第五十六話 工事は続くよどこまでも?
2016/02/03 誤字等を修正しました
2016/01/26 話数番号を変更しました
「やっと第一城壁が完成しましたね」
城壁工事を始めて三ヶ月。細かい作業も終わって僕らは完成した城壁を見ていた。
城壁の内側にはいくつか階段も設け、城壁の上に行けるようになっている。見張り用でもあるし、緊急時はここから魔法部隊や弓の部隊で迎撃をする。まだ色々な設備も必要かもしれないけど、今は壁が出来た事で最低限の守りは確保出来たはずだ。
実際すでに冒険者を引退した人が数名見張りをしている。門にも二名の人がすでに常駐していて、三交代制だそうだ。引退したと言ってもまだ四十台程度。熟練の冒険者だったそうだし、とりあえずはこれで良いと思う。
「外側は実質本位だが、内側は見た目も考慮しましたからね。もう少し外観は整える必要があるけども、今でも十分だと思う。外観の手入れは専門の者に任せよう」
作業責任者の人を含めて、僕らは完成した城壁を見ながら、次の城壁工事をするための準備をする事にした。数台の馬車はすでに用意されているので、僕らはその積み込みを手伝う事になる。
もちろんそれは僕も手伝うけど、大半の機材はすでに建設が一部始まっている第二城壁へ移動されている。それでもそれなりに残っているけど。
「第二城壁は堀こそ作りませんが、壁は第一城壁の高さ十ガルよりもさらに高い十五ガルです。万一第一城壁を突破されても、可能な限り第二城壁で防ぐつもりですから」
正直第一城壁が突破されるのは困難だと思う。大型の魔物とほぼ同じ高さで作っているし、そもそも壁の強度は最初の設計よりも強くなった。
「考えたくないですね、第一城壁が突破されるなんて。アレを突破されたら、いくら次の第二城壁といえ防衛は厳しいですから」
誰だってそれは分かっているはずだ。例えば魔物の大群が襲ってきた場合、第一城壁にどうしても戦力が集中するはず。それが突破されると、残っている防衛力は極めて厳しい状況になる。
「忘れましょう。今はとにかく町の開発が最優先です。いつ起こるか分からない事に覚えていても仕方ないですからね」
同じ馬車に同乗予定の設計主任が空を見ながら呟くように言った。気持ちは分かる気がする。
「馬車の準備をしましょう。今はとにかく出来る事をしないと」
彼の言葉に僕らは出発の準備を始めた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「結構な石材が取れましたね」
石切場としてはかなり有望な場所に来て、すでに馬車へ積み込みを始めている石材を眺めながら言う。
今回私は石切場の応援。鉄の採掘についてある程度の量が確保出来たのと、精錬所での作業が間に合わないので私は石切場へ移動となった。
「やっとバスクホルドさんに来て頂き、これで作業が捗ります。建築物の石材不足がそろそろ不味い事になっていた所なので」
石切場で監督をしている人は、私が来て喜んでいた。
石切は普通の人も行っているが、当然魔法よりは時間がかかる。石切の魔法としては風魔法が一般的と聞いていた私だけど、クラディに水魔法での石切の仕方を教わったので、それを使えばかなり早く出来るらしい。
水魔法での初めての事なので、最初の練習では切断面が正直綺麗じゃなかったけど、今では真四角や長方形の石材、路面に敷き詰める薄い石材など色々と出来るようになった。
なんでもクラディの話では、前世の世界に『ウォーターカッター』という機械があったのだとか。
強力な水を一点に集中させて、その水の勢いで者を切断するらしいのだけど、確かに慣れると効率よく石材を確保出来るし、石材を切断する際にも断面が綺麗なのでそのまま使う事すら出来るといわれた。
まさか水魔法で物を切断できるなんか考えていなかったし、これって応用すれば魔物退治でも使えると思ったりする。
ついでに近くの木で試したら、木も簡単に切断出来た。これって何気に水魔法の革命なんじゃないかと思う。
もちろんこの技術は他の水魔法が使える人にもすぐに伝えたので、今では石材の切り出しは水魔法ばかり。
魔法が使えない人は石の表面を磨いたりする事に仕事を切り替えて、まずは道路用に使う石材が次々と運ばれている。
城壁や一部の住宅に使う大型の石は、定期的にドラゴンの人たちが運んでいくけど、石が綺麗に切断されている事に最初は驚いていた。まあ私も最初は驚いたし、それが普通だと思う。
それにしてもクラディは色々な事を知っている。それが転生者だからこそ出来る事なのかもしれないけど、クラディ自身役に立つ魔法は次々と教えてくれるのでみんな大助かりだ。
「大型の石材はとりあえず大丈夫よね。道路に使う石材はまだ不足しているんじゃないの?」
いくら道路用に使う石材を大量に作っていても、計画している道路はかなり多い。今のところ役所が集まる所と町の入り口を結ぶ所を重点的に工事しているらしいけど、当然住宅地や商業地を考えると足りないはず。
「そうですね。確かにまだまだ必要ですが、輸送にも限度がありますから。とりあえず切り出しはまだまだしますが、木材と違って劣化はほとんどしませんからね。ですからある程度多めに切り出しておいても問題ないんですよ。それに道路用の石材を切り出すなら、バスクホルドさんの力をこれ以上借りなくても何とかなりますし」
「そうなの? じゃあ、私は別の仕事をすれば良いのかしら?」
監督は予定表などを見ながら、何が他に必要なのか確認しているみたい。
「そうですね、木材の切り出しへ応援お願い出来ますか? ほとんどの家は石材を使いますが、さすがに家具は木製ですし、そろそろ木材も多く確保したいらしいですから」
そういえばエルフの集落などは木で造った家が大半だった事を思い出した。それにも木材は必要なんだろうと思う。
「分かったわ。その木材はどこで調達しているのかしら? 多めに必要ならすぐに応援に行った方が良いわよね?」
「次の石材を運ぶ馬車でとりあえず町に戻って下さい。いくつか木を確保している森があるらしいので、そこで相談された方が良いかと思いますね」
「分かったわ。またこっちで私が必要な時は、いつでも呼んで。しばらくは大丈夫だと思うけど、大きな石は私がやった方が楽みたいだし」
私はそう言い残してから石材を運搬している馬車に向かった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「第二城壁を作るのは構わないんですけど、外側の石材は別にして、内側はどうするんですか?」
第二城壁の工事現場で作業を確認しながら、僕は壁の内側に使う材料の事が気になっていた。第一城壁と違うので、土は堀の物を使う訳にはいかない。それを第二城壁で監督をする何人かの人と打ち合わせだ。
「第一城壁の建造であまった土があります。それをこちらに運んでいる所ですね。あと新たに作っている町の部分でそれなりに土があまっているそうです。基礎部分の土ですね。それらで第二城壁の中は埋める予定です。第二城壁は幅が二ガルの予定ですし、足りなくなるとは思いますが、まずはあまっている土を加工して使う事になります」
確かに第一城壁で使った土は結構あまってはいる。なので第二城壁の中に使う土としては最適なんだろう。
「ただ、最後の砦とも言える第三城壁をどうするかですね。使う事がないと思いたいですが、それでも城壁としては一番堅くする予定ですから」
「それは後で考えましょう。今はしっかりと第二城壁を作る事が優先です」
優先順位は間違えちゃいけない。それに第二城壁は町中に作るので、第一城壁と違ってある程度通りとなる場所も確保しなくちゃならない。
「通りになる所は、今のところ鉄製の門を付ける予定です。二重の鉄の柵を設置するので、城壁までの強度は期待出来ませんが……」
確かに厚い壁と比べると鉄の柵は強度が問題になると思う。何通い合いであがないか考えながら、用意されている資材リストをざっと見る。そこにいくつか役に立ちそうな物が記載されていた。
「この鉄板は何に使いますか? 厚みもそこそこあるみたいですけど?」
「それは城壁内部の強化用ですね。鉄板を入れる事で強度を上げるつもりです」
確かに鉄板を城壁の中に敷き詰めれば、それは装甲のような役目もしてくれると思う。ただ、これをうまく使えば城門を塞ぐ手段として使えそうだ。
「鉄板はまだまだ送られてくるんですよね? なら一部を非常時の門を塞ぐための道具にしましょう」
僕がそれを言うと、他の人達は『どうやって?』という顔を一斉にした。
「城門に鉄製の柵を二重に設けるといっていましたよね。その間にこの鉄板を置いて塞ぐんですよ」
「いくら鉄でも、元々さ程大きくないので塞げないと思うが……」
まあ、確かに普通はそうだ。
「それを解決するために、ちょっとした仕掛けを用意するんです。城門の上になる場所だけ少し広めに上部を作って、そこに鉄板を何枚も置いておきます。流石に錆びると役に立たないので、専用の保管庫のような物はいりますが。その中に鉄板を置いておくんです。何かあったらその鉄板を上から落として、二つの柵の間を塞ぎます」
「確かに有効そうな手段ですけど、上手く鉄板が順次上に載らなければ意味がないと思いますが?」
「ええ。なのでレールを使います」
「レール? それは一体?」
「簡単に説明すれば、鉄板を落とす場所へ縦の溝を作っておくんです。後はその溝から鉄板を落としていけば、簡単に鉄板が上に載るはずですから」
周囲の人がなる程と頷いている。
「それに鉄板もかなり重いはずなので、上に置いた鉄板を移動させるためのレールもあった方が良いですね。一番良いのは、人が二人程度でも十分に移動可能にして、必要になったら次々と落としていくんです。そうすれば城門を塞ぐのも素早く出来ます。もちろん取り外すのには時間がかかりますが、あくまで非常時のための設備なので、まずは防御を主体に置いた方が良いですね。十分な設計の時間があれば、滑車を使った引き上げ装置も作る事が出来ると思いますが、それは僕としては今考える事ではないかと」
それにこの町には種族的にも力の強い人がいる。手間や労力をかけてしまうけど、そういった人たちを一時的にでも頼った方が良い場合だってあると思う。
「大体の事は分かりました。すこし城門の設計責任者になっている方々と話し合ってみます」
彼らはとりあえず話し合う事を選択したらしい。どちらにしても多少の設計変更はあるので、話し合いはしなきゃ駄目だろうけどね。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「この家って、お金かかっていますよね?」
一建築家として色々な家を手がけてきたけども、今手がけている家は個人宅としては経験の無い程にお金がかけられている。
水洗トイレは別に今は珍しくなくなってきたけども、複数の魔道具を使用してのトイレは初めて見た。
そもそも魔道具とは魔方陣を道具の中に描いた後に、魔方陣の中央に魔石を用いて魔力を供給する。これ自体は珍しくないのだけども、その他にも魔道具での消臭に各部屋の自動暖房、排水管が詰まらないようにするための自動排水装置など初めて見た物もある。
ちなみに魔法具は道具の中に魔方陣を描いただけ。魔方陣に魔力を込めれば魔道具と同じように使用出来るんだけども、一般的には数回からせいぜい十回程度で魔力を失う。ただし魔力さえあれば誰でも使用出来るので、魔石が必要ない分値段も安い。
一応暖房装置は町長の住まいや議事堂と名付けられた会議場などにも設置しているが、どちらも個人での所有ではない。町長はあくまで任命されている間だけの住まいだし、議事堂はそもそも住宅に当てはまらない。
一般的には魔法具の方が使用されるし、ほとんどの場合はそれで十分間に合うからというのもある。何より魔道具は魔法具の数十倍から数百倍は高価だ。
議事堂の近くに建造中の議員宿舎と呼ぶようになった各議員が一時的に住む事が出来る建物にも暖房はついているけども、それら三つのいずれもトイレまでは暖房もないし、もちろん消臭のために魔道具を使用した物など置いていない。窓があるだけだ。
「だよなぁ。これって誰が住むんだ?」
一緒に設計図の確認をしながら、次に作業する部屋の確認をしている。大きな家なので、作業をしている人も十人以上だ。他に全体の監督と設計監督、普通は居住する人が工事を依頼する壁紙や家具なども順次設置されている。それらの人数を含めると三十人近い人間が今現在関わっている。
「噂だけどさ……あの二人の家なんじゃって聞いたぜ?」
そう言われるとなんだか納得しそうになってしまった。あの二人なら確かに良い住居を提供しても文句を言う人は少ないだろう。
何より今も色々な工事の手伝いをしているし、しかもその魔法の力で予定よりも早く建設が終わるらしい。
「まあ、お前さんの家じゃない事は確かだな!」
そんな冗談に思わず小さく笑ってしまった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「行政地区の建設は手伝わなくていいの?」
「そっちは今のところ我々だけで大丈夫ですね。むしろ石材や鉄の確保が優先になっていますから」
新たな町の建設が始まってから、まだ町の行政地区になる所は見ていない。まあ私が見ても仕方がないんだけどね。ただ手伝える所があれば協力した方が良いかなって思っただけ。
「バスクホルドさんは精密な魔法が得意なので、むしろ余裕があれば細かい石の切り出しをお願いしたいですね。後は鉄の切断も可能だとか。大きな鉄板を切断してもらうのも助かります」
「そんな事で良ければいつでも手伝うわよ?」
「いえ、今はまだ大丈夫です。城壁に使用する鉄が優先らしく、住宅用の鉄材はまだ先になりそうとの事なので。石材も同じく城壁が優先ですし、その他のも大半が大型の建築物用ですから」
大型の建築物というと会議を行う施設の事かしら? クラディが提案していた建物にそんな物があったわね。
「それに道路用に使う石材ですが、予定よりも堀に使った土があまったり、建築中に出てきた土があまったらしいですから。それを土魔法で圧縮して普通の石材と同じ強度を持ったタイルを作っています。まだ普通の住宅を作る段階になっていませんし、住宅を建造するための敷地の測量も始まったばかりですから」
私が教えた測量のやり方で、ほぼ水平で建物を作る事が出来るようになった。狭い所では使いにくいと昔聞いたけど、広い場所があるなら使いやすいと聞いた三角測量。やり方を伝えたら案外早く習得してくれたみたいだ。
「それで、今日は石材確保は一応しばらくお休みなのよね?」
私が次々と切り出した結果、予想外に多すぎたので大きさの再確認と移送の準備や、細かい石材の調整が行われている。
量が多すぎて実際切り出した石材の三割程度しかまだ手が付けられていないって言っていた。
「先日鉄の鉱山から大規模な鉱石がいくつも見つかったらしいんですよ。なのでそちらに応援に行って頂けますか? こちらはまだまだ時間がかかるので」
ちょっとやり過ぎたかしら? でも石材は大量に必要って聞いていたし、どうせまた新しく切り出す必要があるはず。今は切り出した石材の整理と輸送を優先したいのかも。
「馬車で現地までお送りしますので、もうしばらくお待ち下さい」
とりあえずやる事はなさそうなので、私は休憩所を兼ねたテントに行く事にした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「最初から鉄の板を持ち上げられるようにするんですか。でもこの鉄板は厚いですし、普通のロープだと切れてしまいますよ?」
城壁に開けられた通路を見つつ、防衛用の鉄板を加工している現場を見に来た。
鉄板には三本の鉄の支柱が取り付けられ、そこに滑車を通したつり上げ装置を作るそうだ。
「滑車はかなり丈夫な物を使いましたし、一応試験した所三本の重量用ロープで何とかなる事が分かりましたからね。定期的にロープの交換が必要ですけど、使用するのは非常時ですから。ロープはかなり強度が高い物を使いますし、上で持ち上げるのに手回し式の装置も作ります。両側にそれを取り付けて、一つに付き二人で動かせるようになっています。これなら多少力に自信が無くても、ある程度は何とかなりそうですから」
まあ、そこまで言われたら僕が口出しするのは間違いだろう。
「第二城壁もほぼ完成しましたし、あとは最後の第三城壁ですね。こちらは一応堀も作りますが、幅は二ガルです。深さは十ガルですが、最初の城壁よりもずっと楽になる予定ですし、今回は追加で作業者も増やしました。ベルナルさんにはあまった土で強固な壁に仕上げて頂きたいそうですよ?」
つまり、次は穴掘りというよりも壁の強化を僕が行うらしい。最後の砦とも言える城壁なので、出来るだけ強固にしたいのだろう。
「最後の砦なので、とにかく強固にお願いします。残土を利用して、鉄よりも強固な壁を内側に張り巡らせたいのですが、可能ですか?」
「出来ますけど、ちょっと時間がかかると思いますよ? 個人的に試したい事もあるので、いくつか試作品も考えているんですけど。それと中に鉄板を入れるのは変わらないんですよね? それも加工して構わないですか?」
一度で成功するか分からないけど、前世の記憶を頼りに色々試したい。せっかく試すチャンスがあるし、最後の城壁だから手を抜きたくないしね。
「先に堀を作らないといけないので、多少は時間があると思います。その間であれば是非お願いしたいですね」
契約成立かな? この世界での攻撃は原則剣や槍、弓が主体だ。あとは魔物が突撃してくるくらい。多分これから作る物なら、突破は不可能だと思ったりする。
「確か近くに城壁用の鉄板倉庫がありましたよね? ちょっと用意して貰いたい物があるのですが、大丈夫ですか?」
そう言いながら事前にやってみたかった事をするための材料リストを渡す。そのリストを見るなり、ちょっとおかしな顔をされた。まあどう見ても鉄板の加工をすると相手は思っているはずなのに、渡したリストの内容は首をかしげる物だとは思うけど。
「用意しますが、どの程度必要ですか?」
「とりあえず試作品をいくつか作るのでそれぞれ木箱十個程度で良いと思います」
ちょっぴり前世の知識を活かして、面白い物を作ろう。せっかく昔本で読んだ物だし、いくつか試せば作れる気がする。何せ魔法があったりするからね。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「へぇー、また何かやるんですか?」
エルフ族代表補佐の一人フルトクヴィスト氏から変な話を聞いた。
「ああ。なんだか良く分からないが、鉄の強度を上げるといっていたな。プープケは金属に詳しいんだろう? 鉄の強度を上げるというと、何か思い当たる事は?」
「そう言われても、普通はいくつかの金属を混ぜて合金にするくらいですよ? 後は熱した鉄を叩いてとか、水に入れて一気に冷却とか。でもどれも一長一短ですからね。そういえば彼は剣に炭を砕いた物を使って、熱いうちに叩いていたと聞きましたけど?」
強度は上がったらしいが、理屈が分からない。
「やっぱり転生者の技術か? まあ彼は聞けば答えてくれる事が多いし、心配は一応していないんだけどな。ただ大きな鉄板を加工するなど大変だろう?」
「大変というか、無理ですよ。鉄を叩けば強度が少しは上がるのは知られていますけど、大きな鉄板を叩くなんてどんな方法を使うのか。多分それ以外の方法なんでしょうけど」
信用はもう十分にしているけども、やっぱり彼の頭の中は謎が多い。多分知らない技術が色々あるんだろう。転生する前は読書が趣味だったといっていたから、その知識なんだろうか?
「まあ、何か分かったら教えてくれ、プープケ君」
「ええ、それは構いませんよ。どうせこっちも見学するつもりですし、彼もそれは了承していますからね」
今回は城壁に使う鉄板だから、そんな変な事はしないと思うけども。
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「問題はケイ素、マンガン、リン、ニッケルだよな。炭素と硫黄は手に入ったし、銅も問題ない。配合率がかなり低いのは覚えているけど、やっぱり非滲炭鋼はいくら何でも無理かなぁ……」
魔法とは色々便利だけど、流石に元素までは作ってくれないみたいだ。そうなると手元にある素材で作るしかない。
「まあ滲炭で色々試してみようかな。内緒で研究用の施設改造しちゃったし」
もちろん内緒だから許可なんて取っていない。でも一応見た目では分からないように色々工夫。この実験が成功したら、初歩的な武器でも作ろうかなって考えていたりもする。
「とりあえず覚えているだけ色々試しますか」
炉の温度を魔法で一気に二千度にまで上げる。実は内緒で温度計の代わりになる方法を見つけた。火魔法を用いた熱分布による温度管理だ。
材料を投入しながら試作品をとにかく作る。どうせしばらくは城壁工事の仕上げとかで僕は時間が空いているし。
後は強度試験をどうやろうかな? 今のうちに方法を考えないと。
各種表記ミス・誤字脱字の指摘など忌憚なくご連絡いただければ幸いです。
感想なども随時お待ちしております!
ご意見など含め、どんな感想でも構いません。
更新速度からおわかり頂けるとは思いますが、本小説では事前の下書き等は最小限ですので、更新速度については温かい目で見て頂ければ幸いです




