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孤立

 ベルテンベルグ陸軍の進軍は順調を極めていた。開戦前から陸軍と空軍では、密接な連携訓練を常時行っていたのが幸いしたのだろう。敵の軍団の動向をベルテンベルグ空軍の偵察機が捉え、戦闘機を護衛につけて爆撃機が戦車に大量の爆薬と、三十ミリ機関砲をブチまける。その後をベルテンベルグ陸軍の戦車部隊が一掃した。残りカスは歩兵が始末すればいい。しかし、首都目前で犯した失敗を繰り返さない為に、参謀を務める将校達は慎重に計算していた。

スノーフォールは首都から遥か数千キロ南に位置する。工業が盛んなスノーフォール市街地では、当然の如く武器の製造を行っていた。特にベルテンベルグ陸軍第六師団の35個小隊が。

既に増援に来て戦車部隊と共に攻略を始めている。シュバリアでは「我々はスノーフォール市街を敵に渡すことになるかもしれない」などと考える者まで現れる。もしここが奪われればシュバリアの南の戦力が大打撃を受ける。ベルテンベルグの中央軍は進撃の順調に運び、スノーフォール市を南方軍と共に併殺しようとしている。スノーフォールの真横を流れる巨大な小川にシュバリアの対策本部が設置される。

季節は夏、シュバリアの厳しい冬を乗り越えたベルテンベルグ陸軍は大打撃を負った第六師団を再度編成、再び戦場に投入する。彼らは地平線まで広がる大草原(シュバリアはステップ気候)を呑気に眺めては冬の地獄など完璧に忘れていた。

あの冬を生き残った村があった。ベルテンベルグの兵隊によって食糧を奪われ、女は強姦され、自国のシュバリア軍には敵の食糧にならないように家屋に火を放たれたあの冬を。彼らは偶然にも運よくベルテンベルグが見逃していあ村だった。とにかく輸送車はその村で一度停車すると兵隊が次々と降りていく。前回の進行の時にも輸送車に乗っていた連中は特に一目散に村へ走った。

彼らのすることと言えば、籠の中の鶏を撃ち殺して袋に詰める。裏庭のジャガイモは質の良し悪しに関係なく奪い、冷蔵庫の中のグリーンピースとマヨネーズを仲間に振る舞い陽気な歌を歌った。

手を振れば女子供は爆弾を投げたと思ってみんな逃げた。

走れば女子供は犯されると思ってみんな逃げた。

銃を出せば女子供は銃殺されると思ってみんな逃げた。

抵抗する者、対抗する者、敵の軍も真面目な上官もいない。まともな人間は前の進軍で全員戦死した。彼らは神のように振る舞い、どんな事も許された。

九月を過ぎると、リヒトムーゲンは参謀将校達を集める。作戦では北方軍団は油田を確保しだい首都に再度侵攻する。中央軍団は首都に代わる大都市に攻撃。南方軍団はシュバリアの生命線ともいえる軍事基地や武装製造拠点の撃破。中央軍団の侵攻は充分であったものの、それは早い段階でシュバリアが若い男達を疎開させ後方で蓄えていたからだ。南方軍団はスノーフォールで激戦を重ね、陥落は容易ではない。北方軍団に至っては連日の奇襲攻撃で大打撃をこうむっていた。

油田の確保に固執したムーゲンは作戦を急遽変更、余裕のある中央軍団を二分化して北方と南方の両方に向かわせた。

人生の殆どを人心掌握と政治に費やしたムーゲンの独断的な作戦変更には参謀将軍らは怒りを隠せなかった。特に歴戦の勇士とも言えた中央軍団参謀将校は強く反発、結果ムーゲンは彼を解雇した。

スノーフォール市街戦での戦力の大幅削減に、休暇が予定されていた第6師団の兵士は失望を隠せずにいる。彼は市街地で特段大きなアパートに立て籠もると籠城、防備を固めて中央軍団の増援を待った。戦力の足りない中央軍団はスノーフォールにたどり着く前に大打撃をうけている。第6師団を含めた南方軍団は徐々に孤立していった。

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