第四十五話 魔の森を開発する事になりました
2016/02/01 一部内容の修正を行いました
2016/01/26 話数番号と内容の一部修正を行いました
剣術などの訓練が事実上お流れになって数日後、僕らの所にハンターを管理しているという人物が訪れた。
名前はアントーニオ・ヴィルジーリオという竜人族の男性で、年齢は三十七歳。エルフの集落に訪れた際には若干何かあったようだけど、それでも僕らの前に来る事が出来たのは、彼がそれなりの立場だからと思いたいのだけど、実際はそうでも無いらしいのがちょっと悲しくなる。
ハンターの管理とはいえ、前に聞いたように事実上組織としてはまともに機能していないのが原因だと思うけど、それ以上にエルフ族と竜人族とでは仲が悪い事も災いしたみたいだ。この辺はかなり深刻な問題じゃないかと思うけど、僕らにはまだ何も出来ない。
彼が僕らの居候している家に来るまで、三人の警備兵に囲まれていたり、今も家の外には二人の警備兵がいるくらいだ。どれだけ信用されていないのかは一目瞭然。正直この状況は寂しい。
「それで、お願いというのは魔の森に関しての事です」
挨拶も早々に済ませ、ヴィルジーリオさんは本題を切り出す。別に僕とエリーは、彼や彼ら竜族に確執など無いんだけど、周囲はそう見てくれないのが彼の辛い所だと思う。何で仲良く出来ないんだろう?
「先日、剣術で魔の森に対して剣一本で森を薙ぎ払ったと伺いました。それは間違いないのでしょうか?」
彼は努めて礼儀正しくしているが、それはここエルフ族の集落であり、彼にとっては居心地が悪く、他のエルフ族を刺激したくないがためだと思う。体格とか見ると、本来はそんな性格じゃないはず。
「若干情報に齟齬があるかもしれませんが、一応事実です。ですが僕らは、この集落では未成年扱い。単にやって欲しいと言われればそれなりの事は協力出来ると思いますが、この集落の代表またはそれに準じる人に、きちんとした許可を得る必要があると思います」
いくら僕らの能力が優れているとはいえ、今の僕らは未成年扱い。僕らだけで全てを判断する事は出来ない。それはヴィルジーリオさんも分かっているみたい。
「ええ、それは存じております。しかし、お二人の意思を先に確認したく。お二人が嫌がる事を無理にお願いしたとなると、こちらの集落での我々の立場という物がありますので……」
まあ、そういう事になるんだとは思う。僕としては協力するのは問題ないのだけど、相手は竜人族。彼らの事を良く思う人はエルフ族には少ないのだし。
「エリーはどう思う? 僕は構わないんだけどね。もちろんやる内容にもよるけど」
いくら何でも、わざわざ死にに行くような事はしたくない。
「私も構わないわ。もちろんそちらがきちんとした対応をしてもらえるという条件付きよ。申し訳ないけど、ハンターを管理していると聞いているけど、あまり役立っていないと聞いているの。気分を害したらごめんなさいね。でも、そんなあなたたちに『はい、分かりました』とは簡単にいかないのは理解しているでしょう?」
エリーが核心を突く。そこが一番の問題だ。いくら管理権があるとはいえ、前に聞いたように機能不全状態。その状況で簡単に僕らの協力が許されるような事は難しいと思う。正直もどかしいけど。
「もちろんそれは承知の上です。ですが、今後の事を考えると町全体の利益にも繋がると考えております。ですから出来る限りエルフの方々の要望も取り入れる準備もする予定ですし、お二人が安心して仕事を出来る状況を作りたいのです。お気づきだと思いますが、この町は以前から魔の森に脅かされています。それを打破するためにお力を借りたいのです」
まあ、この人としても年下の僕らにここまで頭を下げるのは思う所があるんだとは思う。出来れば協力はしてあげたいけど、後で僕らの立場がこの集落で問題になる事も避けたい。
「それで、他の方には説明されているんですよね? いきなり僕らだけに頼んでも駄目でしょうし、多分全ての集落に周知する必要があると思うんですけど」
「半分程の集落は許可を得ています。今も残りの集落の許可を頂きに行っている所です。ただご存じかと思いますが、私だとエルフの集落で説明は難しい。なので他の者が現在も交渉をしている事でしょう。もちろんそれらが全て終わり、お二人の許可を得てからになります」
「ふーん、それなら構わないんじゃない? でもすぐって訳じゃないんでしょ?」
エリーは討伐自体に反対はしないみたいだ。まあ、僕も別に構わないけどね。
「そうですね。実際に行う時には護衛も付けますが、それ以前に私達の組織について、意見を頂きたのですよ」
組織に意見? 僕らに一体何を期待しているんだろう。
「先ほども言われたとおり、我々は一応ハンターの管理をしている事になっていますが、現実は全く機能していないのが現状です。お二人がいた時代に、何かヒントになるような物がないかと思っているのです。どんな事でも構いません。それにベルナルさんは転生者だと。過去にも転生者の知識が役立った事は少なくありません。なのでどうしても期待してしまうのです」
そこで、僕の転生者としての知識が欲しいという事なのか。まあ分からなくもないけど。
「まあ、言いたい事は分かったわ。でも役に立つのかしら? だってハンター組合? 今どんな事をやっているのか分からないのに」
「まあ、そうですよね。なのでお二人には、私達の組織を一度見てもらおうと思っております。そちらはもう許可を取ってあるから大丈夫ですよ。魔物の討伐となれば別ですが、組織についての助言程度なら、お二人に意見を求めたいという所は多いですから」
そう言いながらヴィルジーリオさんはニコニコ顔だ。まあ、そこまで決まっているなら、別に構わないとは思う。ちょっと面倒だけどね。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そんな訳で僕らはハンター組合の建物に来ている。一応本部らしくて、町の入り口にも小さな支店? のような物があるのだとか。
ただ、目の前にある建物を見た時は絶句してしまった。いや、建物というのは間違いなのかもしれない……。
目の前にあるのは一応屋根がついた柱のある吹き抜けの建物。一応いくつか区切ってあるみたいで、所々壁はあるけど全体に壁がある訳じゃない。
壁のないところには色々な人がいて、それぞれ何かの受付をしているみたいだ。魔物の死体があったりするところもあるので、そこは買い取りなどの受付なのかも。
「さて、どんな事でも構わないので、気がついた順にでも意見を言って頂ければ」
ちなみにエリーも絶句している。
「えーと、ここが本部なんですよね? 町の入り口にあると言っていたのは、どんな役割があるんですか?」
「簡単に言えば、休憩所と買い取り施設だけですね。買い取り後のお金はこちらで換金になります。もちろん受け付けた時点で、どのような物を納品したのかを示す札を渡しておくので、何を倒したかなどは間違う事はありません」
「それじゃあ、そこで集めたのをここで解体しているの? だれがどの魔物を持ってきたかは分かるの?」
「少なくとも種類は。あとはハンターの申告ですね。特に特徴的な物がある場合は、それを申告してもらっています」
「ねえ、クラディ……」
「言いたい事は分かるよ、エリー。でも、これは……」
何だか最初から問題にぶち当たった気がする。
「何か問題ですか?」
「ハンターの方から苦情は来ませんか? 特に倒した魔物などの事についてや、その際の金額など」
「それは毎日ですね。ですが直接ここまで持って来るならともかく、そうでもない場合は、札と同じ魔物の平均額を渡しています。もう二百年程前から続いています」
このシステムに、まるで疑いを持っていないし、ハンターと言われる人も解決策を持っていないんだ。だからどうしたら良いのか分かっていない。これって実はかなり深刻な事を僕たちは依頼されているのかも……。
「この建物の見取り図はあるの? それから、魔物はどうやって鑑定されているとかの基準が知りたいわ。他にも色々とあるけど……」
「僕はエリーの言った物以外に、魔物の方をちょっと見てみたいです。それと、どんな魔物がいるのかも。他にも……って、出来れば全部資料を見せてもらえると嬉しいのですが」
こうなったらヤケクソ。どーにでもなーれって感じ。ここは根本的に見直さなきゃならないだろうと思う。エリーを見ると頷いている。多分同意見なんだろう。
「わ、分かりました……なんだか深刻そうだけど、大丈夫なのですか?」
この人もやっぱり分かってないんだなと思う一方、この状況なら仕方がないのかもと思ってしまう。
「言いたい事が山程ありますが、まとめて簡潔に言っていいですか? それと、怒らないで下さいね?」
一応確認と保険。
「あ、ああ。その為にお二人を呼んだので」
ヴィルジーリオさんは、なんだか引きつった顔をしているけど、事実は事実だ。
「話になりません。全面的に駄目です。組織とかそれ以前の問題です。全部見直さないと」
それを言った瞬間、ヴィルジーリオさんは泡を吹いて倒れ……そうになりながらも、なんとか体勢を立て直した。でも顔色は真っ青だ。気持ちは分かるけど……。
「た、多少は覚悟していましたが、それほどですか? これまで一応これでやってきたのですが……」
「私はむしろ良くやってきたと思うわ。クラディはどう思う?」
「破綻しているから文句が多いとしか。何より人をまとめるための組織として、全く成り立っていないと思います」
ヴィルジーリオさんは、なんだか唖然としながら口をぽかんと開けている。
「改革案をとりあえず皆さんで作りましょう。ハンターの方で熟練者の方もいた方が良いですね。ここの責任者はもちろん、受付の係の人なども全員です。なので、申し訳ありませんが、いったん魔物討伐は最低限にして下さい。流石に全くやらないのは問題でしょうから。あ、ちなみに僕は指名されても、ここの全権なんていりませんよ? 僕では管理不可能な状態です。なので、僕らで改善出来る点を洗いざらい出して、出来る事をさっさと進めます。責任者の方は、その方針を守ってくれれば、こんな状況は改善出来ます。でも、完全に解決するにはそれなりの時間がかかると思いますけど……エリーも良いよね?」
「ええ、良いわよ。ここまで来て『何も出来ない』なんて言いたくないもの。でも私達が言う事は、極力取り入れてもらうわ。それは覚悟して」
エリーもかなり強気だ。まあそうなってしまう原因があるのだから、こればかりは仕方がないけど。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「だ、か、ら! 倒した魔物によって魔石の大きさが違うんですよね!? で、採取出来る物も違って、その上、役に立つ物は高額で取引されるんですよね!」
僕がいるのは一応建物にある会議室。周囲は壁――に似た布を上から下げているだけ。当然防音などないし、入り口は適当にその布をめくるだけだったりする。
そして叫んでいるのは僕自身。
「え、ええ……。そうですよ? それを集めて町のために……」
「そこは良いんです! 問題なのは、採取してきた人が誰で、その人がちゃんとそれに見合う報酬を得ているかなんですよ!」
僕とエリーが危惧していたとおり、魔物の素材は大きさなどほとんど考慮されず、しかも魔石に関してはどの種類であっても固定額で換金などの金銭やり取りがされていた。ちなみに魔石は大きさがどんな物でも一個銅貨一枚。パン一個分でしかない。あとは食用になる魔物の分が、ハンターに渡されている。
そして目の前に用意されている魔石は、大きさがこぶし大だけども、そこに蓄えられている魔力は、普通の魔石の数千倍。ちなみに解体されるまでは魔石がどんな物なのか分からないので、誰が倒したのかも分からないし、そもそもこの魔石はどの魔物の魔石かすら把握されていなかった。
「さっき言ってましたよね? 炎の魔石で一番多いのは、一日分の明かりを作る程度だって? で、これも火属性なんですよね? だけど、これ一個で普通の魔石の数千倍役に立つんですよね?」
「あ、ああ……」
返事をしたのはここのハンター組合で、組合長のハラヴァチェク氏。オーク族で四十二歳だそうだ。ちなみに前世でイメージされるような太った体型ではない。はっきり言えば細身だし、顔も全く不細工ではない。そんな彼が、今僕から罵声を浴びさせられているし、その周りにいる人たちも、顔から冷や汗が流れている。
「どう考えてもおかしいですよね!? それだけ価値があるのに、普通の魔石と同じ額? 銅貨一枚? パン一個分? これを入手した人がどなたか知りませんが、こんなのを持っている魔物が弱いとは到底思えません。それなりの実力者が採取してきたはずだし、本来ならどの魔物なのかも分かっているべきです。なのに何も分からないって、どういう管理をしているんですか!」
状況的に、どうしても大声になってしまう。
「それからハラヴァチェクさん。動物性の魔物の買い取りにしてもおかしいわよ? 服飾に使える糸を採取出来る魔物――それも一体で大人三着分。それ以外に薬に使える部分があるのに、皮しか取れなくて、しかもその皮も防具にすら使えない貧弱な物と同じ値段ですか? 誰か今まで文句を言わなかったのかしら? 私なら間違いなく文句を言うし、今みたいに責任者を怒鳴りつけるわ」
エリーも手元の資料を見ながら、まさに怒り心頭といった感じで怒鳴っている。
「そ、それはその……」
「まあ、エリー。僕の予想を言ってみようか。多分ここにいる人たちの誰か、もしくは全員が、自分たちの所へ横流ししているんだよ。全部ではなくても、それなりの量を横流しするだけで生活が変わると思うから。特にドラゴン族と竜人族は、交流が深いそうですね? 大きな魔石があれば巨体を維持する魔力も楽かもしれませんよね? ヴィルジーリオさん? それからハラヴァチェクさんも、これといって有用な物がないそうですね? ですが聞いたところによると、あなた方の生活は豊だそうじゃないですか。当然そのお金はどこからか調達しないといけませんよね?」
僕は二人を見るけど、二人とも目を合わせようとしなかった。
「まあ、他にも色々ありそうですし、この組織は一度なくした方が良さそうです。個人的にはそれぞれの種族の代表者が集まって、きちんと協議をした上で、それぞれに決めた方が良いと思いますよ? そうでないと争いの元にしかならないでしょうから。他に意見がなければ、僕らはこの辺で助言を止めようと思います。あとは皆さんの代表者でよく話合って下さい。その上で僕らの意見が必要とあれば聞きます」
そう言うと僕は席を立つ。エリーも同じ思いなのか、一緒に席を立つと、二人でハンターギルドと名のついた魔窟を後にした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「やっぱりそうだったのか……おかしいとは思っていたが、誰も言えなかったんだ」
僕らはあの後エルフ――秋津集落の集会場に呼ばれていた。メンバーは僕らの他に、集落代表のフェーストレームさんと補佐のオーストレームさん。そしてこの集落で最年長のドリス・カリーネ・クリスティアンソンさんで、四百六十二歳という高齢の女性だけど、見た目はせいぜい五十歳くらいだと思う。エルフって、本当に見た目だと年齢が分からない。
前々から魔の森で採取された物資の割り当てには、色々とおかしいと思っていたそうだ。だけども別組織という事で口出しが出来ない状況だったらしい。そもそもこの町を治めている代表者がいないし、個々の集落でかなり勝手に決めていたので、まとめて意見を言えるような状況ではなかったのだとか。
「魔物をある程度倒しておかないと、この町が危ないのは分かります。ですが、あれではみんなが不満を持つだけです。僕らには町を統治するような能力なんて有りませんし、その辺は皆さんにお任せしますけど、とりあえず一時的にでも魔物を周囲から排除するというのなら手伝います。ただし、やり方は強引ですが」
一斉にみんなの目が僕に向かう。
「正直やりたくなかったんですけどね……後でどうなるか分からないのもあるので。やり方は簡単です。周囲の森を根こそぎ焼き払うだけです。僕一人でも多分大丈夫だと思いますし、恐らくエリーでも出来ると思います。後は皆さんがどう思うかです」
魔物の脅威はある程度取り除かないといけない。だけども時間をかけていると、町に被害が出てしまう事も予想される。そうなると周囲の森を一気に殲滅するしかないと思う。
「それは可能なのか? 私には到底出来るとは思えないが」
フェーストレームさんは、疑いながらもどこか解決策を待っている感じだ。
「色々と森にある物がなくなるとは思いますけどね。どうせ魔物化した森で、まともに木として使えないのであれば、焼き払った方が安全だとも思えます」
「焼き払うって……延焼したらどうするのよ?」
「したら水魔法で無理矢理消火かな?」
エリーの疑問に即座に答えた。
実は僕自身水魔法の方が得意だし、火属性の魔法より水属性でやってしまおうかと思ったんだけど、この辺り一面が洪水になるような気がして却下していた。それに土属性で一気に炎を覆ってしまえば、実際消火出来るから関係ないと思う。前世の日本だって、昔は延焼を防ぐために建物を破壊していたりしていたし、その延長線だと思うから。
「そ、そうか……一応他の集落に確認を取るので、二、三日待って欲しい」
フェーストレームさんの提案で、一応魔の森についてはいったん保留。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
結局僕らはあれから四日後に魔の森の前にいた。
目の前の森ではハンターなどはすでに避難しているらしく、人的被害はないらしい。なら不得意とはいえ、せっかくだから全力で試してみようかと思ったりする。
「それで、どのような魔法を?」
「簡単に説明すると、扇形に風魔法で空気を圧縮させて、火属性魔法で着火します。風魔法の方がまだ得意ですから。でも範囲はかなり大きいと思いますけどね」
フェーストレームさんに一応事前説明。それと危ないかもしれないので、急遽土魔法で塹壕を掘り、僕とエリー以外はそこから監視する形だ。
「エリー、問題があったらすぐに水魔法で消火をお願い。まあ大丈夫だと思うけど」
「私は火属性の方が得意なんだけど……まあいいわ。クラディが不得意の火属性魔法で、どの程度の威力があるのか見てみたいし」
エリーはどちらかと言えば、好奇心で負けているみたいだ。
「で、魔法なんだけど呪文とか唱えたりするの?」
「唱えても良いけど、必要ないかな……」
「出来れば魔法の名前くらい教えてよ。まあクラディが勝手に考えた名前だろうけど」
僕らがいた時代では、特に上級魔法では名前など決まっていない。イメージしやすい名前なら何でも大丈夫だ。そもそも固有の名前なんかなかったはず。
「じゃあ、これから使うのは『インプロージョン・エリアバスター』ね。まあ、一瞬で分からないかもしれないけど。簡潔に言うと、空気を極限まで圧縮してから、その中にある燃える空気を利用して、広範囲を焼き尽くす魔法かな?」
「何それ……まるで必殺技ね」
「これでも弱いと思うんだけどね……」
魔法を唱え始める。無斉唱なので魔法を放つタイミングがわかり辛いから、最後に魔法の名前を言うつもりだ。
数分程魔力を溜めると、まずは焼き尽くす場所の空気を圧縮する。多分周囲は空気がなくなっているかも。まあ、そんな事は気にしない。
「じゃあ、いくよ。インプロージョン・エリアバスター!」
分かりやすいように大きく叫ぶと同時に、一瞬だけ目の前に光の筋が延びる。そして火炎魔法に出来るだけ魔力を用いて、一気に圧縮空気を炸裂させた。瞬間風が起きるけど、それほど強い風ではない。爆風は風魔法で抑えているから。そうしないと僕らが危ないと思ったし。
ほんの一瞬遅れて、目の前に火柱というか、火の海地獄が生まれた。でも多分空気中の酸素を全部消費したんだと思うんだけど、爆音と共に閃光が再び走って、無音の状態がちょっとだけ生まれる。
あまりに強い威力だったのか、燃える以前に魔の森にある木々が指定した範囲から消えていた。残ったのは剥き出しの土だけど、まだかなり高温みたいだ。最小の魔力で軽く雨を降らせると、かなり遠く……というか、かなり離れた位置に見える山の所まで地面が剥き出しになっている。その幅はざっと一キロガルくらい。跡には草すらない。
「クラディ……ちょっとやり過ぎじゃない?」
そう言いながらも、エリーは平然とした顔をしていた。きっと予想の範囲なのかも。
「す、凄い……魔の森を消滅させたどころか、魔の森から発せられる魔素すら消えているようだ」
塹壕から出てきたフェーストレームさんは、僕らのそばに来るなり唖然としている。
「それで、今の魔法でどの程度魔力を?」
「ほとんど使っていないですよ? 体感では少なくともあと百回前後は使えるはずです。必要なら他の所もやりますか?」
「あ、いや、もっと抑えて場所を変えよう。先に農地があるところもある。そこまで焼き尽くされると、今後の食料にも問題が出てしまうので」
フェーストレームさんは、ちょっと……いや、だいぶ震えた声を出しながら、僕らに次の場所を案内してくれた。
結局その日は、魔の森を全滅というか、消失させた。さらに隣町まで簡易的な土魔法で整地まで行った。あまり力を使うと、整地した部分が岩のようになってしまうし。
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