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ライアン・ボスト少尉 2

「それじゃ人生で経験した人数0?」ローガンが訊く。

ライアン少尉は頷く。

「なんで速く言わなかったんだ? チケット代をホテル代に変えるべきだったよ!」

「やめてくれ! 悪いが俺はそんな店に行きたくない……やっぱ変か?」

「……いや、その方がロマンがあっていいさ」

「本当か?」

「お世辞に決まってるだろ、お前はただの童貞だよ」

お互いに本音をぶつけあう仲だったが、今のはショックだったようで、ライアン少尉は落ち込む。

「よし、俺は脱皮するぞ、本物の男になるんだ」

「性犯罪だけはやめてくれよな」

二人は同時に後ろへ振り返りニアを伺う。野球観戦が楽しみのようでチケットを眺めては時計を確認して、を繰り返している。

「いいな? 野球観戦した後は適当に飯を奢ってホテルに連れていけば……もうお持ち帰りだ」

「本当に? だいたい彼女の気持ちは―――」

「んなもん後でごますりゃ良いよ、トミーの妹だし、性格も抜群だ。飯も美味いし迷うことはない」

「よし、よし、OK、分かったやるぞ」

「おう、野球観戦したら俺は適当にフェードアウトするから、あとは頑張れよ」

ライアン少尉はローガンと距離を置き、ニアの歩幅に合わせる。それを見守るローガンはジェスチャーを使って速く声をかけろ!と伝えているようで、ライアン少尉も軽く深呼吸をして彼女に声をかけた。

「ニア、野球が好きだって知らなかったよ」

「ええ、小さいころ野球チームに所属してたの。兄さんはスポーツが苦手だから入らなかったけれど、私は好きだったなぁ」

ニアの好き、ワードに一瞬心を震わせるライアン少尉だが、大人の意地を見せ平静を装う。

「俺も野球チームに入ってたよ。高校の時に2年間だけね」

「どうしてやめちゃったんですか?」

「野球チームに入るのは小さい頃からの夢でね。父に無理を言って2年間だけ加入させてもらったんだ。凄く楽しかったし、正直、4年間しっかりやりたかったよ」

「私も分かります、6年間やっていt野球チームをやめた時は寂しくて泣いちゃったなぁ」

「相当うち込んでたんだ?」

「ええ、上手くはなかったけれど、キャッチボールをしている時は嫌なことを忘れることができたもの」

少しだけうちとけることが出来たライアン少尉とニア、ローガンの案内で球場についた彼らは興奮を分かち合い、楽しんだ後、ローガンは密かにフェードアウト、ライアン少尉はニアをレストランへ誘った。

レストランの中は軍人ばかりが目立つ、彼ら専用の店なのだから当たり前。ライアンはウェイトレスに案内された小さなテーブルにニアをエスコート、途中で汗をかき過ぎたので着替えるといったニアは今や青の美麗なドレスに包み、周りの男たちの目を惹いていた。

「シャンデリアもあって凄いね、お皿も綺麗だし、私払えるかな?」

「俺が奢るよ」

「ダメよ。女だからって男性に奢らせるなんて最低のことだし、私も払う」

「でも値段すごいよ?」ライアン少尉はメニューを片手にニアへ見せて、0ばかりのデザートの写真をみせる。ニアは面食らったように数字を凝視して、本当にこんな値段なのかと、何度も指さし確認するが、0の数が減るわけもなく、驚いていた。

「こ、こ、こんなところに、あ、あ、どうしよう」

「俺が奢るって」

「ぜ、絶対に食べた分は返すわ! 来月の給料日にはかならず」

「別にいいのに……」

財布に余裕のあるライアン少尉はこの時ほど将校に生まれたことに感激したことはなかったろう。笑みは隠しきれずつい彼女の前で頬がゆるんでしまう。

「もう、さっきからなんで笑ってるんです少尉殿?」

「少尉はやめてよ、ライアンでいい」

「年上の方を呼び捨てには出来ない……」

「相当、兄に躾けられたんだね」

「ええ、兄さんったら、私のすること全部厳しいんだもの」

「それだけ愛情があるんだよ」

「でも、もう大人なんだし、いい加減放ってほしい」

「それじゃ、今日一日、兄の呪縛から逃げてみる?」

ライアン少尉の提案にニアは首をかしげてしまう。ライアン少尉のことは兄から良く聞かされていたし、評判もかなりよかった。少し堅物で忙しい人間だけど、根は良い人で正義感のある信頼できる奴だと、だからまさか、自分みたいな人間が彼に誘われると理解するのに彼女は数十秒ほど必要だった。

「そんな、兄の上司とは……私なんて」

「階級なんて関係ないよ、それにお兄さんとは親友だ。学生時代はお世話になったし恩人でもある。でもそれはニアじゃないだろ? ニアはニアで、トミーはトミーだ」

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