ライアン・ボスト少尉 4
「ありがとうございます。なにからなにまで」
「好感度を稼ぐためだからね……ニアを落とすのは大変そうだ」
「いーえ、そんなに大変じゃないですよ」
イタズラっぽく笑うニア、大きく近づいた距離感にライアン少尉は胸が苦しくなるような窮屈さを感じる。このまま彼女を抱きしめたい、しかしそんなことをすれば彼女に嫌われるのは眼に見えるようで、だがもしかしたら彼女は自分に気があるのではないかと、気が気でない。
ベッドへ案内して洗ったばかりの白のシーツをかぶせる。彼女は彼に何度目かわからない礼をまた述べて、ベッドへ座り荷物を整理する。
「ニア」
堪えようのない衝動にライアン少尉は少しだけ身を屈めると彼女の頭にキスをして後ずさる。
「先にシャワー浴びていて、俺は本でも読んでるから」
「ありがとう、それじゃ甘えさせてもらうわ」
ニアがシャワーを浴びるのを確認するとライアン少尉は受話器を手にして連絡をとる。相手はローガンだ。
「ローガン、ありがと」
「なに? てことはやったの?」
「ああ、やったけれど、そういうやったじゃなくて、好感度があがったって意味でね」
「なんだよ。お前このままじゃ一生どうて」
「ローガン、ローガン……ニアはまだ迷ってるようだし無理には出来ないよ。兄の友達なんだ、遠慮するのもわかるだろ?」
「俺は遠慮しないぞ?」
「ああ、お前はね。とにかくありがとう、今日はもう寝るよ」
「ああ、ああ! もしする時はちゃんとしゃ―――」
ローガンのお節介を最後まで聴かずに強引に受話器を置く。ローガンは頼んでもいないお節介をよくする人だ。けれどライアン少尉も含み誰もが彼の優しさを知っているので、文句は言わない。
「シャワーあきましたよ?」
ニアがシャワーが開いたことを伝えにリビングへ入る。
「誰かとお話中でした?」
「ああ、ローガンと今日のことをお礼に」
「ああ、野球面白かったですもんね……私からもお礼を言わないと」
「今日はもう遅いし、俺が伝えておいたから」
ニアと一緒にリビングをでて、シャワールームで別れる。
「おやすみ」ライアン少尉が小さな声でつぶやく。
「おやすみなさい」
彼の呟く声を聞き逃さず、ニアも小さく返事をする。その時には既にシャワールームにライアン少尉は入ってしまっていたので、声は届かなかったが、ニアの表情に満足そうな顔が浮かべられていた。




