのか。

 じゃあ白銀色の俺の指輪の魔石はなんの属性なんだろう?


 「あら? ソーマ君も魔石持ってるのね。でもこんな色の魔石は見たことないわ。なんの属性かしら」

 「不純物が多くて色が鈍ってるだけだろ。それより、そろそろ街に着くんじゃねえか?」


 ダリアさんが俺の指輪の魔石に興味を抱いたが、ドクさんがすかさずフォローしてくれた。

 俺も今度からそう言って誤魔化そう。

 

 俺は馬車の窓から外の光景を覗き込んだ。

 20メートル近い高さの石壁がそびえている。

 頑丈そうなその石壁の端は、馬車からは見えない。

 俺たちの乗ってる馬車は、木製の門の手前で止まった。

 鎧を着こんだ男性二人が馬車に近づいてくる。

 門の警備をしている兵士だろう。

 

 「どうも。身分証を見せてもらえますか?」

 

 みんなは自分の身分証を兵士に見せていき、俺の順番が回ってきた。


 「すみません。身分証は持ってません」

 「では。通行料として銀貨2枚いただきます」


 俺はダリアさんから替えの服を買ったときにいただいた、お釣りの銀貨2枚を兵士に渡した。


 「はい。たしかにいただきました。本来ならこの後詰め所に来てもらって、いくつか質問をさせていただくのですが、ダリアさんが一緒ですし、今回は特別になしとします」

 「ありがとうございます」


 どうやらダリアさんはこの町では有名人の様だ。

 ダリアさんと一緒にいるというだけで、俺が危険人物ではないと判断されたようだ。


 その後、愛想のいい兵士さんは笑顔で馬車を通してくれた。

 馬車は門を通ってファウードに入った。

 俺は遂に人の住む街にたどり着いたのだ。

 



 

 


 






 今回で10話目の節目になります。

 ここまで続けられたのも、皆さんのおかげです。

 人気のない作品ですが、これからも手の空いた時にでも、読んでいただけると嬉しいです。

 これから、本格的に異世界での蒼真の生活もスタートしていくので、ぜひ楽しみにしていてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >元々自然に囲まれてのんびりとするのが好きだから、山登りが趣味になったんだし、暇なときに草原を散歩でもしてみようかな? 主人公の設定が1話から継続していて良い文章に思えました。 最初に山…
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