山岡有紀子の日記(1) 六月十一日 (金)
事故に遭ったのは二日前らしい。正直、あんまり覚えてないな。それでもこうして日記を書くことにしたのは、小さい頃からの習慣だから。一日の締めくくりみたいに、何があったのか書いた方が落ち着ける気がする。まだ体力はそんなにないし、体中が痛い。スマホでちょちょっと書くだけでもいいのに、病院では使えないみたい・・、残念。
今日は、静岡からお母さんが来てくれた。病室に入ってきてすぐに泣き出しちゃうもんだから、同じ部屋の人に見られて恥ずかしすぎた。もちろん、わたしを心配してくれてるからで、とってもありがたいけど。
そうだ、この日記は、誰にも見せるつもりはありません。ナースの若い子にノートをもらって書いているんだけど、これをコッソリ覗いている人がいるなら、すぐに閉じてください。誰かに見せるために書くわけじゃないし、体のリハビリもかねて書いてるだけだから。
事故に遭ったのは二日前で、昼の二時くらいだったみたい。わたしの乗っていたタクシーが急に道を逸れて、そこからはあんまり覚えてない。猫でも飛び出してきて、それを避けようとしたのかな。男の人と一緒だったらしいけど、それは誰? ナリタケンタロウって言われても、誰それ?って感じ。でも、写真を見せてもらったらめっちゃカッコよくてビックリしちゃったな。残念だったけど、そんなカッコいい人知りませんって答えたし。彼氏ですって言えばよかったかな。後悔。でも、わたしは正直者なんだなぁ・・。
やっぱり体がしんどい。腕をあげているのも。
今日はこれくらいにしよう。明日からも、時間はたっぷりあるんだし。