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第七話 まずは基礎?

2016/01/28 誤字修正しました

2015/04/04 内容修正しました。

 初めて大きな魔法を使ってから、翌日にはお母さんの授業に生徒として参加する事になった。


 以前からチラチラ見ていたから、周囲の人にも歓迎される。


 ちなみに授業には四種類のコースがある。


 魔力の基礎、初級魔法や初級魔術、実践的な魔法や魔術の使い方、そして実地訓練だ。


 ちなみに最初の三つは基本座学。時々裏庭で魔法や魔術の使い方を訓練する事もあるけど、比較的弱い魔法であってもそれはやっぱり魔法。一応周囲には土で作った防壁などもあるので、滅多な事では事故は無いんだけど、希に魔法で防壁の半分がえぐられる事だってある。しかも初級の講座で習う物でこれだから、中級はかなり慎重にしないといけない。


 一応僕は魔力の基礎から始めていて、ほぼ全てが座学だ。


 たまに街の外で魔法の訓練もするけど、かなり離れた所まで馬で行ってからの練習になる。普通な街が見えなくなる場所まで練習に行く事はないみたいだけど、僕の場合は高すぎる魔力が仇になってしまうらしい。


 普通の人が使う火柱の魔法でも、僕が同じ事をすると巨大な竜巻みたいで、しかもそれが火を伴っているから質が悪い。幅にして三ケイリ――三百メートルはあるかと思える。


 どうも無意識で炎と風の魔法を使ってしまうようで、巨大な火災旋風といった表現が正しいのかも。もしくは炎の力が強すぎて、単に上空に魔法を放つだけでも上昇気流が発生する。


 水の魔法で同じ事をすると、確実に周囲が洪水に見舞われた後のようになる。


 じゃあ風の魔法なら大丈夫かと言えば、はっきり言って危険きわまりない。竜巻が発生するまでは想定のうちだけど、すぐに稲光が周囲に発生しだし、最終的には雷が荒れ狂う巨大な竜巻になってしまう。


 恐らく空気中のチリが高速でぶつかり合い、強力な静電気が発生しているのだろう。


 その点一番安全なのが土の魔法なんだけども、単に周囲の土を高くするだけで、あっという間に巨大な塔が出来る。


 魔方陣を用いた魔術でも同じで、むしろこっちの方が悪い。


 魔方陣は魔力を供給すれば発動するので、僕の場合は少し魔力を供給しただけで災害レベルの魔法が発生する事が多い。僕が思っている少しの魔力と一般的な少しの魔力には大きな差があるみたいだ。着火などは問題ないのに、こういった訓練だと制御が上手く出来ていないのかも。そんなわけで裏庭で魔法や魔術の練習は出来ないのだ。


 じゃあ何で練習しているかというと、魔力をもっと細かく制御するための練習。普通の魔法をまともに使うために、威力を絞らなくてはならないという本来の訓練と逆の事をしている。


 薪に火を点けるくらいなら以前からやっているので問題ないのだけど、普通に初級クラスで習う魔法でも大魔法レベルになってしまう。そうならないように魔力を最小限で使用する訓練をしているんだけど、それが中々難しい。


 水魔法が特に顕著で、ちょっと気を抜いたら暴風雨なんてこともしばしば。


 お母さんが防御魔法を使ってくれているので安全なんだけど、2~3ケイス――たぶん二~三メートル間隔で稲妻が落ちるくらいだ。


「もう少し遠くで訓練した方が良いかしら?」


 さすがにお母さんも心配になってきたのだろう。いくら街から距離を取ったとはいえ、災害級の魔法ともなれば確実に見えているはず。


 もちろん街を出る際に大きな魔法の訓練をすると伝えているのだけども、災害級の魔法が見えないはずがない。


「とにかく今日はいったん戻ろう。もっと魔力の扱いを覚えるのが先決だな。クラディは初歩の魔法を使っているつもりでこれだけの威力が出てしまう。魔力をもっと制御する事を覚えるのがいいだろう。それなら座学でも覚える事が多い」


「そうね。クラディも間違って家で下手に魔法を使わないようにしてね? 魔力が高いのは悪い事じゃないわ。それだけ潜在的な能力があるって事だから。必要なのは魔力を上手く制御して、必要に応じて必要なだけ使う事。たぶんクラディは無意識に魔力を使いすぎているのよ」


 実感は無くてもいわれている事は分かるので素直に頷く。ただ、着火などはともかく普通の魔法というのが僕の場合は規格外なのが正直どうかとは思う。


      ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「私のカンだけど、クラディはハイエルフと呼ばれた伝説の存在と同じ魔力があるのかもしれないわ」


 その日の夜、カルロとブーリンの二人はクラディが寝た事を確認してから居間で話をしていた。


「ハイエルフって伝説のか? 確かに魔力は高いが、ハイエルフというのは見た目がだいぶエルフとは違うときいた事があるが……」


「それは間違いね」


 ブーリンは自身の知っている範囲でハイエルフの事を語る。少なくとも普通のエルフとは大きな身体的特徴があまりない事など。


「ただ、一つだけ可能性としてあの子が先祖返りというか、ハイエルフ独特の特徴がある気がするの」


 それは昔からエルフ族に伝わっている事で、外見的に男性でも胸が大きくなる事。大きさは普通のエルフよりも大きい場合もある事を説明する。


「まだあの子についてははっきり言えないけど、普通のエルフの男性よりは大きい気がするわ」


 そもそもエルフは男性でも大きな胸を持つ事が多く、それ故昔から男女の区別が難しいといわれる。さらに髪は男女関係なく腰まで伸ばす風習があるので、余計に誤解されてしまう。さらには声も他の種族とは違い、比較的声が高い。男でも声変わりをすることの方が希なくらいだ。そういったことを一通り説明する。


「何か問題があるのか?」


「身体的には大きな問題がないはずよ。あえて言うなら、私もそうだけどエルフやその眷属は男性でも母乳が出る事かしら。まああの子は男の子だから、母乳という表現はちょっとおかしいけど、早い話がそういう事よ」


 そう言われてカルロはクラディの胸が普通の男の子よりは確かに大きい事を思い出す。


「体に影響はないはずだけど、エルフの民族衣装って男女共有があったりするの。なのでもしかしたら間違えられる可能性があるし、基本エルフやその眷属は髪を切る事もないわ」


 確かにクラディの髪の長さは一般的な女性と比べても十分に長いと言える。今の状態でもすでに胸よりも下に伸びている。


「切る訳にはいかないのか?」


「難しいわね。エルフは髪にも魔力を蓄えるという話が聞いた事があるから。一度だけ切ったけど、あれはエルフ族の伝統で最初の髪を弓の弦にするという伝統もあるから。私はその理由まで知らないけど、私もそんな弓を持っているし。それにあの子の物も作ったわよ」


 カルロはブーリンが大切に保管している弓の事を思い出した。もちろん彼は今までそんな伝統がある事など知らない。さらにクラディがすでに持っているのも知らない。


「まだあの子には見せていないし、もう少し大きくなってからで良いかなと思ったけど、そろそろ見せても良いのかもしれないわね。別に隠すようなことじゃないから」


「ちなみにその弓は実用性があったりするのか?」


「あるわよ」


 魔力を帯びているためか、切った後でそれを紡ぐと強靱な紐になるし、それを使用した弓は魔力を帯びる。なので放たれた矢は魔力も帯びる。当然普通の矢よりも威力は高くなり、飛距離も伸びることを説明する。


「凄いな……てっきり鑑賞用かと思っていた」


「実際は使う事なんて無いのよね……」


      ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 とにかく今は魔力の制御を訓練しないといけない。その為には基礎をしっかり学んで、魔力の仕組みを覚えておく必要がある。


 普通の人は魔力を上げるために講習を受けているんだけど、僕の場合はむしろ逆だ。多すぎる魔力をいかに節約して使うかなんだけど、魔力の使い方という意味では同じみたい。


 同じように授業を受けていても、考えている事が周囲と違う。さすがに魔力を抑える事を周囲には言えないけど、休憩時間で話す内容はいかに魔力を上げるかの話ばかり。それでも周囲に話は合わせる。前世ではそれが上手く出来ずに失敗した。同じ事は繰り返したくない。


 前世での小学校や中学校、高校などとは規模が全く違うにしても、誰にも相手にされないのはやっぱり寂しいから。


 それでも収穫は多少なりある。魔法を使う際に精密であればある程魔力の扱いが難しくなるみたいで、集中度が高い程そこに魔力が削られる。結果として実際に使う魔法は威力が低くなる傾向にあるようだ。精密にする際に魔力の大半を使ってしまうのが理由だろうという研究結果があるそうで、実際授業に出ていたみんながダウンしている。


 所が今のところ僕はダウンしていない。複雑にと言われても、そもそも魔法の概念がまだ分かっていなかったりするから。なので結局授業中には精密魔魔法は使えなかった。


 ならばとにかく複雑にかつ精密に魔法を発動させれば威力を抑える事が出来るはず。問題なのはその方法なんだけど……。


「うーん、複雑にって言っても何を複雑にしたら……」


 魔力の関連本を読みながら、複雑な魔法について調べている。


 そもそも複雑な魔法と簡単に言われても、世間一般では火災旋風のような魔法が極めて複雑な火と風の混合魔法らしい。あまり考えずにそれを実現してしまったのだから、それよりも複雑な方法を考えないといけない。


 火災旋風は本来周囲の炎が集まり、上昇気流を伴って炎が竜巻のような状態になる事は知っている。熱が上昇気流を発生させる事は当たり前だし、火災が起きれば熱は自然に高くなる。それが一定の度合いを超えた場合に竜巻と同じ仕組みになるだけだ。


 この世界の人たちは知らないのかもしれないけども、前世の記憶をちょっと引っ張り出せば理論的には分かる。


 問題なのはそれを僕の場合は簡単に起こしてしまう事。しかも前回は火の魔法だけだ。つまり発生させた炎その物が、周囲から空気を集めてきてしまったのだろう。


 火災旋風を起こせる魔法使いとなると、この世界では魔霊士と呼ばれる最高の魔力を扱える存在になるらしい。


 ちなみに魔法使いには階級のような物がある。魔法見習い、魔法使い、魔法士、魔術師、魔霊士の順だ。


 魔法使い程度は訓練すれば誰でもなれる。


 この世界で炎や風、水、土の属性などは単体で考える事は無い。その代わりにいくつかの魔法を組み合わせて、多少なりとも大規模魔法が使えれば魔法使いを名乗れる。


 魔法士はそれらを他の人に教える能力がある人で、必ずしも魔法使いと魔法士の使う魔法で強弱は関係ない。


 魔術師となると魔法士の能力はもちろん、精密な魔法や大規模魔法を連発できることが条件となる。この場合の精密とは、火の魔法で木の板に絵が描けるくらいの能力らしい。当然板が発火してはいけない。


 最後の魔霊士はかなり条件が厳しく、一日中大規模魔法を連発しても魔力が尽きないとか、風の魔法を利用して矢を弓無しで飛ばし、一ガント――一キロくらい離れた相手の目を貫ける能力がある人を指すそうだ。


 ちなみにお母さんは魔術師レベルらしい。


 じゃあ僕が魔霊士を名乗れるかと言えば、色々な意味で無理だ。


 そもそも魔法を人に教える事が出来ないのはもちろんだけど、魔霊士に要求されるのは大規模魔法だけじゃ無い。ピンポン球くらいの小さい的に、三ケイリ――三百メートルくらいの距離で中心のみに針のような穴を開ける技量が要求される。


 かといって自宅で魔法を練習する程の勇気も無い。まだ威力の調整すら出来ないのに、下手に練習すれば家ごと魔法で吹き飛ばす可能性がある。


「はぁ……」


 色々な本を漁りながら溜息が出る。


「あら、捜し物?」


「あ、お母さん。魔力の調整について調べていました」


 それを聞いて僕の悩みが分かったのか、いくつもある本棚から一冊の本を取り出してきた。


「参考になればいいんだけど、これなんかどうかしら? 魔力じゃなくて魔法の使い方の本だけど、魔法をどう扱うかが詳しく載っているわ。難しい本だけどクラディになら多分理解出来ると思うし」


 渡された本のタイトルは『魔法の制御と実践・水魔法編』とあった。


「ありがとう、お母さん。勉強してみます」


「いいのいいの。魔力が高いのは悪い事じゃないし、上手く扱えればきっと有名人よ? 正確な魔力を測る方法は無いんだけど、多分クラディなら一日中大魔法を使っても魔力切れはなさそうだし」


「はい、頑張ります」


 渡された本の最初のページを見る。最初から目次が記載されていて、水魔法で植木鉢に水を与える方法なんてのもある。それもやり方は色々で、単に指先から水を流す方法から、土だけを魔法で湿らせて、水魔法だけで土を柔からくする方法まで。


 本来は土をいじくるのであれば土魔法だけど、ある程度の力量があればこんなことも可能みたいだ。


「今の僕なら、植木鉢が砕けちゃうよな……」


 単にコップへ水を出すくらいなら問題ないのだけど、意識して水魔法を放つと途端に威力が変わる。例えるなら消防車の放水みたいな物だ。僕としては指先から水を流しているだけなのに、なぜか成功しない。


 そんな事を考えながら本をめくった。


      ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 今日も街から離れた岩地に来ている。いつも僕が魔法を練習する場所だ。


 毎回小さな魔法を唱えようとして、大魔法が発動するため、それまでは単に荒れ地だった場所が次第に整地された岩地になっている。


 特に風魔法と水魔法の影響が大きいとは思っている。その度に大地が削られているのが、普通にみても分かるくらいだから。そのためか、練習した後の場所は大抵綺麗に整地された形になる。


「クラディは才能があるはずだから、制御の事をまず考えるべきね。無意識に膨大な魔力を放ってしまうのであれば、意識して最小限の魔法を使うようにするの。普通は逆なんだけど、クラディの場合は魔法をとにかく小さく小さく放つ事。じゃあ、火炎魔法をやってみて」


 ちなみになぜ火炎魔法かというと、それが一番被害が小さいからだ。


 普通なら得意であるはずの水魔法で練習すべきだが、威力がありすぎて被害が出てしまう可能性がある。風魔法も同様だ。土魔法だと一瞬で塔が建ってしまい、それを崩す方が大変になる。


 結局周囲に燃える物がなければ火炎魔法が被害がなく、尚且つ水魔法よりも火炎魔法の方が威力が弱い。当然の結論。とはいえ、弱いといってもいまだに火災旋風レベルなのだけど。


「まずは軽く魔法を放ってみて」


 言われたとおりに火の魔法をイメージ。時間をかけると大規模魔法になりかねないので、すぐに放った。


 少し遠くに火の柱が立つ。それでも見た目は幅五十ケイス――約五十メートルくらいだ。


 確かに以前よりははるかに小さい。それでも上位の術者がやっと行えるような魔法を簡単にやってしまう。それを見てお母さんは複雑な顔をしているし、お父さんは唖然としている。


「前よりは確かに……」


 お父さんが困ったような顔をしながらお母さんを見ているけど、僕が出来る最小魔法が今の時点でこの規模だ。。


「進歩は進歩よ。普通は次第に大きくするのを私達は逆のとをしているのだから、そもそも私だってどうやって教えたら分からないくらいだし」


 お母さん、そりゃないよ……。


 少しして炎がおさまったので、もう一度。


「今度こそ!」


 小さく小さく……そう思ってすぐに魔法を放つ。


「お、だいぶ小さくなったな」


 確かに見た目は小さくなった。幅は多分十ケイスくらいだと思う。


「うーん、確かに小さくはなっているんだけど……あれを見て」


 そう言われて放った魔法の地面を見る。


 よく見ると魔法で放った火が下の土を溶かしていた。まるで溶岩のようになっている。しかも炎の色が赤ではなく、ちょっと青白っぽい。


 確か温度と炎の色は化学物質が関与していなければ色温度でケルビン単位が使えたはずだ。正確には忘れたけど、青白いことを考えると確か一万カルビンはあったはず。青になるともっと高くなるはずだけど、そこまでは高くなっていないのだろう。


 そもそも魔法で炎を発生させているし、多少地面の物質を燃焼させたとしても、色々な物質があるはずだから、それで炎色反応が起きるとは思えない。つまり化学物質の燃焼はこの場合無視してもよいはず。


 あれ? ケルビンが通用するなら、絶対零度ももしかして作り出せる? ゼロケルビンなら絶対零度だし。まあ今回やることじゃないけど……。


 それよりも確か太陽の表面温度が六千ケルビンを超えていないはずだから、目の前にある炎の柱はそれよりも高いはず。もしかしたら前世の太陽よりも表面温度が高い? でもそれにしては熱輻射を感じない。魔法はやっぱりなんだかよく分からない。


「小さい分、威力がさらに強くなっているわね。でも進歩は進歩よ。今度はもっと高さを小さくするようにやってみて」


 そんなこんなで一日が過ぎてゆく。


 魔力が異常に高いためか、何発放っても疲れる事はない。逆に放った場所が熱に耐えられなくなり、周囲が完全に溶岩状態だ。


 ついには青い炎が出来たけど、全く熱輻射を感じない。これは可能性の問題だけど、魔法による炎は前世の炎と仕組みが違うのではないかと思う。魔法での炎はその対象物が発火現象を起こさない限りはケルビン温度でしか威力が分からないのではないか? そして普通は白い炎や青い炎を出すことなど出来ないみたいだし、当然そんな事に気がつく人もいないのだろうと思う。


 でもお母さんは炎の威力が上がっていることが分かっているみたいだ。お父さんはどうも分かっていないみたいだけど。


      ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 しばらくして毎週一日は外で魔法の訓練を行う事になった。


 それまでは塾の休み自体不定期だったんだけど、僕にきちんと魔法を学んで欲しかったらしい。


 もちろんそれは歓迎なんだけど、すでにあれから三ヶ月以上経過して、今は白鳥の月。日本で言えば秋くらいの気候だ。


 威力そのものを小さくする事は次第に出来るようになったけど、どうも安定性がない。特に範囲に関してはかなりの誤差があるみたいだ。


 それから何かに燃え移ると熱輻射が発生するのは分かった。偶然だったんだけど、比較的ケルビン温度が低い炎の時に枯れ木へ燃え移ったらしい。その熱を感じることが出来たので、燃え移った場合のみ熱輻射が発生するんだと思う。


 つまり僕が放つケルビン温度の高い炎は、対象物が燃えるまで威力が分からない事になる。だけども白い炎で試すのは怖すぎるし、青は尚更。


 威力に関してお母さん曰く、最初にここで放った魔法が僕の標準威力なんだろうという話。それを無理に小さくしようとするので、結果的には精密魔法を放っている事になっているのかもしれないと。


 じゃあそんなに小さく出来るのかといえば、今の現状で炎の魔法では一ケイスの箱状がやっと。水魔法では十ケイス以上小さく出来ていない。


 試しに土魔法で凝固をイメージしたら、確かに凝固して石にまでなったのだけど、石と言うよりは岩。使った土の面積は円形だけど四百ケイリくらい。凹んだ四百ケイリ位ある円の真ん中に、十ケイス程度の正方形に近い岩が鎮座していた。


 後で分かったんだけど、この石の耐久度は異常だ。ツルハシはもちろん、普通に使う土木工事用の道具では傷が全く付かない。


 魔法剣でお父さんが試し切りしたけど、その魔法剣が砕け散る始末。そして岩に残ったのは微かな傷だ。ちなみにその剣は幹の太さが一ケイス――一メートルくらいあっても水を切るように切ってしまう物だったとか。


 これを量産すれば城壁に使えるなんてお父さんが言っていたけど、そもそもこの岩を持ち上げる事が出来ない。前世のように重機がないのはもちろんだけど、物を持ち上げる魔法ですらびくともしなかった。まあ、物を運ぶ魔法は風魔法と土魔法の追うようらしくて、僕自身はまだ使えないんだけど。


 仕方なく今は完全に放置して、魔法の練習の際はその岩をめがけて行っている。


 何百回と火の魔法を受けているはずなのに、表面はあまり変化がない。想像でしかないけど、原子どころか分子レベルで完全結合してしまったんじゃないかと思っている。


 ただこの世界には原子や分子の考えがまだ無いので、誰かにそれを話て証明してもらう事も出来ない。電子顕微鏡どころか、光学顕微鏡すらないのだから仕方がない。


 ただ練習の成果は次第に出てきて、以前までは炎の柱や炎の壁しか作れなかったのが、今では遠距離の爆発魔法が使えるようになった。突然指定した地点が爆発するのはさすがに驚いたけど。


 ちなみにその爆発もまるでガスタンクでも爆発したんじゃないかと思えるような爆発だった。巨大なキノコ雲が出来て、帰りに街の衛兵さんが何かおかしな事は無かったかと聞いてきたくらいだし。どうもキノコ雲が見えていたらしい。


 魔法の練習はまだまだ長くかかりそうだ。

この世界の魔法は、特に固有名詞はありません。

術者が勝手に決めているのが実情で、冒険者などの場合はあらかじめ魔法使いの魔法の内容を聞く事が鉄則です。

ちなみに冒険者だと大規模魔法はまず使いません。そもそもそんな魔法を使う事自体が少ないからです。

巨大な魔物モンスターであっても、急所を狙えば一撃。魔物の集落にしても、大きさはせいぜい半径百メートル程ですから、中威力の魔法一撃または数発で終わってしまいます。

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