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初の前線

「三百四歩兵小隊、小隊長、ライアン・ボスト少尉です」

「よろしく、少尉殿。君のお父上には世話になった、前線では我々のバックアップに全力を尽くしてくれ」

「はい、了解しました。ところで報告書についてなんですが」

大尉は報告書と聞くや否や怪訝な顔を見せる。ライアン少尉の言葉を最後まできくことなく遮ると、「豚に同情する必要はない。君も前線で敵に銃を向けるなら余計な感傷は捨てるんだ」冷たく淡々と決まりきった文句を告げて隊列に戻ってしまう大尉。

ライアン少尉は何かを言いたげにするも、上官に口応えするなど言語道断であることも理解している。短く空を見上げてなんと呑気な空なんだと彼は思っているのだろう。周りには二千人を超える大六師団の増援部隊が凛と整列している。円形に中心に立つ将軍を囲むように整列した彼らは将軍の熱い言葉に耳を傾ける。なかには冗談半分で聞いてるものも当然いるだろう。

「神は我々の傍にいる!」将軍が言った。

その言葉を馬鹿らしいとライアン少尉は内心で納得していた。

「十字をきってる暇があったら本を読め」ライアン少尉は誰にも聴こえないように小さく、将軍に向けて言った。力があるのに、下士官一人コントロールできない彼に、そして無力な自分に腹を立てていたのだ。

スノーフォールの要所、工場、ビルが煙を巻き上げながら倒壊していく。一分の暇も与えず爆発音が兵士の耳をつんざくのだ。何度も何度も。ライアン少尉は壁越しに敵の有無を確認すると合図する。それに応えた兵士は敵に居所がバレないようにゆっくりと慎重に瓦礫のなかを渡り、建物から建物へ一つずつ攻略していった。

両手でH&K MG4を構える彼らを時折、民間人が不安の眼でみつめる。しかし悲鳴でもあげない限り、小隊の誰も民間人には手を出さなかった。そんな暇はなかったし、無害な相手に銃を突きつけるのは人として良い心地がしなかった。

「俺たちの戦車隊が左から砲撃してるのが分かるか?」ライアン少尉が言った。

「ああ、おそらく敵は右前方100から200ってところだろうな」ローガンが代弁した。

ローガンの読みと同じのようだったライアン少尉は彼の意見に頷くと後ろを振り返り、小声で部隊全体に指示をする。

「敵はもうすぐ、あのデカいアパートにいる。出入り口を爆破したら、MP7に持ち替えて各部屋を占領するんだ。いいな?」

ライアン少尉の指示に各自が頷く。トミーは新兵に爆薬を担がせてMP7を用意した。

「イーライ? だったな新兵。その爆薬は豚を丸焼きするのに使う。無くすんじゃねえぞ。俺の後ろに必ずいろ」

「は、はい!」イーライが返事をする。

イーライ・タート、一等兵、若くまだ二十五歳。

部隊がゆっくりと敵が潜む建物に近づく。無言の緊張、物音ひとつで自分たちの居場所ばバレてしまう緊張感と恐怖の入り混じった感情を表すように冷や汗で全身を濡らした兵隊。あと50メートル、ここまでくればもう充分だ。爆薬はいつでも点火できるようにしてある。セッティングに掛かろうと部隊の進行を中断しようとした瞬間、前方10数メートルに一人の男とい目が合う。仲間だ。しかし額は血に濡れて足が瓦礫に埋もれている。砲撃で身動きがとれなくなったんだ。

「助けてくれえええええ」男が叫んだ。

部隊が硬直する。敵はまだ気づかない。「あいつを黙らせろ!」誰かが言った。男は黙らない。更にこっちを見ながら必死で手を振る。

「不味い!」ローガンが危険を察知した。

ライアン少尉の背中を強引に掴み前へ投げ飛ばす。するとライアン少尉がいた場所に銃弾の雨が降りかかる。間一髪、ローガンと共に瓦礫を遮蔽物になんとか助かる。男の声はもうしない。

「作戦変更だ! 俺たちは先に行くからお前らは2時方向の工場街に沿って来い!」

「俺たちが先に行く? 正気かライアン!」ローガンが反対する。

「爆薬ならある。 なんとか接近して爆破するんだ」

「居場所が割れたもう無理だ!」

「じゃあ、どうする? 俺達ここで蹲ってろって? どのみち死ぬぞ!」

「……」無言でライアン少尉を見つめるローガン。彼の覚悟を理解するが、自分の命と天秤にかけられる自信もなかった。

「わかった、わかったよ。先にいって一階を制圧しろ。俺が援護する」

「ショットガンあるか?」

「レミントンか? あるぞ、気をつけろよ」

ライアン少尉にレミントンM870を借し、MG4を受け取る。ローガンは再び顔を上げてライアンの眼をしっかり見ると首で行くように促す。

「頼んだぞ」

「任せろ」

ライアン少尉が走る。距離にして約30メートルか、それ以上の瓦礫を遮蔽物を頼りに駆け抜けていく。ライアン少尉を狙った敵の銃弾が放たれる。それをローガンは素早く位置を図ると受け取ったMG4で敵が倒れるまで連射した。

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